歯科医院の働き方改革|労働時間管理と生産性向上の両立
2019年から順次施行された働き方改革関連法は、歯科医院にも適用されます。時間外労働の上限規制、年次有給休暇の取得義務化、同一労働同一賃金など、様々な規制が設けられています。これらに違反した場合、罰則の対象となる可能性もあります。
しかし、「患者対応があるので残業は仕方ない」「人手不足で休みを取らせる余裕がない」という声も多く聞かれます。働き方改革への対応は、単なる法令遵守の問題ではなく、スタッフの定着、生産性向上、医院の持続的な成長にもつながる重要な経営課題です。本記事では、歯科医院における働き方改革への対応と、労働時間管理と生産性向上を両立させる方法を解説します。
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1. 働き方改革関連法の主なポイント
歯科医院に関係する働き方改革関連法の主なポイントを確認しましょう。
まず、時間外労働の上限規制です。原則として、時間外労働は月45時間、年360時間が上限となりました。特別な事情がある場合でも、年720時間、単月100時間未満(休日労働含む)、複数月平均80時間以内(休日労働含む)という上限があります。これに違反した場合、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金の対象となります。
次に、年次有給休暇の取得義務化です。年10日以上の有給休暇が付与される従業員に対して、年5日以上の有給休暇を取得させることが義務付けられました。取得させなかった場合、1人あたり30万円以下の罰金の対象となります。
そして、同一労働同一賃金です。正社員とパート・アルバイトなどの非正規雇用労働者との間で、不合理な待遇差を設けることが禁止されています。基本給、賞与、各種手当、福利厚生などすべての待遇について、合理的な説明ができる必要があります。
2. 労働時間管理の基本
働き方改革に対応するためには、まず労働時間を正確に把握することが必要です。
労働時間の把握方法としては、タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録、勤怠管理システムなどがあります。手書きの出勤簿だけでは、正確な労働時間の把握が難しく、改ざんのリスクもあります。客観的な方法で労働時間を記録しましょう。
また、労働時間には、着替えや朝礼の時間、片付けの時間なども含まれます。始業前や終業後の時間も、使用者の指揮命令下にあれば労働時間です。「定時は9時だが、8時45分には来て準備するのが当たり前」といった慣行がある場合、その時間も労働時間として扱う必要があります。
残業が発生している場合は、その原因を分析しましょう。予約の入れすぎ、非効率な業務フロー、人員不足、特定のスタッフへの業務集中など、様々な原因が考えられます。原因に応じた対策を講じることで、残業を削減できます。
3. 生産性向上のための取り組み
労働時間を削減しながら、診療の質や売上を維持・向上させるためには、生産性を高める必要があります。
業務の効率化
日常の業務を見直し、ムダを削減しましょう。例えば、器具の配置を最適化して動線を短くする、使用頻度の高い材料を取り出しやすい場所に置く、カルテ記入や事務作業の時間を短縮するツールを導入する、などの工夫が考えられます。
スタッフにヒアリングして、「この作業は時間がかかっている」「この業務は改善できるのでは」という声を集めましょう。現場のスタッフだからこそ気づく改善点があります。
予約管理の最適化
予約の入れ方を見直すことで、残業を減らせる場合があります。最終の予約枠を早めに設定する、処置内容に応じた適切な予約時間を設定する、急患対応の時間枠を確保しておく、などの工夫をしましょう。
予約が詰まりすぎると、診療が押して残業が発生します。逆に、予約がスカスカだと生産性が下がります。適切な予約枠の設定が重要です。
役割分担の見直し
歯科医師がすべての業務を行うのではなく、歯科衛生士、歯科助手、受付スタッフがそれぞれの役割を担うことで、全体の効率が上がります。歯科医師は診療に集中し、予防処置やメインテナンスは歯科衛生士が担当する、事務作業は受付スタッフが担当する、といった役割分担を明確にしましょう。
スタッフの多能工化も効果的です。一人のスタッフが複数の業務をこなせるようになれば、人員配置の柔軟性が高まり、特定のスタッフへの負担集中を防げます。
ITツールの活用
ITツールを活用することで、業務効率を大幅に向上させることができます。Web予約システム(電話対応の削減)、自動リマインドシステム(キャンセル率の低下、連絡業務の削減)、電子カルテ(記録の効率化、情報共有の迅速化)、会計ソフト・給与計算ソフト(事務作業の効率化)などが代表的なツールです。
初期投資や月額費用はかかりますが、長期的に見れば人件費の削減や業務効率の向上につながります。
4. 有給休暇取得促進の工夫
年5日以上の有給休暇取得を確実に実施するためには、計画的な取り組みが必要です。
まず、計画的付与制度の活用です。有給休暇のうち5日を超える部分について、医院が時季を指定して取得させることができます。例えば、ゴールデンウィークや年末年始に有給休暇を組み合わせて連休を作る、医院の休診日に合わせて有給休暇を設定するなどの方法があります。
次に、取得状況の管理です。誰がいつまでに何日取得する必要があるかを把握し、取得が進んでいないスタッフには早めに声をかけましょう。有給休暇管理簿を作成し、定期的に確認することが重要です。
そして、取得しやすい雰囲気づくりです。「休みを取りにくい」という雰囲気があると、義務化されても取得が進みません。院長自らが休みを取る姿勢を見せる、休暇取得を奨励する声かけをするなど、取得しやすい環境を作りましょう。
5. 働き方改革のメリット
働き方改革への対応は、法令遵守だけでなく、医院にとっても多くのメリットがあります。
まず、スタッフの定着率向上です。長時間労働や休みが取れない環境は、離職の原因になります。働きやすい環境を整えることで、スタッフが長く働き続けてくれます。
次に、採用力の強化です。求職者は、労働条件を重視して就職先を選びます。「残業が少ない」「有給が取りやすい」という医院は、採用において有利になります。
そして、生産性の向上です。限られた時間で成果を出すことを意識することで、ムダな業務が削減され、生産性が向上します。長時間働くことが偉いのではなく、短い時間で成果を出すことが評価される文化を作りましょう。
6. まとめ
歯科医院における働き方改革は、時間外労働の上限規制、有給休暇の取得義務化、同一労働同一賃金などへの対応が求められます。まずは労働時間を正確に把握し、残業の原因を分析しましょう。
業務の効率化、予約管理の最適化、役割分担の見直し、ITツールの活用などにより、生産性を向上させながら労働時間を削減することが可能です。有給休暇の取得促進も、計画的付与や雰囲気づくりにより実現できます。
働き方改革は、スタッフの定着、採用力の強化、生産性の向上など、医院にとっても多くのメリットがあります。法令遵守にとどまらず、働きやすい職場づくりを目指して取り組んでいきましょう。
投稿者プロフィール
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歯科コンサルタント小澤直樹
2002年よりコンサルティング活動を開始。2008年から歯科コンサルタントとして勤務した後20017年より現職。
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