歯科医院HPにYouTubeチャンネルは必要?動画マーケティングの費用対効果

「YouTubeを始めた方がいいのでしょうか?」。歯科医院の院長から、このような相談を受けることが増えています。動画コンテンツの重要性が高まる中、YouTubeチャンネルの開設を検討する医院も多いでしょう。

しかし、動画制作には時間とコストがかかります。本当にYouTubeチャンネルは必要なのか、費用対効果は見合うのか。本記事では、歯科医院における動画マーケティングの実態と、YouTubeチャンネル運営の是非について、率直に解説します。

目次
1. 歯科医院の動画マーケティングの現状
2. YouTubeチャンネルを持つメリット
3. YouTubeチャンネルのデメリットと課題
4. YouTubeチャンネル運営の費用と労力
5. 費用対効果を検証する
6. YouTubeが向いている医院・向いていない医院
7. YouTube以外の動画活用法
8. 動画マーケティングを始めるなら
9. よくある質問
10. まとめ

 

1.歯科医院の動画マーケティングの現状

まず、歯科医院における動画マーケティングの現状を確認しましょう。

動画コンテンツの重要性の高まり

インターネット上のコンテンツにおいて、動画の存在感は年々高まっています。5Gの普及、スマートフォンの高性能化により、動画視聴のハードルは大きく下がりました。

患者さんの情報収集においても、「文章を読むより動画で見たい」というニーズは確実に増えています。

歯科医院のYouTube参入状況

歯科医院や歯科医師がYouTubeチャンネルを開設するケースは増えていますが、成功している例は一部に限られます。

登録者数1万人以上のチャンネルは全国でも数十程度であり、ほとんどのチャンネルは登録者数百人〜数千人で停滞しています。継続的に投稿できず、休止状態のチャンネルも多いのが現状です。

患者が動画に求めるもの

歯科に関連して患者さんが動画に求める情報として、治療の流れ・内容の説明、痛みや恐怖への不安解消、医院・医師の雰囲気、セルフケアの方法、費用や期間の目安などがあります。

これらの情報は、必ずしもYouTubeチャンネルで提供する必要はなく、ホームページ内の動画でも対応できます。

2.YouTubeチャンネルを持つメリット

YouTubeチャンネルを運営することで得られるメリットを整理します。

幅広いリーチの可能性

YouTubeは月間アクティブユーザー数が世界で20億人以上、日本でも7,000万人以上という巨大プラットフォームです。

検索エンジンとしても機能しており、「親知らず抜歯」「ホワイトニングやり方」といった検索から動画が視聴されます。ホームページだけでは届かない層にリーチできる可能性があります。

信頼性・専門性のアピール

動画で治療の説明や歯科知識を発信することで、専門家としての信頼性をアピールできます。

「この先生は詳しそう」「説明がわかりやすい」という印象は、来院の動機につながります。文章よりも、話している姿を見せることで人柄も伝わります。

SEO効果

YouTubeはGoogleの傘下であり、YouTube動画は Google検索でも表示されます。

「〇〇市歯医者」といった検索で、自院の動画が表示されれば、露出が増えます。ホームページにYouTube動画を埋め込むことで、滞在時間の向上にもつながり、SEO効果が期待できます。

ストック型コンテンツ

一度作成した動画は、YouTubeに残り続けます。SNSの投稿のように流れていくことなく、長期間にわたって視聴される可能性があります。

数年前に投稿した動画が、今も再生され続けているケースは珍しくありません。

他媒体への活用

YouTube用に制作した動画は、ホームページ、Instagram、TikTok、LINE公式アカウントなど、他の媒体でも活用できます。

一度の制作で複数の用途に使えるため、効率的なコンテンツ運用が可能です。

3.YouTubeチャンネルのデメリットと課題

一方で、YouTubeチャンネル運営には多くのデメリットと課題があります。

競争の激化

歯科系YouTubeへの参入は増えており、競争は激化しています。後発で始めても、すでに多くの登録者を持つチャンネルに埋もれてしまう可能性があります。

同じテーマの動画は大量に存在し、差別化が難しくなっています。

継続の難しさ

YouTubeで成果を出すには、継続的な投稿が必要です。週1本程度の投稿を数年続けて、ようやく成果が見え始めるケースが一般的です。

多忙な歯科医院の業務の中で、動画制作を継続することは非常に難しい課題です。多くのチャンネルが、数本〜十数本の投稿で更新が止まっています。

即効性がない

YouTubeは、始めてすぐに効果が出るものではありません。登録者数や再生回数が増えるまでには、通常1〜2年以上かかります。

「来月の集患を増やしたい」という短期的な目標には、YouTubeは向いていません。

炎上・批判のリスク

YouTubeは不特定多数が視聴するため、批判的なコメントや炎上のリスクがあります。

医療情報の発信は、内容によっては批判を受けることもあります。コメント対応にも時間と労力がかかります。

地域密着ビジネスとの相性

歯科医院は基本的に地域密着のビジネスです。YouTubeで全国から視聴者を集めても、実際に来院できるのは近隣の住民に限られます。

登録者が増えても、そのほとんどが商圏外の人であれば、直接的な集患効果は限定的です。

4.YouTubeチャンネル運営の費用と労力

YouTubeチャンネルを運営するために必要な費用と労力を具体的に見ていきます。

初期費用

撮影機材として、カメラ(10〜30万円)、三脚(1〜3万円)、照明(1〜5万円)、マイク(1〜5万円)が必要です。合計15〜45万円程度が目安となります。

スマートフォンで始めることも可能ですが、品質を求めるなら専用機材があった方が良いでしょう。

編集ソフトは、無料のものから月額数千円のサブスクリプションまで様々です。Adobe Premiere Pro、Final Cut Pro、DaVinci Resolveなどがよく使われています。

制作費用(外注の場合)

動画制作を外注する場合の費用目安を紹介します。

簡単な撮影・編集の場合、1本5〜10万円程度です。しっかりした企画・撮影・編集の場合、1本10〜30万円程度です。アニメーション・CG込みの場合、1本30〜50万円以上になります。

月4本投稿する場合、外注費だけで月20〜120万円、年間240〜1,440万円という計算になります。

制作にかかる時間(自院制作の場合)

自院で動画を制作する場合、1本あたりの所要時間の目安を紹介します。

企画・構成に1〜2時間、撮影に1〜3時間、編集に3〜8時間、サムネイル・タイトル作成に0.5〜1時間かかります。合計で5.5〜14時間程度となります。

週1本投稿する場合、毎週これだけの時間を確保する必要があります。院長や担当スタッフの負担は相当なものになります。

ランニングコスト

機材のメンテナンス、編集ソフトのサブスクリプション、外部サービスの利用料などが継続的にかかります。

人件費(担当者の時間)を考慮すると、実質的なコストはさらに大きくなります。

5.費用対効果を検証する

YouTubeチャンネル運営の費用対効果を、具体的に検証してみましょう。

集患への直接効果

YouTubeから直接来院につながるケースは、実はそれほど多くありません。

YouTubeの視聴者は全国に分散しており、商圏内の視聴者はごく一部です。「動画を見て来ました」という患者さんが月に1〜2人いれば、まだ良い方です。

仮に月1本の動画制作に10万円(外注費または人件費)をかけ、それで新患が月2人増えたとします。新患1人の売上が1万円とすると、月2万円の売上に対して10万円のコストとなり、短期的には赤字です。

間接的な効果

YouTubeの効果は、直接的な集患だけでなく、間接的な効果も考慮する必要があります。

ブランディング効果として、「YouTubeで発信している医院」という認知が、信頼性向上につながります。

ホームページへの誘導として、YouTube経由でホームページに流入し、そこから予約につながるケースがあります。

既存患者への情報提供として、治療説明や術後ケアの動画を、既存患者に案内することで満足度向上につながります。

採用への効果として、働く環境や院長の人柄がわかる動画は、求職者へのアピールになります。

長期的な視点

YouTubeは長期的な視点で評価すべき施策です。

3〜5年継続して投稿を続ければ、数百本のコンテンツが蓄積されます。これらが継続的に再生され、検索にも表示されるようになれば、投資に見合うリターンが得られる可能性があります。

ただし、そこまで継続できるかどうかが最大の課題です。

費用対効果の評価

結論として、短期的な費用対効果は良くないと言わざるを得ません。

「来年の集患を増やしたい」という目標に対しては、YouTubeよりもリスティング広告、MEO対策、ホームページ改善の方が効果的です。

一方、「5年後の医院のブランドを築きたい」「業界での知名度を上げたい」という長期的な目標であれば、YouTubeは有効な選択肢になり得ます。

6.YouTubeが向いている医院・向いていない医院

すべての歯科医院にYouTubeが必要なわけではありません。向き不向きがあります。

YouTubeが向いている医院

院長が発信に積極的な場合として、動画で話すことが苦にならない、むしろ楽しいという院長は、YouTubeに向いています。継続の最大の鍵は、発信者自身のモチベーションです。

専門分野が明確な場合として、「インプラント専門」「矯正専門」「口腔外科専門」など、特定の分野に強みがあれば、その分野に特化したチャンネルとして差別化できます。

リソースに余裕がある場合として、動画制作に時間や費用を投資できる余裕がある医院は、取り組みやすいでしょう。専任スタッフを置けるなら、なお良いです。

長期的な視点を持てる場合として、「1〜2年は成果が出なくても続ける」という覚悟があるなら、YouTubeに挑戦する価値があります。

広域からの集患を狙う場合として、自費診療中心で、県外からも患者が来るような専門性の高い医院は、YouTubeとの相性が良いです。

YouTubeが向いていない医院

時間的余裕がない場合として、日々の診療で精一杯という状況では、動画制作の継続は難しいでしょう。中途半端に始めるくらいなら、やらない方がましです。

院長が動画に抵抗がある場合として、カメラの前で話すことに強い抵抗がある場合、無理に始めても良いコンテンツは作れません。

短期的な成果を求める場合として、「すぐに効果が出ないと困る」という状況では、YouTubeは適していません。他の施策を優先すべきです。

地域密着・保険診療中心の場合として、商圏が限定されており、保険診療が中心の医院では、YouTubeの全国リーチは活かしにくいです。

差別化ポイントがない場合として、特に強みのある分野がない状態でYouTubeを始めても、「よくある歯科系動画」に埋もれてしまいます。

7.YouTube以外の動画活用法

YouTubeチャンネルを運営しなくても、動画を活用する方法はあります。

ホームページ内での動画活用

ホームページ内に動画を掲載することで、YouTubeチャンネルを持たなくても動画の効果を得られます。

院紹介動画として、医院の雰囲気、院長のメッセージ、スタッフ紹介などを1〜3分程度の動画で伝えます。トップページや医院紹介ページに埋め込みます。

治療説明動画として、インプラント、矯正、ホワイトニングなど、自費治療の説明動画を各治療ページに埋め込みます。理解度向上と成約率アップにつながります。

院内ツアー動画として、受付から診療室まで、患者目線で院内を案内する動画は、初診の不安軽減に効果的です。

これらの動画はYouTubeにアップロードして埋め込む形でも、Vimeoなど他のサービスを使う形でも構いません。

Instagramリール・TikTokの活用

短尺動画であれば、YouTubeよりもInstagramリールやTikTokの方が参入しやすいです。

15〜60秒程度の短い動画で、編集の手間が少なく済みます。若い世代へのリーチは、YouTubeよりも効果的な場合があります。歯科の豆知識、ビフォーアフター、院内の日常など、カジュアルなコンテンツが受け入れられます。

ただし、こちらも継続が必要であり、「バズる」ことを期待して始めるのは禁物です。

LINE公式アカウントでの動画配信

既存患者へのフォローとして、LINE公式アカウントで動画を配信する方法もあります。

術後のケア方法、定期検診の案内、セルフケアのコツなど、既存患者に役立つ動画を配信します。新規集患ではなく、患者満足度の向上や再来院促進に効果的です。

外部の動画を活用する

自院で動画を制作しなくても、メーカーや学会が提供する説明動画を活用する方法もあります。

インプラントメーカー、矯正装置メーカーなどが、患者説明用の動画を提供しているケースがあります。これらをホームページや診療時の説明に活用することで、動画の効果を得られます。

8.動画マーケティングを始めるなら

動画マーケティングを始める場合の、優先順位と進め方を提案します。

優先順位の考え方

動画活用の優先順位として、以下の順序をお勧めします。

まずホームページ用の基本動画として、院紹介動画、主要治療の説明動画を制作します。これが最も費用対効果が高いです。

次に採用向け動画として、求職者向けのスタッフインタビュー、職場紹介動画を制作します。採用に課題がある場合は優先度が上がります。

その後、必要に応じてInstagram・TikTokとして、短尺動画でのカジュアルな発信を行います。若い層へのリーチを増やしたい場合に検討します。

最後に、本格的にやる覚悟があればYouTubeチャンネルを開設します。長期的な視点で、継続できる体制を整えてから始めます。

小さく始める

いきなり大きな投資をするのではなく、小さく始めることをお勧めします。

最初の1本として、スマートフォンで院紹介動画を撮影し、ホームページに掲載してみます。反応を見ながら、必要に応じて追加していきます。外注する場合も、まずは1〜2本で効果を検証します。

継続できる仕組みを作る

動画を始めるなら、継続できる仕組みを最初に考えます。

誰が担当するのか、どのくらいの頻度で制作するのか、予算はどの程度か、外注するのか内製するのかを明確にします。

無理な計画は挫折のもとです。月1本でも、年間12本のコンテンツが蓄積されます。

9.よくある質問

動画マーケティングに関して、よくある質問に回答します。

YouTubeで収益を得ることは可能ですか?

YouTubeの広告収益を得るには、チャンネル登録者1,000人以上、過去12ヶ月の総再生時間4,000時間以上という条件を満たす必要があります。歯科系チャンネルでこの条件を満たすのは簡単ではなく、達成できたとしても、広告収益は月数千円〜数万円程度というケースがほとんどです。YouTubeを「収益源」として考えるのは現実的ではありません。集患やブランディングの手段として考えるべきです。

どのくらいの頻度で投稿すべきですか?

YouTubeのアルゴリズム的には、頻度が高いほど有利です。しかし、質を維持しながら高頻度で投稿することは非常に難しいです。現実的には、週1本を目標とするか、難しければ月2〜4本でも継続することが重要です。不定期で気まぐれな投稿よりも、低頻度でも定期的な投稿の方が効果的です。

顔出しは必要ですか?

顔出しした方が信頼性は高まりますが、必須ではありません。スライドに音声を乗せる形式、手元のみを映す形式、アニメーションを使う形式などでも、価値のあるコンテンツは作れます。ただし、院長の人柄を伝えたい、患者との信頼関係を築きたいという目的であれば、顔出しの方が効果的です。

炎上が心配です。どう対策すればいいですか?

炎上を完全に防ぐことは難しいですが、リスクを減らすことは可能です。医学的に正確な情報を発信すること、断定的な表現や過度な主張を避けること、他院や他の治療法を批判しないこと、コメント欄の管理(承認制にする、コメントをオフにするなど)を行うことが対策になります。炎上した場合は、感情的に反応せず、必要に応じて動画を削除または修正し、冷静に対応することが重要です。

10.まとめ

歯科医院にとってYouTubeチャンネルは、「必須」ではありません。

費用対効果の面では、短期的には投資に見合うリターンを得にくいのが現実です。継続の難しさ、競争の激化、地域密着ビジネスとの相性など、課題も多くあります。

一方で、長期的なブランディング、専門性のアピール、他媒体への活用など、メリットがあることも事実です。院長が発信に積極的で、継続できる体制が整っているなら、挑戦する価値はあります。

YouTubeチャンネルを運営しなくても、動画を活用する方法は多くあります。ホームページ用の院紹介動画や治療説明動画は、費用対効果が高くお勧めです。

動画マーケティングを始めるなら、小さく始めて継続できる仕組みを作ることが重要です。「みんながやっているから」ではなく、自院の状況と目標に合わせて、冷静に判断してください。


株式会社リバティーフェローシップ/東京歯科経営ラボでは、歯科医院の動画活用についてもアドバイスを行っています。「動画を始めるべきか迷っている」「ホームページ用の動画を制作したい」といったご相談も、お気軽にお寄せください。

 

投稿者プロフィール

NAOKI OZAWA
歯科コンサルタント小澤直樹
2002年よりコンサルティング活動を開始。2008年から歯科コンサルタントとして勤務した後20017年より現職。

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