スタッフ間の派閥問題を解消するチームビルディング手法
「うちの医院、なんとなくグループができていて雰囲気が悪い」「特定のスタッフ同士が対立していて困っている」。こうした派閥問題は、多くの歯科医院で発生しています。放置すれば離職や患者サービスの低下につながり、医院経営に深刻な影響を与えます。
本記事では、歯科医院で実際に派閥問題を解消した事例をもとに、具体的なチームビルディング手法を解説します。
1. 派閥が生まれる原因を理解する
なぜ歯科医院で派閥ができやすいのか
歯科医院は少人数の職場であり、毎日同じメンバーと顔を合わせます。この環境特性が、派閥形成の温床になりやすいのです。
まず、職種間の壁があります。歯科衛生士、歯科助手、受付といった職種ごとに業務内容や待遇が異なるため、自然とグループ化しやすい構造になっています。「衛生士は偉そう」「助手の仕事を軽く見ている」といった不満が蓄積すると、職種間の対立に発展します。
次に、勤務年数による上下関係です。「古参スタッフ vs 新人」という構図は非常に多く、ベテランが新人を排除したり、逆に新人同士が結束して古参に反発したりするケースがあります。
さらに、院長との距離感の違いも原因になります。院長に気に入られているスタッフとそうでないスタッフの間に溝ができ、「あの人ばかり優遇されている」という不満が派閥化につながります。
派閥問題を放置するリスク
派閥問題を「よくあること」と軽視してはいけません。放置した場合、以下のような深刻な事態を招きます。
情報共有の断絶が起こります。対立するグループ間で必要な情報が伝わらず、業務ミスや患者対応の不備につながります。ある医院では、派閥間の連携不足が原因で患者の予約ダブルブッキングが頻発し、クレームが増加した事例がありました。
優秀な人材の流出も深刻です。派閥争いに巻き込まれたくないと考える真面目なスタッフほど、早期に退職を決断します。残るのは派閥の中心にいる人物だけになり、組織の弱体化が進みます。
患者にも悪影響が及びます。スタッフ間の雰囲気の悪さは、患者に必ず伝わります。「なんとなく居心地が悪い」と感じた患者は、他院に移ってしまいます。
2. 派閥解消の前にやるべきこと
現状の正確な把握
派閥問題に対処する前に、まず現状を正確に把握する必要があります。院長が「うちは大丈夫」と思っていても、水面下で問題が進行しているケースは珍しくありません。
現状把握の方法として、個別面談が最も効果的です。全スタッフと1対1で面談を行い、職場の人間関係について率直に聞きます。この際、「誰と誰が仲が悪いか」を直接聞くのではなく、「仕事をしていて困っていることはありますか」「もっとこうなったらいいのにと思うことはありますか」といった質問から入ると、本音を引き出しやすくなります。
匿名アンケートも有効です。「職場の雰囲気」「チームワーク」「情報共有」などの項目について5段階評価と自由記述で回答してもらいます。匿名であれば、面談では言えない本音が出てくることがあります。
院長自身の振り返り
派閥問題の原因が、実は院長自身にあるケースも少なくありません。特定のスタッフだけを褒める、古参スタッフの意見ばかり聞く、問題が起きても見て見ぬふりをするといった行動が、知らず知らずのうちに派閥形成を助長していることがあります。
「自分は公平に接しているか」「特定の人に依存しすぎていないか」を振り返ることが、派閥解消の第一歩になります。
3. チームビルディング手法1:共通目標の設定

「敵」を外に作る発想
派閥は、内部に「敵」を作ることで結束します。この構造を逆手に取り、外部に共通の目標を設定することで、内部の対立を緩和できます。
例えば「患者満足度を地域No.1にする」「Google口コミ評価を4.5以上にする」といった目標を掲げ、全員で取り組む体制を作ります。達成すれば全員にボーナスが出る仕組みにすると、協力するインセンティブが生まれます。
ある医院では、「リコール率80%達成」を目標に掲げ、達成時には全員で食事会を開催することにしました。衛生士だけでなく受付スタッフも「予約確認の電話を丁寧にしよう」と協力するようになり、職種間の壁が薄れていきました。
目標設定のポイント
共通目標を設定する際は、以下の点に注意が必要です。
全員が貢献できる目標にすることが重要です。「自費率向上」のような目標は、衛生士やカウンセラーは貢献しやすいですが、受付スタッフは関与しにくいと感じます。どの職種でも何らかの形で貢献できる目標を選びましょう。
達成可能だが簡単すぎない水準に設定します。あまりに高い目標は諦めにつながり、簡単すぎる目標は達成感がありません。現状から10〜20%程度の改善を目指す水準が適切です。
進捗を可視化することも大切です。目標に対する現在地を全員が確認できるよう、グラフや数値を休憩室などに掲示します。「あと少しで達成できる」という感覚が、チームの一体感を高めます。
4. チームビルディング手法2:役割と責任の明確化

業務分担の曖昧さが対立を生む
「なぜ私ばかりこの仕事をしなければならないのか」「あの人は楽な仕事しかしていない」。こうした不満は、業務分担が曖昧なときに生まれやすくなります。
業務分担表を作成し、誰がどの業務を担当するかを明確にします。その際、単に業務を割り振るだけでなく、各業務の重要性や負荷も併せて説明することが大切です。「受付業務は簡単」と思われがちですが、実際には患者対応の最前線であり、医院の印象を左右する重要な役割です。こうした認識を共有することで、職種間の相互尊重が生まれます。
役割を超えた協力体制の構築
一方で、役割を固定しすぎると「それは私の仕事ではない」という意識が生まれ、協力が得られなくなります。基本の担当は決めつつも、忙しいときは互いにカバーし合う文化を作ることが重要です。
「自分の仕事が終わったら、他に手伝えることはないか声をかける」というルールを設けている医院があります。最初は形式的でも、続けていくうちに自然と助け合いの文化が根付いていきます。
5. チームビルディング手法3:コミュニケーション機会の設計

朝礼・終礼の活用
毎日の朝礼・終礼は、チームビルディングの重要な機会です。ただし、単なる連絡事項の伝達で終わっては効果がありません。
効果的な朝礼の構成として、まず「良かったこと共有」を取り入れます。前日の診療で良かったこと、患者からの感謝の言葉などを1人ずつ共有します。ポジティブな話題から始めることで、その日の雰囲気が良くなります。
次に「今日の目標」を全員で確認します。「今日は予約が詰まっているので、効率よく回しましょう」といった具体的な目標を共有することで、チームとしての意識が高まります。
終礼では「振り返り」を行います。今日うまくいったこと、改善が必要なことを短く共有し、翌日につなげます。
定期的なミーティングの開催
月に1回程度、通常業務を離れたミーティングの時間を設けます。診療時間外に1〜2時間程度、全員が参加できる時間を確保します。
ミーティングでは、業務改善の提案、困っていることの共有、今後の医院の方針についての意見交換などを行います。重要なのは、全員が発言する機会を設けることです。特定の人だけが話すミーティングでは、派閥の固定化を招きます。
発言しにくいスタッフには、事前に議題を伝えて考えをまとめてきてもらう、少人数のグループで話し合ってから全体に発表する形式にするなどの工夫が有効です。
非公式なコミュニケーションの促進
仕事以外の場でのコミュニケーションも、派閥解消に効果があります。ただし、強制参加の飲み会は逆効果になることもあるため、参加しやすい形式を工夫します。
ランチミーティングは比較的参加しやすい形式です。月に1回、医院でお弁当を用意してみんなで食べる機会を作ります。業務時間内に行うことで、プライベートを侵害せずにコミュニケーションが取れます。
誕生日会や季節のイベントも、自然な交流の機会になります。派閥を超えて準備を担当することで、普段話さないスタッフ同士の接点が生まれます。
6. チームビルディング手法4:相互理解を深めるワーク

強みの発見ワークショップ
派閥の根底には「あの人のことがわからない」「何を考えているかわからない」という相互理解の不足があります。お互いの強みや価値観を知ることで、尊重の気持ちが生まれます。
全員で「強み発見ワークショップ」を行います。まず、各自が自分の強みだと思うことを3つ書き出します。次に、他のスタッフの強みを1人につき1つずつ書き、本人に渡します。自分では気づいていない強みを他者から指摘されることで、自己肯定感が高まると同時に、「この人は自分のことをちゃんと見てくれている」という信頼感が生まれます。
価値観の共有ワーク
「仕事で大切にしていること」をテーマに、全員で話し合う機会を設けます。ある人は「患者さんの笑顔」を大切にし、別の人は「正確さ」を重視しているかもしれません。価値観の違いを知ることで、「あの人はこういう理由でそうしているんだ」と行動の背景が理解でき、摩擦が減ります。
このワークは、外部のファシリテーターに依頼すると効果的です。院長がファシリテーションを行うと、本音が出にくくなることがあります。
7. 派閥の中心人物への対応
キーパーソンの特定と個別対応
派閥には必ず中心人物がいます。この人物への対応が、派閥解消の成否を左右します。
まず、キーパーソンを特定します。「この人がいないと雰囲気が変わる」「この人の顔色を見て周りが動いている」という人物です。多くの場合、勤続年数が長く、仕事ができるベテランスタッフです。
キーパーソンには個別面談を行い、率直に現状を伝えます。「あなたの影響力が大きいからこそ、チーム全体のことを考えてほしい」と伝え、協力を求めます。この際、責めるのではなく、その人の能力や貢献を認めた上で依頼することが重要です。
改善が見られない場合の対応
話し合いを重ねても改善が見られず、派閥行動が続く場合は、より踏み込んだ対応が必要になります。
配置転換や業務分担の変更により、派閥の構造を物理的に崩す方法があります。例えば、対立する2人が常に一緒に働く状況を変え、接点を減らすことで摩擦を軽減できます。
それでも改善しない場合は、最終的には退職勧奨も選択肢に入ります。1人の問題行動のために他のスタッフが辞めていく状況は、医院全体にとってマイナスです。ただし、この判断は慎重に行い、労務の専門家に相談した上で進めることを強くお勧めします。
8. 派閥を生まない組織文化の構築
採用段階での見極め
派閥問題は、採用の段階である程度予防できます。面接では、協調性やチームワークに関する質問を取り入れます。
「前職でチームで取り組んだ経験を教えてください」「意見が対立したとき、どのように解決しましたか」といった質問への回答から、その人がチームプレーヤーかどうかを見極めます。「私が正しいと主張して押し通した」といった回答が出てきた場合は、注意が必要です。
また、既存スタッフとの相性も重要です。最終面接の前に、主要なスタッフと顔合わせの機会を設け、感触を確認します。
公平な評価と処遇
派閥が生まれる背景には、「不公平感」があります。特定のスタッフだけが優遇されている、頑張っても評価されないといった不満が、派閥形成につながります。
評価基準を明文化し、全員に公開することで透明性を確保します。昇給や賞与の決定プロセスも可能な限りオープンにし、「なぜあの人だけ」という疑念が生まれない仕組みを作ります。
院長のリーダーシップ
最終的に、派閥のない組織を作れるかどうかは、院長のリーダーシップにかかっています。
院長自身が特定のスタッフと距離が近すぎないか、常に意識する必要があります。相談しやすいスタッフに頼りがちになるのは自然なことですが、それが他のスタッフの目にどう映るかを考えなければなりません。
また、問題を見て見ぬふりをしないことも重要です。「大人なんだから自分たちで解決してほしい」と思っても、放置すれば問題は悪化します。早期に介入し、対話の場を設けることが、院長の責任です。
9. まとめ:チームビルディングは継続的な取り組み
派閥問題の解消は、一度の取り組みで完了するものではありません。組織は常に変化し、新しいスタッフが入れば人間関係も変わります。継続的にチームビルディングに取り組む姿勢が求められます。
本記事で紹介した手法をまとめると、共通目標の設定でチームの一体感を醸成すること、役割と責任の明確化で不公平感をなくすこと、コミュニケーション機会の設計で相互理解を促進すること、そしてワークショップで深い相互理解を築くことが柱となります。
派閥のない職場は、スタッフにとって働きやすく、患者にとっても居心地の良い空間になります。結果として、定着率の向上、採用力の強化、患者満足度の向上という好循環が生まれます。
当社では、チームビルディングの設計から実行支援まで、各医院の状況に合わせたサポートを行っています。スタッフ間の人間関係にお悩みの先生は、まずは現状の把握から始めてみてください。。
投稿者プロフィール
-
歯科コンサルタント小澤直樹
2002年よりコンサルティング活動を開始。2008年から歯科コンサルタントとして勤務した後20017年より現職。
最新の投稿
スタッフマネジメント2026年4月15日スタッフ間の派閥問題を解消するチームビルディング手法
医院経営2026年4月8日キャンセル・無断キャンセルを減らす予約管理と患者対応の工夫
ホームページ2026年4月1日歯科医院における個人情報保護と情報セキュリティ対策
ネットマーケティング2026年3月25日歯科医院のためのInstagram活用術|フォロワーを増やし集患につなげる方法
無料相談/経営コンサルティングについてお問合せ
経営相談をしようかどうか迷われている先生。
ぜひ思い切ってご連絡ください。先生のお話を、じっくり先生のペースに合わせてうかがいます。まずはそこから。
先生が「今が経営改善のときかも」と感じたときが、動くべきタイミングです。ご連絡お待ちしています。

