ホームページ乗っ取り・改ざん被害を防ぐ!セキュリティ対策の基本
目次
1. 歯科医院HPが狙われる理由と被害の実態
2. 実際に起きた乗っ取り・改ざん事例
3. 今すぐチェックすべき5つのセキュリティ項目
4. WordPress等CMSのセキュリティ対策
5. バックアップ・復旧体制の構築方法
6. 被害に遭ってしまった場合の対処手順
7. まとめ
1.歯科医院HPが狙われる理由と被害の実態
「うちは小さな医院だから狙われない」は誤解です。むしろ、セキュリティ対策が甘い中小医院が狙われやすいのが現実です。
狙われる3つの理由

理由1: 個人情報が豊富
歯科医院のHPには、予約フォーム経由で患者の個人情報(氏名、電話番号、メールアドレス等)が蓄積されています。これらは闇市場で売買されます。
理由2: セキュリティ対策が甘い
大企業と違い、中小の歯科医院はセキュリティ専門家を雇う余裕がありません。古いWordPressバージョン、簡単なパスワードなど、脆弱性が放置されています。
理由3: 踏み台にされる
医院のHPを乗っ取り、そこから他のサイトへ攻撃する「踏み台」として利用されます。医院側は被害者であると同時に、加害者にもなってしまいます。
被害の実態データ
独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の調査(2025年)によれば、中小企業・医療機関のサイバー攻撃被害は以下の通りです。
- サイト改ざん被害: 年間約15,000件
- 情報漏洩被害: 年間約8,000件
- ランサムウェア被害: 年間約3,000件
歯科医院も例外ではなく、被害は増加傾向です。
被害に遭った場合の損失
直接損失:
- HP復旧費用: 10〜50万円
- 情報漏洩の賠償金: 患者1人あたり数千円〜数万円
- 法律相談費用: 10〜30万円
間接損失:
- 信用失墜による患者離れ
- 新患獲得の停止(HP停止期間中)
- メディアに報道されるリスク
総額で数百万円〜数千万円の損失になることもあります。
2.実際に起きた乗っ取り・改ざん事例
実際に起きた被害事例から学びます。
事例1: WordPressの脆弱性を突かれた改ざん
ZZ歯科医院(仮名、地方都市)
2024年8月、患者から「HPが変です」と連絡がありました。確認すると、トップページが全て英語のギャンブルサイトに書き換えられていました。
原因:
- WordPressのバージョンが古かった(3年前のまま放置)
- プラグインも古いバージョン
- 管理画面のログインパスワードが「123456」と簡単
被害:
- HP復旧費用: 35万円
- 復旧までの期間: 2週間(その間、新患獲得ゼロ)
- Googleから「ハッキングされたサイト」と警告表示され、検索順位が圏外に
対策後:
- WordPress自動更新設定
- パスワード強化(16桁、英数字記号混在)
- セキュリティプラグイン導入
事例2: 予約フォームから情報漏洩
AA歯科医院(仮名、都市部)
2024年5月、患者から「知らないメールが大量に届く」という連絡が複数ありました。調査の結果、予約フォーム経由で入力された患者情報(氏名、電話番号、メールアドレス)が外部に流出していたことが判明しました。
原因:
- 予約フォームのセキュリティ設定が甘かった
- SSL化されているが、フォームのデータ送信処理に脆弱性
被害:
- 情報漏洩した患者: 約250人
- 1人あたり5,000円の見舞金 × 250人 = 125万円
- 弁護士費用: 30万円
- 信用失墜
対策後:
- 予約フォームをセキュリティの高いシステムに変更
- 個人情報の定期削除(予約完了後3ヶ月で自動削除)
事例3: ランサムウェア攻撃
BB歯科医院(仮名、地方都市)
2024年11月、朝出勤すると、HPに「あなたのデータを暗号化した。復号化したければ100万円を仮想通貨で支払え」という英語のメッセージが表示されていました。
原因:
- 古いサーバー、古いPHPバージョン
- バックアップを取っていなかった
被害:
- HPのデータが全て暗号化され、復旧不可能
- 身代金は支払わず(支払っても復旧しないケースが多い)
- HPを一から作り直し: 60万円
- 復旧までの期間: 1ヶ月
教訓: バックアップがあれば、身代金を払わずに復旧できた
3.今すぐチェックすべき5つのセキュリティ項目
自院のHPが安全か、5つの項目でチェックします。
チェック1: SSL化されているか?

確認方法: HPのURLを見る
✅ OK: 「https://」で始まる(鍵マークが表示される) ❌ NG: 「http://」で始まる
SSL化されていない場合のリスク:
- 通信が暗号化されず、盗聴される
- Googleの検索順位が下がる
- ブラウザに「保護されていない通信」と警告表示
対策: サーバー会社に「SSL証明書を導入したい」と依頼(費用: 年間0〜数万円)
チェック2: WordPress等のバージョンが最新か?
確認方法: WordPress管理画面にログイン → 「ダッシュボード」→「更新」を確認
✅ OK: 「お使いのWordPressは最新版です」と表示 ❌ NG: 「WordPressの新しいバージョンが利用可能です」と表示
古いバージョンのリスク:
- 既知の脆弱性が放置され、攻撃される
対策: すぐに更新ボタンを押す。または、自動更新を有効化。
チェック3: パスワードが強力か?
確認方法: 管理画面のログインパスワードを思い出す
❌ NG例:
- 「123456」
- 「password」
- 「歯科医院名」
- 生年月日
✅ OK例:
- 「aB3#xK9$mP2@vL7!」(16桁以上、英数字記号混在)
弱いパスワードのリスク:
- 総当たり攻撃で簡単に破られる
対策: パスワードマネージャー(1Passwordなど)で強力なパスワードを生成・管理
チェック4: 定期的にバックアップを取っているか?
確認方法: 制作会社または自分に「最後にバックアップを取ったのはいつ?」と聞く
✅ OK: 毎日または毎週、自動でバックアップ ❌ NG: バックアップを取っていない、または半年以上前
バックアップがないリスク:
- 改ざん・乗っ取りされても復旧できない
- ランサムウェアに身代金を払うしかない
対策: サーバーの自動バックアップ機能を有効化、またはプラグイン(UpdraftPlusなど)導入
チェック5: 管理画面へのログイン履歴を確認しているか?
確認方法: セキュリティプラグイン(Wordfence等)で、不正ログイン試行を確認
✅ OK: 定期的にログイン履歴をチェック、不審なIPアドレスがないか確認 ❌ NG: ログイン履歴を一度も見たことがない
確認しないリスク:
- 既に侵入されているのに気づかない
対策: セキュリティプラグインを導入し、週1回ログイン履歴をチェック
4.WordPress等CMSのセキュリティ対策
WordPress利用医院向けに、具体的な対策を解説します。
対策1: WordPress本体・プラグイン・テーマの自動更新
設定方法: 管理画面 → 「ダッシュボード」→「更新」→「自動更新を有効化」
注意点: 自動更新で稀にサイトが崩れることがあります。対策として、バックアップを併用します。
対策2: セキュリティプラグインの導入
おすすめプラグイン:
Wordfence Security(無料):
- ファイアウォール機能
- マルウェアスキャン
- 不正ログイン試行のブロック
- ログイン履歴の記録
iThemes Security(無料):
- ブルートフォース攻撃の防止
- ファイル変更検知
- 2段階認証
導入方法: 管理画面 → 「プラグイン」→「新規追加」→「Wordfence」で検索 → インストール → 有効化
対策3: 管理画面URLの変更
WordPressの管理画面URLは、デフォルトで「https://〇〇.com/wp-admin/」です。これは攻撃者も知っているため、変更します。
変更方法: プラグイン「WPS Hide Login」を使用
変更後: 「https://〇〇.com/secret-login-page/」(自分で決められる)
対策4: ログイン試行回数の制限
パスワードを総当たりで試す攻撃(ブルートフォース攻撃)を防ぐため、ログイン失敗を一定回数繰り返したIPアドレスをブロックします。
設定方法: Wordfenceまたはログイン試行回数制限プラグインを導入
例: 5回連続でログイン失敗 → 24時間ブロック
対策5: 不要なプラグインの削除
使っていないプラグインは、脆弱性の温床になります。定期的に見直し、不要なものは削除します。
確認方法: 管理画面 → 「プラグイン」→ 「無効」になっているプラグインを削除
5.バックアップ・復旧体制の構築方法
万が一に備え、バックアップと復旧体制を整えます。
バックアップの基本ルール

ルール1: 3-2-1ルール
- 3: データを3つ保存(本番サーバー + バックアップ2つ)
- 2: 2種類の媒体に保存(サーバー + クラウドストレージ)
- 1: 1つは遠隔地に保存(別のクラウドサービス等)
ルール2: 定期的に(最低週1回)
毎日が理想ですが、最低でも週1回はバックアップを取ります。
ルール3: 自動化
手動だと忘れるため、自動バックアップを設定します。
WordPressのバックアップ方法
方法1: サーバーの自動バックアップ機能
エックスサーバー、さくらインターネット等の主要サーバーは、自動バックアップ機能があります。
設定方法: サーバーの管理画面 → 「バックアップ」→「自動バックアップを有効化」
方法2: プラグイン(UpdraftPlus)
設定手順:
- UpdraftPlusをインストール・有効化
- 設定画面で、バックアップスケジュールを設定(例: 毎週日曜日)
- バックアップの保存先を設定(Googleドライブ、Dropbox等)
方法3: 制作会社に依頼
月額保守契約で、バックアップを代行してもらいます。
復旧テストの実施
バックアップを取っていても、復旧できなければ意味がありません。年に1回は、復旧テストを実施します。
テスト手順:
- テスト環境(別のサーバー)を用意
- バックアップデータを復元してみる
- 正常に表示されるか確認
6.被害に遭ってしまった場合の対処手順
万が一、乗っ取り・改ざん被害に遭った場合の対処手順です。
ステップ1: HPを即座に閉鎖(30分以内)

被害拡大を防ぐため、HPを一時的に閉鎖します。
方法: サーバーの管理画面で、サイトを非公開に設定。または、制作会社に連絡して停止してもらう。
ステップ2: 証拠の保全(1時間以内)
改ざんされたページのスクリーンショットを撮り、保存します(警察への被害届、保険請求に必要)。
ステップ3: パスワードの変更(2時間以内)
管理画面、サーバー、データベース等、全てのパスワードを変更します。
ステップ4: 専門家への連絡(3時間以内)
- 制作会社(HP復旧)
- サーバー会社(ログ調査)
- セキュリティ専門会社(原因調査、再発防止策)
- 弁護士(情報漏洩の場合)
- 警察(サイバー犯罪相談窓口)
ステップ5: 患者への告知(24時間以内)
情報漏洩の可能性がある場合、患者に速やかに告知します。
告知文の例:
【重要なお知らせ】
当院のホームページが不正アクセスを受け、予約フォームから入力いただいた個人情報(氏名、電話番号、メールアドレス)が漏洩した可能性があります。
現在、専門家と協力し、原因調査と対策を進めております。
該当する患者様には、個別にご連絡いたします。ご心配をおかけし、誠に申し訳ございません。
〇〇歯科クリニック
院長 △△
ステップ6: 復旧作業(数日〜数週間)
バックアップから復元、またはHP再構築を行います。
ステップ7: 再発防止策の実施
前述のセキュリティ対策を全て実施します。
7.まとめ
HP乗っ取り・改ざんは、他人事ではありません。SSL化、最新バージョンへの更新、強力なパスワード、定期バックアップの4つで、リスクを大幅に減らせます。今日からセキュリティ対策を始めましょう。
今すぐできる5つのアクション
- □ SSL化されているか確認(https://で始まるか)
- □ WordPressのバージョン確認・更新
- □ パスワードを強力なものに変更(16桁以上)
- □ バックアッププラグイン導入(UpdraftPlus等)
- □ セキュリティプラグイン導入(Wordfence等)
セキュリティ対策チェックリスト
基本対策:
□ SSL化済み
□ WordPress・プラグイン・テーマが最新版
□ パスワードが16桁以上、英数字記号混在
□ 定期バックアップ(週1回以上、自動)
追加対策:
□ セキュリティプラグイン導入
□ 管理画面URLを変更
□ ログイン試行回数制限
□ 不要なプラグイン削除
□ 2段階認証設定
復旧体制:
□ バックアップの保存先を複数確保
□ 復旧テストを年1回実施
□ 被害時の連絡先リストを作成
制作会社への確認事項
自院のHPを制作会社に管理してもらっている場合、
以下を確認しましょう:
□ 自動バックアップは有効か?
□ WordPressの自動更新は有効か?
□ セキュリティプラグインは導入されているか?
□ 緊急時の連絡先は?(24時間対応可能か?)
セキュリティ診断の依頼テンプレート
件名: セキュリティ診断の依頼
お世話になっております。
〇〇歯科クリニックの△△です。
当院のホームページのセキュリティ状況を
診断していただきたくご連絡いたしました。
【確認したい項目】
- SSL化の状況
- WordPress・プラグインのバージョン
- バックアップの設定状況
- セキュリティプラグインの導入状況
- パスワード強度
- 脆弱性診断
お見積りをお願いいたします。
最後に
「うちは狙われない」という油断が、最大のリスクです。今日からできる対策を、一つずつ実行しましょう。特にバックアップは、被害に遭ってから後悔しても遅いです。
「セキュリティ診断をしてほしい」「対策を代行してほしい」という院長先生は、株式会社リバティーフェローシップ(東京歯科経営ラボ)にご相談ください。
セキュリティ診断、脆弱性対策、バックアップ設定、万が一の復旧サポートまで、トータルでお手伝いします。
【無料診断受付中】 あなたのHP、セキュリティは大丈夫?無料で診断します。
投稿者プロフィール
-
歯科コンサルタント小澤直樹
2002年よりコンサルティング活動を開始。2008年から歯科コンサルタントとして勤務した後20017年より現職。
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