季節ごとのキャンペーン企画で予約枠を埋める方法

歯科医院の予約には季節的な波があります。繁忙期には予約が取りにくくなり、閑散期には空き枠が目立つという状況は、多くの医院が抱える課題です。この予約の波を平準化し、年間を通じて安定した来院数を確保するために有効なのが、季節に合わせたキャンペーン企画です。適切なキャンペーンを実施することで、閑散期の予約枠を埋めるだけでなく、新患獲得や既存患者の掘り起こしにもつなげることができます。

本記事では、歯科医院における季節ごとの患者動向を詳しく分析し、閑散期の予約枠を埋めるためのキャンペーン企画の立て方、実施のポイント、そして成功事例までを網羅的に解説します。キャンペーンを戦略的に活用して、年間を通じた安定経営を実現しましょう。

 

 ━目 次━
 1. 歯科医院の季節別患者動向を理解する
 2. 閑散期が発生する原因と対策の方向性
 3. 季節別キャンペーン企画の具体例
 4. キャンペーン企画の基本ステップ
 5. キャンペーン成功のための7つのポイント
 6. 告知方法の選択と効果的な活用
 7. キャンペーン効果測定の指標
 8. キャンペーン実施時の注意点
 9. まとめ

 

1. 歯科医院の季節別患者動向を理解する

効果的なキャンペーンを企画するためには、まず歯科医院における季節ごとの患者動向を正確に把握することが重要です。患者の来院パターンには明確な季節性があり、これを理解することでキャンペーンの最適なタイミングを見極めることができます。

時期

患者動向

来院数の傾向

主な特徴

1〜2月

閑散期

年間最低水準

年末年始明けで来院意欲が低下、寒さで外出を控える傾向

3〜4月

やや増加

回復傾向

新年度前の駆け込み需要、入学・就職前の検診ニーズ

5〜6月

繁忙期

年間ピーク①

学校歯科健診後の受診が急増、GW明けの来院集中

7〜8月

閑散期

低下傾向

夏休みで旅行・帰省、暑さで外出を控える、お盆期間の休診

9〜10月

やや増加

回復傾向

夏休み明けの来院再開、秋の検診シーズン

11〜12月

繁忙期

年間ピーク②

年内に治療を終わらせたいニーズ、忘年会シーズン前の審美需要

 

この表からわかるように、歯科医院には年間で2回の閑散期(1〜2月、7〜8月)と2回の繁忙期(5〜6月、11〜12月)があります。キャンペーンは主に閑散期に実施することで、予約の谷を埋める効果が期待できます。ただし、繁忙期であっても特定の曜日や時間帯に空きがある場合は、その枠を埋めるためのキャンペーンも有効です。

 

 

2. 閑散期が発生する原因と対策の方向性

閑散期の対策を考える前に、なぜその時期に患者が減るのかを理解しておく必要があります。原因を正しく把握することで、より効果的なキャンペーンを企画できます。

1〜2月の閑散期の原因

年末年始の連休明けは、患者の来院意欲が最も低下する時期です。年末に駆け込みで治療を終えた患者は「しばらくは大丈夫」という心理になりやすく、新年の忙しさも相まって歯科受診の優先順位が下がります。また、寒さによる外出控えや、インフルエンザ等の感染症への警戒も来院減少の要因となります。

この時期のキャンペーンでは、「新年の健康づくり」「新しい自分へのスタート」といった前向きなメッセージで来院動機を喚起することが効果的です。

7〜8月の閑散期の原因

夏休みシーズンは、旅行や帰省で地元を離れる患者が多く、来院数が減少します。特にお盆期間は多くの医院が休診となるため、患者側も「夏は歯医者に行かない時期」という認識を持ちやすいです。また、猛暑による外出控えも大きな要因です。

この時期は、夏休み中の子どもをターゲットにしたキャンペーンや、お盆期間も診療していることをアピールする施策が有効です。

 

 

3. 季節別キャンペーン企画の具体例

ここからは、各季節に適したキャンペーンの具体例を詳しく解説します。それぞれの時期の患者心理を踏まえた企画立案のポイントを押さえましょう。

1〜2月:新年・新生活応援キャンペーン

年始は「今年こそ健康に気を使おう」という意識が高まる時期です。この心理を活用したキャンペーンが効果的です。

キャンペーン名

内容

ターゲット

期待効果

新年お口の健康チェック

検診+クリーニングのセット割引(通常8,000円→6,000円)

既存患者(定期検診離脱者)

休眠患者の掘り起こし

新春ホワイトニングキャンペーン

オフィスホワイトニング20%OFF

審美意識の高い20〜40代

自費売上の向上

バレンタイン前の口元ケア

クリーニング+口臭チェック特別価格

20〜30代女性

新患獲得

受験生応援プラン

受験前の歯科検診+フッ素塗布

受験生とその保護者

ファミリー層の取り込み

 

新年のキャンペーンでは、「新年の目標に口腔ケアを」「今年こそ歯を白く」「笑顔で新しいスタートを」といったメッセージが響きやすいです。年賀状やLINE、メールでの案内と組み合わせると効果が高まります。

3〜4月:新生活スタートキャンペーン

入学、就職、転勤など、新生活が始まる時期です。環境が変わるタイミングで「かかりつけ歯科医院」を探す患者も多いため、新患獲得のチャンスです。

キャンペーン名

内容

ターゲット

期待効果

新社会人応援プラン

初診検診+クリーニング特別価格

新社会人

若年層の新患獲得

転入者歓迎キャンペーン

初診料無料または割引

引っ越してきた方

地域の新規患者獲得

入学前歯科検診

お子様の検診+フッ素塗布

新入学児童とその保護者

小児患者の獲得

新生活スマイルケア

ホワイトニング+クリーニングセット

就職・転職する方

自費率向上

 

この時期は、Googleビジネスプロフィールの投稿やSNSで「この地域に引っ越してきた方へ」「新生活を始める方へ」といったメッセージを発信すると、検索からの流入が期待できます。

5〜6月:健診フォローキャンペーン

学校歯科健診が行われる時期で、健診結果を持った子どもの来院が増えます。この時期はキャンペーンというよりは、受け入れ体制の強化と迅速な対応が重要です。

施策

内容

ポイント

予約枠の拡大

健診後の来院増に備えて予約枠を増やす

土曜日、平日夕方の枠を特に確保

健診結果持参の案内

「健診結果をお持ちください」と告知

HP、院内掲示、SNSで発信

早期来院の促進

「早めの受診をおすすめします」と案内

混雑前の来院を促す

保護者への情報提供

治療の流れ、費用目安を事前に案内

初診のハードルを下げる

 

学校健診で指摘を受けた保護者は「早く治療しなければ」という意識がありますが、どの医院に行けばよいかわからないことも多いです。「健診で指摘を受けたらお早めにご相談ください」というメッセージを積極的に発信しましょう。

7〜8月:夏休みキャンペーン

夏休み期間中は、通常の来院パターンが崩れる一方で、子どもが休みのため通院しやすいという側面もあります。この特性を活かしたキャンペーンが有効です。

キャンペーン名

内容

ターゲット

期待効果

夏休み子ども歯科検診

検診+フッ素塗布+歯磨き指導セット

小学生以下の子ども

小児患者の定着

親子で通える家族割

親子同時予約で双方10%OFF

子育て世代の家族

ファミリー患者の獲得

夏休み自由研究応援

歯の仕組み教室、歯科医院見学会

小学生

医院の認知度向上

お盆も診療キャンペーン

お盆期間の診療をアピール

帰省しない地元の方

閑散期の予約埋め

夏のホワイトニング割引

オフィスホワイトニング夏季限定価格

20〜30代

閑散期の自費売上確保

 

夏休みの子ども向けイベントは、医院の認知度向上と「歯医者は怖くない」というイメージづくりに効果的です。参加した子どもが後日患者として来院するケースも多く、長期的な投資として有効です。

9〜10月:秋の検診キャンペーン

キャンペーン名

内容

ターゲット

期待効果

秋の歯科検診週間

検診+クリーニング特別価格

定期検診離脱者

リコール率向上

運動会シーズン応援

スポーツマウスガード作成キャンペーン

スポーツをする子ども

自費メニューの訴求

食欲の秋を楽しむために

噛み合わせチェック、入れ歯調整

シニア層

高齢患者の来院促進

ハロウィンイベント

仮装で来院の子どもにプレゼント

小児患者

来院のきっかけづくり

11〜12月:年末キャンペーン

「年内に治療を終わらせたい」というニーズが高まる時期です。繁忙期ではありますが、早めの予約を促すキャンペーンや、年末年始の休診前の駆け込み需要を取り込む施策が有効です。

キャンペーン名

内容

ターゲット

期待効果

年内完了プラン

年内に治療完了を目指す方への優先予約

治療途中の患者

治療完了率向上

クリスマスホワイトニング

イベント前のホワイトニング需要を取り込み

20〜40代

自費売上向上

忘年会前の口臭ケア

クリーニング+口臭チェック

ビジネスパーソン

新規患者獲得

年末感謝キャンペーン

既存患者への感謝特典

定期来院患者

患者満足度向上

 

 

 

4. キャンペーン企画の基本ステップ

効果的なキャンペーンを実施するためには、計画的な準備が必要です。以下のステップに沿って企画を進めましょう。

ステップ

内容

具体的なアクション

所要時間目安

1. 目的設定

キャンペーンで何を達成したいか明確にする

予約数増、新患獲得、自費率向上など具体的な目標を設定

1〜2日

2. ターゲット設定

誰に向けたキャンペーンかを決める

新患、既存患者、特定の年齢層など対象を明確化

1〜2日

3. 内容設計

具体的な特典・割引内容を決める

割引率、セット内容、限定数などを決定

3〜5日

4. 期間設定

キャンペーンの実施期間を決める

2週間〜1ヶ月程度が一般的

1日

5. 予算策定

必要な費用を見積もる

広告費、販促物作成費、割引原資など

2〜3日

6. 告知準備

告知に必要な素材を準備

チラシ、Web素材、SNS投稿文など

1〜2週間

7. 実施・運用

キャンペーンを実施

予約対応、問い合わせ対応など

キャンペーン期間中

8. 効果測定

結果を振り返り、次回に活かす

予約数、売上、新患数などを集計・分析

キャンペーン終了後1週間

 

 

5. キャンペーン成功のための7つのポイント

キャンペーンを成功させるためには、いくつかの重要なポイントがあります。以下の7つを意識して企画・実施しましょう。

1. 過度な値引きは避ける

安易な値引きは医院の価値を下げ、利益を圧迫します。「安いから行く」という患者は継続来院につながりにくい傾向もあります。値引きよりも「付加価値の提供」を意識しましょう。例えば、検診にデンタルグッズをプレゼントする、クリーニングにホワイトニング体験を付けるなど、通常にはない価値を提供する形が効果的です。

2. 期間と人数を限定する

「期間限定」「先着○名様」といった限定感が行動を促します。「いつでもできる」と思われると行動が後回しになりがちですが、限定があると「今行かなければ」という心理が働きます。ただし、虚偽の限定は信頼を損ねるので、実際に限定を設けることが重要です。

3. 既存患者へのアプローチを優先する

新患獲得よりも、既存患者の来院促進の方が効率的です。すでに医院のことを知っている患者は、キャンペーンをきっかけに来院する可能性が高いです。定期検診が途切れている患者へのDM、リコール対象者へのキャンペーン案内を優先的に行いましょう。

4. 明確なメッセージを伝える

キャンペーンの内容がわかりにくいと、患者は行動を起こしません。「何が」「いくらで」「いつまで」できるのかを明確に伝えましょう。専門用語は避け、患者目線でわかりやすい表現を使います。

5. 複数の告知手段を組み合わせる

一つの告知手段だけでは、情報が届かない患者も多いです。ホームページ、SNS、院内掲示、DM、LINE等、複数の手段を組み合わせて告知することで、到達率を高めます。

6. スタッフへの周知を徹底する

キャンペーンの内容をスタッフ全員が理解していないと、患者から問い合わせがあった際に適切に対応できません。キャンペーン開始前にスタッフミーティングを行い、内容、期間、対応方法を共有しておきましょう。

7. 効果測定と改善を行う

キャンペーン終了後は必ず効果測定を行います。予約数、来院数、売上、新患数などを集計し、目標との差異を分析します。うまくいった点、改善すべき点を明確にし、次回のキャンペーンに活かしましょう。

 

6. 告知方法の選択と効果的な活用

キャンペーンの成否は、告知の仕方で大きく左右されます。それぞれの告知手段の特徴を理解し、効果的に活用しましょう。

告知方法

対象

メリット

デメリット

費用目安

ホームページ

新患・既存患者

24時間閲覧可能、詳細情報を掲載できる

能動的にアクセスする人にしか届かない

無料〜数万円(バナー作成)

SNS(Instagram等)

若年層、既存フォロワー

拡散性がある、ビジュアルで訴求できる

フォロワー以外には届きにくい

無料

LINE公式アカウント

登録患者

開封率が高い、直接届く

登録者にしか届かない

無料〜(配信数による)

院内掲示・POP

来院患者

確実に目に入る、コストが低い

来院患者にしか届かない

数千円(印刷代)

DM・ハガキ

既存患者

確実に届く、手元に残る

コストがかかる、開封されない可能性

1通50〜100円程度

チラシ・ポスティング

地域住民

広範囲に届けられる

反応率が低い(0.1〜0.3%程度)

1枚5〜10円程度

 

 

 

7. キャンペーン効果測定の指標

キャンペーンの効果を正しく測定するために、以下の指標を確認しましょう。

指標

計算方法

目標の目安

キャンペーン経由の予約数

キャンペーンを理由に予約した件数

告知数の1〜3%

キャンペーン経由の来院数

実際にキャンペーンで来院した人数

予約数の80%以上

キャンペーン売上

キャンペーン関連の売上合計

目標売上を事前に設定

新患獲得数

キャンペーンで獲得した新患数

キャンペーン来院数の20〜30%

費用対効果(ROI)

(売上−費用)÷費用×100

100%以上(売上が費用を上回る)

リピート率

キャンペーン来院者の再来院率

50%以上(3ヶ月以内)

 

 

8. キャンペーン実施時の注意点

キャンペーンを実施する際には、いくつかの注意点があります。これらを怠ると、せっかくのキャンペーンが逆効果になることもあります。

医療広告ガイドラインの遵守

歯科医院のキャンペーン告知も医療広告ガイドラインの対象となります。「絶対に治る」「最高の技術」といった誇大表現、「地域No.1」といった比較優良表現は使用できません。また、費用を表示する場合は、税込価格を明示する必要があります。

予約枠の確保

キャンペーンで来院が増えることを想定し、十分な予約枠を確保しておきましょう。せっかくキャンペーンに興味を持った患者が、予約が取れずに離脱してしまうのは大きな機会損失です。

通常患者への配慮

キャンペーン患者の対応に追われて、通常の患者へのサービスが低下しないよう注意が必要です。既存患者の満足度を維持しながらキャンペーンを実施する体制を整えましょう。

 

9. まとめ

季節ごとのキャンペーンは、閑散期の予約枠を埋め、年間を通じた来院数の安定化に有効な施策です。ただし、安易な値引きは避け、付加価値の提供を意識することが重要です。

キャンペーンを成功させるためには、目的・ターゲット・期間を明確にし、適切な告知方法を選択することが必要です。既存患者へのアプローチを優先し、期間や人数の限定で行動を促しましょう。

実施後は効果測定を行い、予約数、売上、新患数、費用対効果などを分析します。うまくいった点と改善点を明確にし、次回のキャンペーンに活かすPDCAサイクルを回すことで、より効果的なキャンペーン運営ができるようになります。

季節の特性と患者心理を理解し、戦略的にキャンペーンを活用することで、閑散期の課題を解決し、安定した医院経営を実現しましょう。

 

 

【ご相談・お問い合わせ】

  • 株式会社リバティーフェローシップ
    東京歯科経営ラボ
  • TEL:03-4405-6234
  • メール:n-ozawa@tdmlabo.com
  • Web:https://tdmlabo.com/

 

 

投稿者プロフィール

NAOKI OZAWA
歯科コンサルタント小澤直樹
2002年よりコンサルティング活動を開始。2008年から歯科コンサルタントとして勤務した後20017年より現職。

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