ビフォーアフター写真掲載で行政指導!歯科医院が守るべき医療広告ガイドライン

目次
1. 歯科医院の広告規制が厳格化された背景
2. ビフォーアフター写真が問題視される理由
3. 医療広告ガイドラインの基本原則
4. ビフォーアフター写真を掲載する際の条件
5. その他の注意すべき広告表現
6. 行政指導を受けた場合のリスク
7. まとめ
1.歯科医院の広告規制が厳格化された背景
近年、歯科医院のホームページやSNSにおける広告表現が問題視されるケースが急増しています。特に2018年6月の医療法改正により、ホームページも「広告」として規制対象となったことで、多くの歯科医院が知らず知らずのうちに法律違反の状態に陥っているのが実情です。
以前は、ホームページは「患者が自ら求めて閲覧する情報」として広告規制の対象外とされていました。しかし、美容医療を中心に誇大広告やトラブルが相次いだことから、厚生労働省は規制を強化。現在では、ホームページ、SNS、チラシ、看板など、あらゆる媒体が医療広告ガイドラインの適用を受けることになりました。
この変更により、特に影響を受けたのが「ビフォーアフター写真」です。治療前後の変化を視覚的に示すこの手法は、患者への訴求力が高い反面、誤認を招きやすいとして厳しく制限されるようになったのです。実際に、各地の保健所から行政指導を受ける歯科医院が後を絶たず、中には罰則を科されたケースも報告されています。
2.ビフォーアフター写真が問題視される理由

ビフォーアフター写真がなぜ問題となるのか、その本質を理解することが重要です。医療広告ガイドラインでは、患者に誤認を与える可能性のある表現を禁止しており、ビフォーアフター写真は以下の点で問題視されています。
まず第一に、治療効果の個人差が考慮されにくい点が挙げられます。歯科治療の結果は患者の口腔内の状態、年齢、生活習慣などによって大きく異なります。しかし、写真だけを見た患者は「自分も同じ結果が得られる」と期待してしまう可能性があります。これは患者の適切な医療選択を妨げる要因となります。
第二に、最良の症例だけを選んで掲載することで、実際の治療成績よりも優れた印象を与えてしまうリスクがあります。100症例のうち最も成功した1例だけを掲載すれば、99%の患者は異なる結果を経験することになります。こうした選択的な情報提供は、医療広告として不適切とされています。
第三に、写真の撮影条件や加工によって、実際以上に効果を強調できてしまう問題があります。照明の当て方、角度、画像処理などにより、治療効果を誇張することが技術的に可能です。こうした操作は、患者の判断を歪める要因となります。
3.医療広告ガイドラインの基本原則
医療広告ガイドラインは、患者保護の観点から以下の基本原則を定めています。歯科医院のホームページ制作においては、これらの原則を常に念頭に置く必要があります。
虚偽広告の禁止が最も基本的な原則です。事実と異なる内容や、誤認を招く表現は一切認められません。例えば、実際には行っていない治療法を掲載したり、資格を持たない治療について専門性をアピールすることは違法行為となります。
次に比較優良広告の禁止があります。「地域No.1」「最高の技術」といった表現や、他の医療機関と比較して優れていることを示唆する内容は禁止されています。客観的な事実に基づかない優位性の主張は、患者の適切な選択を阻害するためです。
さらに誇大広告の禁止も重要な原則です。事実であっても、過度に強調したり、確実性がないのに断定的な表現を使うことは認められません。「必ず治る」「絶対に痛くない」といった表現は、医療の不確実性を無視した誇大広告に該当します。
そして患者の主観的な体験談の掲載制限も設けられています。個人の感想や体験談は、その人特有の結果であり、他の患者にも同様の結果が得られる保証はありません。そのため、単なる感想の羅列は広告として不適切とされています。
4.ビフォーアフター写真を掲載する際の条件
ビフォーアフター写真が完全に禁止されているわけではありません。適切な条件を満たせば掲載が認められています。ここでは、その具体的な条件について解説します。
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必須条件 |
具体的な内容 |
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治療内容の詳細説明 |
使用した材料、治療期間、回数などの明記 |
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費用の明示 |
総額費用を具体的に記載 |
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リスク・副作用の説明 |
起こりうる問題点を正確に記載 |
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治療期間・回数 |
標準的な治療スケジュールの提示 |
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個人差の明記 |
効果に個人差がある旨の注意書き |
まず必須となるのが、治療内容の詳細な説明です。単に写真を掲載するだけでなく、どのような治療を行ったのか、使用した材料は何か、治療期間はどれくらいかかったのかを明確に記載する必要があります。例えば、セラミック治療であれば、使用したセラミックの種類、形成した歯の本数、治療回数などを具体的に示します。
費用の明示も重要な要件です。写真で示された治療にかかった総額を明確に記載しなければなりません。「○○円〜」といった曖昧な表現ではなく、実際にかかった費用を正確に示すことが求められます。
さらに、リスクや副作用についての説明が不可欠です。どんな治療にも一定のリスクは存在します。審美治療であれば、知覚過敏のリスク、再治療の可能性、歯肉の変化などを正直に記載する必要があります。これらの情報を隠すことは、患者の適切な判断を妨げることになります。
また、治療期間や回数についても標準的な情報を提供することが求められます。写真の症例が特別に短期間で完了した場合でも、一般的にはどの程度の期間が必要なのかを併記することで、患者に現実的な期待を持ってもらうことができます。
最後に、効果には個人差がある旨を明記することも必須です。「治療結果には個人差があります」といった注意書きを、写真と同じページに分かりやすく表示する必要があります。
5.その他の注意すべき広告表現

ビフォーアフター写真以外にも、歯科医院のホームページで注意すべき表現は多数存在します。知らずに使用してしまいがちな問題表現をいくつか紹介します。
まず、「無痛治療」という表現は原則として使用できません。痛みの感じ方には個人差があり、完全に痛みをゼロにすることは医学的に保証できないためです。「痛みに配慮した治療」「麻酔を使用した治療」といった客観的な表現に変更する必要があります。
「最先端」「最新」といった表現も注意が必要です。何をもって最先端とするのか、いつまでが最新なのかが不明確であり、誇大広告と判断される可能性があります。具体的な技術名や導入時期を示すことで、より正確な情報提供が可能になります。
また、芸能人やインフルエンサーによる推薦コメントも原則禁止です。著名人の影響力を利用して患者を誘引することは、適切な医療選択を妨げる行為とされています。ただし、客観的な事実として取材を受けたことを報告する程度であれば問題ありません。
「当院だけ」「他院では受けられない」といった排他的な表現も避けるべきです。実際には他の医療機関でも同様の治療が受けられる場合、これらの表現は虚偽広告に該当します。
さらに、治療前後の写真に加工を施すことは厳禁です。明るさや色調の調整であっても、治療効果を実際以上に見せる目的での加工は認められません。撮影条件を統一し、ありのままの状態を示すことが求められます。
6.行政指導を受けた場合のリスク

医療広告ガイドラインに違反した場合、どのようなリスクがあるのでしょうか。単なる注意で済むと考えるのは危険です。
まず、保健所からの行政指導が入ります。違反が確認されると、該当する表現の削除や修正を求める指導が行われます。この段階で速やかに対応すれば大きな問題にはなりませんが、指導を無視したり対応が遅れたりすると、事態は深刻化します。
次の段階として、医療法に基づく中止命令や是正命令が出されることがあります。これは行政処分であり、公的な記録として残ります。命令に従わない場合、さらに重い措置が取られることになります。
最悪の場合、罰則が科されることもあります。医療法では、虚偽広告に対して6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が規定されています。刑事罰を受けることは、医院の社会的信用を大きく損なう結果となります。
また、行政指導や処分を受けたことが地域で知られると、評判の低下は避けられません。SNSなどで情報が拡散されれば、長期的な患者離れにつながる可能性もあります。信頼回復には多大な時間と労力が必要となるでしょう。
さらに、医療広告の違反は、医院開設者である歯科医師の責任問題にも発展します。管理監督責任を問われることもあり、場合によっては医療機関としての許認可に影響する可能性も否定できません。
まとめ

歯科医院のホームページ制作において、医療広告ガイドラインの遵守は必須事項となっています。特にビフォーアフター写真の掲載には細心の注意が必要です。
重要なポイントを整理すると、ビフォーアフター写真は条件付きで掲載可能ですが、治療内容の詳細説明、費用の明示、リスク・副作用の記載、個人差の明記などが必須となります。これらの情報を欠いた写真掲載は、行政指導の対象となる可能性が高いのです。
また、「無痛治療」「最先端」といった誇大表現、芸能人の推薦コメント、他院との比較表現なども避けなければなりません。患者に誤認を与える可能性のある表現は、たとえ事実であっても制限されることを理解しておく必要があります。
違反した場合のリスクは決して軽くありません。行政指導から始まり、命令、罰則へと段階的に厳しくなり、最終的には医院の信用失墜につながります。一度失った信頼を取り戻すことは容易ではありません。
歯科医院のホームページは、患者との大切なコミュニケーションツールです。法令を遵守しながらも、患者にとって有益な情報を提供することは十分に可能です。専門家のアドバイスを受けながら、適切なホームページ制作を心がけることが、長期的な医院経営の成功につながるのです。
当社では、医療広告ガイドラインを熟知した専門スタッフが、コンプライアンスを守りながら魅力的なホームページ制作をサポートいたします。安心してお任せください。
投稿者プロフィール
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歯科コンサルタント小澤直樹
2002年よりコンサルティング活動を開始。2008年から歯科コンサルタントとして勤務した後20017年より現職。
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