問題スタッフへの対応—改善指導から退職勧奨までの適切なステップ

遅刻が多い、協調性がない、患者対応に問題がある。こうした問題スタッフへの対応は、多くの院長が頭を悩ませる課題です。放置すれば他のスタッフのモチベーション低下や患者離れを招きますが、対応を誤れば労務トラブルに発展するリスクもあります。

本記事では、問題スタッフへの対応を段階的に解説します。改善指導から始め、それでも改善しない場合の退職勧奨まで、法的リスクを回避しながら適切に進めるステップをお伝えします。

 

 ━目 次━
 1. 問題スタッフを放置するリスク
 2. 問題行動の種類と対応の基本方針
     ステップ1:事実確認と原因分析
     ステップ2:面談と改善指導
   ステップ3:経過観察とフォローアップ
   ステップ4:改善が見られない場合の対応
   ステップ5:退職勧奨の進め方
 3. 専門家への相談
 4. まとめ

 

1. 問題スタッフを放置するリスク

他のスタッフへの悪影響

問題スタッフを放置すると、真面目に働いているスタッフが不満を募らせます。「なぜあの人だけ許されるのか」「自分ばかり頑張っても意味がない」という感情が広がり、職場全体のモチベーションが低下します。最悪の場合、優秀なスタッフから先に辞めていく事態を招きます。

また、問題行動が「許容される」という前例ができると、他のスタッフにも同様の行動が広がるリスクがあります。遅刻を注意されないスタッフを見て、「自分も少しくらい遅れても大丈夫だろう」と考える人が出てきます。

患者への影響

問題スタッフの対応が患者に直接影響することもあります。愛想のない対応、説明不足、ミスの多さなどは、患者満足度の低下と口コミ評価の悪化につながります。一人のスタッフの問題行動が、医院全体の評判を落とすことになりかねません。

法的リスク

問題があるからといって、即座に解雇することはできません。日本の労働法は労働者を強く保護しており、正当な理由と適切な手続きなしに解雇すれば、不当解雇として訴えられるリスクがあります。感情的に対応せず、段階を踏んだ適切な対応が必要です。
 

2. 問題行動の種類と対応の基本方針

問題行動の分類

問題行動は、大きく3つに分類できます。それぞれ対応の仕方が異なるため、まず問題の性質を見極めることが重要です。

1つ目は「能力不足」です。仕事が覚えられない、ミスが多い、求められるスキルに達しないといったケースです。本人に悪意はなく、教育や配置転換で改善できる可能性があります。

2つ目は「勤怠の問題」です。遅刻、早退、無断欠勤、休憩時間の超過などが該当します。ルール違反であることは明確なので、注意・指導を段階的に行います。

3つ目は「態度・行動の問題」です。協調性がない、指示に従わない、患者や同僚への態度が悪いといったケースです。本人の意識や価値観に関わる問題であり、改善が最も難しいカテゴリーです。

対応の基本方針

どの種類の問題であっても、対応の基本方針は「段階的なアプローチ」です。いきなり厳しい処分を行うのではなく、注意→指導→警告→処分と段階を踏みます。各段階で記録を残し、改善の機会を与えたことを証明できるようにしておくことが、後のトラブル防止につながります。

 

ステップ1:事実確認と原因分析

客観的な事実の把握

問題スタッフへの対応を始める前に、まず客観的な事実を把握します。「あの人は態度が悪い」という印象ではなく、「○月○日、患者Aさんに対して○○という発言をした」という具体的な事実を収集します。

事実確認の方法としては、本人への聞き取り、周囲のスタッフへの聞き取り、患者からのクレーム記録、勤怠記録などがあります。複数の情報源から確認し、一方的な見方にならないよう注意します。

原因の分析

問題行動の背景には、さまざまな原因が考えられます。プライベートの問題を抱えている、体調が悪い、業務量が過大でストレスを感じている、人間関係に悩んでいるなど、本人なりの事情があるかもしれません。

原因を理解することで、適切な対応策が見えてきます。例えば、家庭の事情で睡眠不足が続いているなら、一時的な勤務時間調整で改善するかもしれません。原因を無視して叱責するだけでは、根本的な解決にはなりません。

 

ステップ2:面談と改善指導

面談の準備

事実確認ができたら、本人との面談を行います。面談は、プライバシーが確保できる場所で、十分な時間を取って行います。他のスタッフがいる場所での注意は、本人の尊厳を傷つけ、反発を招きます。

面談には、院長だけでなく、主任など第三者を同席させることをお勧めします。「言った・言わない」のトラブルを防ぎ、客観的な記録を残すためです。

面談の進め方

面談では、まず具体的な事実を伝えます。「最近たるんでいる」ではなく、「先月の遅刻が5回あった」と具体的に示します。次に、その行動が医院や周囲にどのような影響を与えているかを説明します。そして、本人の言い分を聞きます。

本人の話を聞く際は、途中で遮らず、最後まで聞く姿勢が大切です。言い訳に聞こえても、本人なりの事情があるかもしれません。頭ごなしに否定すると、その後の改善意欲を失わせてしまいます。

改善計画の策定

面談の結果を踏まえ、具体的な改善計画を策定します。「気をつけます」という曖昧な約束ではなく、「今後3ヶ月間、遅刻をゼロにする」「患者対応後に必ず振り返りを行う」など、測定可能な目標を設定します。

改善計画は文書化し、本人の署名をもらいます。これは後のトラブル防止のためであり、本人にも改善への意識を高めてもらう効果があります。

 

ステップ3:経過観察とフォローアップ

定期的な進捗確認

改善計画を策定したら、定期的に進捗を確認します。1〜2週間に1回程度、短時間の面談を行い、改善状況を確認します。良くなっている点は具体的に褒め、まだ課題がある点は再度指導します。

この期間は、本人にとって「見られている」というプレッシャーになると同時に、「サポートしてもらえている」という安心感にもなります。放置せず、継続的に関わる姿勢が重要です。

記録の重要性

面談の内容、改善状況、問題行動の発生などは、すべて記録に残します。日付、内容、対応を簡潔に記録しておくことで、後々の判断材料になります。

記録は、万が一労務トラブルに発展した場合の証拠にもなります。「何度も指導したが改善しなかった」ということを客観的に示すために、記録は欠かせません。

 

ステップ4:改善が見られない場合の対応

書面による警告

改善指導を行っても問題行動が続く場合は、書面による警告を行います。口頭での注意から一段階上げ、正式な警告であることを明確にします。

警告書には、問題行動の具体的内容、これまでの指導経緯、改善されない場合の処分可能性を記載します。本人に交付し、受領のサインをもらいます。

懲戒処分の検討

書面警告後も改善しない場合は、就業規則に基づく懲戒処分を検討します。懲戒処分には、戒告、減給、出勤停止、降格、諭旨解雇、懲戒解雇などの段階があります。

懲戒処分を行う際は、必ず就業規則に根拠があることを確認します。就業規則に定めのない処分は無効となるリスクがあります。また、処分の重さが問題行動に見合っているか(相当性)も重要な判断基準です。

 

ステップ5:退職勧奨の進め方

退職勧奨と解雇の違い

あらゆる手を尽くしても改善せず、雇用継続が困難と判断した場合は、退職勧奨を検討します。退職勧奨とは、会社から労働者に対して自主退職を促すことであり、解雇とは異なります。

解雇は会社が一方的に雇用契約を終了させる行為であり、厳格な要件が求められます。一方、退職勧奨は労働者の同意を得て退職してもらうため、合意が得られれば法的リスクは低くなります。ただし、退職勧奨も行き過ぎれば違法となるため、適切な方法で行う必要があります。

退職勧奨の面談

退職勧奨の面談は、丁寧かつ誠実に行います。これまでの経緯を説明し、会社として雇用継続が難しいと考えていることを伝えます。一方的に通告するのではなく、本人の考えも聞きます。

面談は複数回に分けても構いません。一度の面談で結論を急がず、本人が考える時間を与えることも大切です。ただし、長時間の面談を繰り返したり、威圧的な態度を取ったりすると、退職強要として違法とされるリスクがあります。

退職条件の提示

退職に応じてもらうために、一定の条件を提示することも有効です。退職金の上乗せ、有給休暇の買い取り、転職活動期間の猶予などが考えられます。

条件を提示する際は、「これを受け入れなければ解雇する」という言い方は避けます。あくまで任意の退職を促すものであり、選択権は本人にあることを明確にします。

 

3. 専門家への相談

社労士・弁護士の活用

問題スタッフへの対応、特に退職勧奨や解雇を検討する段階では、社会保険労務士や弁護士への相談を強くお勧めします。労働法は複雑であり、対応を誤ると後々大きなトラブルになりかねません。
専門家に相談することで、法的リスクを回避した適切な対応方法を教えてもらえます。また、書面の作成や面談への同席を依頼することもできます。

就業規則の整備

問題スタッフへの対応をスムーズに行うためには、就業規則の整備が欠かせません。懲戒処分の種類と事由、手続きなどが明確に定められていることで、適正な対応が可能になります。就業規則が古いままの医院は、この機会に見直しを検討してください。

 

4. まとめ

問題スタッフへの対応は、感情的にならず、段階的に進めることが重要です。事実確認と原因分析から始め、面談による改善指導、経過観察とフォローアップ、書面警告と懲戒処分の検討、そして最終手段としての退職勧奨という流れで進めます。

各段階で記録を残し、本人に改善の機会を与えたことを証明できるようにしておくことが、法的リスクの回避につながります。また、早い段階で専門家に相談することで、適切な対応が可能になります。

問題を放置すれば組織全体に悪影響が広がりますが、適切に対応すれば、本人の改善につながることもあります。毅然とした態度と、改善を支援する姿勢の両方を持って対応にあたってください。

 

 

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  • Web:https://tdmlabo.com/

 

 

投稿者プロフィール

NAOKI OZAWA
歯科コンサルタント小澤直樹
2002年よりコンサルティング活動を開始。2008年から歯科コンサルタントとして勤務した後20017年より現職。

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