居抜き開業・承継開業のHP引き継ぎ問題!ドメイン・コンテンツの注意点 〜歯科医院の承継で見落としがちなWeb資産の落とし穴〜
目次
1. 増加する歯科医院の承継・居抜き開業
2. ホームページ引き継ぎで起こるトラブル事例
3. ドメインの引き継ぎ判断基準
4. コンテンツの扱いで注意すべきポイント
5. 承継パターン別・推奨対応策
6. 新規構築 vs 引き継ぎのコスト比較
7. まとめ:承継開業のHP戦略
1.増加する歯科医院の承継・居抜き開業

1-1. 高齢化する歯科医師、増える承継案件
全国に約67,000施設ある歯科医院ですが、院長の高齢化が進んでいます。60歳以上の歯科医師が全体の約4割を占める現状において、今後10年間で承継や廃業を検討する医院が急増すると予想されています。
一方で、新規開業のハードルは年々上がっています。設備投資に数千万円、開業準備に1年以上かかるケースも珍しくありません。こうした背景から、既存の設備やスタッフ、患者基盤をそのまま引き継げる「居抜き開業」「承継開業」を選択する若手歯科医師が増加しているのです。
1-2. 見落とされがちなWebインフラの承継
物件、内装、診療ユニット、レセコン、患者カルテ、スタッフ雇用契約など、承継時には確認すべき項目が山ほどあります。しかし、その中で意外と見落とされがちなのが「ホームページ」「ドメイン」「SNSアカウント」といったWeb資産です。
特に、前院長のホームページをそのまま使い続けてしまい、後になって大きなトラブルに発展するケースが後を絶ちません。Webインフラは目に見えにくいだけに、承継契約書に明記されていないことも多く、曖昧なまま引き継がれてしまうリスクがあるのです。
2.ホームページ引き継ぎで起こるトラブル事例
2-1. ケース①:突然サイトが消滅した

承継開業から半年後、ある日突然、医院のホームページが表示されなくなりました。慌てて調べたところ、ドメインの契約者が前院長のままで、更新料の支払いが止まっていたことが判明。前院長とは連絡が取れず、長年かけて築いたSEO評価もすべて失われてしまいました。
患者さんからは「ホームページが見られない」「廃業したのか」という問い合わせが殺到。新規患者の予約も大幅に減少し、信頼回復に多大な時間とコストがかかる事態となりました。
2-2. ケース②:前院長の情報が残り続ける
前院長のホームページをそのまま使い続けていたところ、「院長挨拶」「スタッフ紹介」「診療方針」などのページに前院長の情報が残ったままになっていました。更新しようにも、ホームページの管理画面のID・パスワードが引き継がれておらず、制作会社との契約も不明確。
結果として、来院した患者さんから「ホームページと院長が違う」「情報が古い」というクレームが発生。医院の信頼性を損なう結果となってしまいました。
2-3. ケース③:著作権・肖像権のトラブル
前院長のホームページをそのまま引き継いで使用していたところ、使用されていた写真やテキストについて、前院長から「無断使用」として削除要求や損害賠償請求を受けるケースもあります。
口頭での承諾があったとしても、書面での契約がない場合、後々トラブルに発展するリスクがあります。特に関係が悪化した場合、Web上の資産が争点になることも少なくありません。
3.ドメインの引き継ぎ判断基準
3-1. ドメインとは何か?その重要性
ドメインとは、インターネット上の住所のようなものです。「〇〇-dental.com」「△△-shika.jp」といったURLがそれにあたります。歯科医院のホームページは、このドメインがあって初めて機能します。
ドメインには「SEO評価」という見えない資産が蓄積されています。長年運営されてきたドメインは、Googleからの信頼度が高く、検索結果で上位表示されやすい傾向があります。この評価を引き継げるかどうかは、集患に大きく影響する重要なポイントです。
3-2. 引き継ぐべきドメインの条件
ドメインを引き継ぐべきかどうかは、以下の条件を総合的に判断して決めましょう。
ドメインを引き継ぐべきケースとしては、医院名を変更せず前院長の屋号をそのまま使う場合や、ドメインに医院名や地域名が含まれており今後も使い続ける価値がある場合が挙げられます。特に既存のホームページが地域検索で上位表示されておりSEO評価が高い場合は、その資産を活かさない手はありません。ただし、ドメインの所有権を明確に移管できる契約が可能で、前院長と良好な関係が保たれていることが前提条件となります。
一方、新規取得を推奨するのは、医院名を大きく変更して新しいブランドを立ち上げる場合や、前院長のドメインに個人名が含まれている場合(例:tanaka-dental.com)です。また、既存サイトのSEO評価が低い、またはペナルティを受けている場合も新規取得が賢明でしょう。ドメインの契約関係が不明確でトラブルリスクが高い場合や、承継後の診療方針やターゲット層を大きく変更する予定がある場合も、新規ドメインでのスタートが推奨されます。
3-3. ドメイン移管の具体的な手続き
ドメインを引き継ぐ場合、正式な「ドメイン移管手続き」が必要です。具体的には以下のステップを踏みます。
- 現在の契約状況の確認:ドメインがどのレジストラ(管理会社)で契約されているかを確認
- 移管承認の取得:前院長から移管の承諾を得て、必要書類を準備
- 認証コードの取得:移管元レジストラから「AuthCode」を発行してもらう
- 移管先での申請:新院長名義のレジストラで移管申請を行う
- ネームサーバーの設定:移管後、ホームページが表示されるよう設定を変更
この手続きには通常1〜2週間かかります。承継開業の日程が決まったら、余裕を持って手続きを進めましょう。なお、ドメイン移管には専門知識が必要なため、Web制作会社やIT専門家のサポートを受けることを強く推奨します。
4.コンテンツの扱いで注意すべきポイント

4-1. 前院長の情報をそのまま使うリスク
前院長のホームページには、院長プロフィール、経歴、診療方針、スタッフ紹介、院内写真などが掲載されています。これらをそのまま使い続けることは、様々なリスクを伴います。
まず患者の混乱です。ホームページと実際の院長が異なることで、患者が不信感を抱くことになります。次に著作権侵害のリスクがあります。テキストや写真の著作権・肖像権は前院長や制作会社に帰属する場合があり、無断使用は法的問題に発展する可能性があります。さらにSEO上の不整合も生じます。医院名や院長名が変われば、検索結果とコンテンツの整合性が取れなくなり、検索順位の低下を招く恐れがあります。そして何より、新院長の方針や人柄が伝わらないため、ブランディングの齟齬が生まれ、採用や集患に悪影響を及ぼすことになるのです。
4-2. 残すべきコンテンツと更新すべきコンテンツ
引き継いだホームページのコンテンツは、「残すもの」と「更新すべきもの」を明確に分けましょう。
残してもよいコンテンツとしては、診療科目の一般的な説明(虫歯治療、歯周病治療など)、アクセス情報、地図、駐車場案内、設備紹介(変更がない場合)、診療時間や休診日(変更がない場合)などが挙げられます。これらは医院固有の情報ではなく、一般的な情報として流用可能です。
一方、必ず更新すべきコンテンツは、院長あいさつ、院長プロフィール、経歴といった院長個人に関する情報です。また診療理念や医院のビジョンも新院長のものに書き換える必要があります。スタッフ紹介も退職者がいる場合は更新が必須です。院内写真もレイアウト変更がある場合は撮り直しましょう。新着情報やブログ記事、予約フォーム、問い合わせ先のメールアドレスも、すべて新院長の管理下にある連絡先に変更する必要があります。
4-3. 著作権・肖像権の明確化
コンテンツを引き継ぐ場合、必ず著作権・肖像権の扱いを明確にしておきましょう。特に重要なのは、ホームページのテキスト、画像、デザインの著作権が誰に帰属するかという点です。前院長やスタッフの写真を使用し続ける許諾を得ているかどうかも確認が必要です。制作会社との契約関係をどう引き継ぐか(または新規契約するか)も重要な検討事項となります。さらに、前院長がSNS(Instagram、Facebook、Googleビジネスプロフィール)を運営している場合、それらの引き継ぎまたは削除の取り決めも必要です。
口頭での合意だけでなく、書面での確認が必須です。後々のトラブルを避けるため、弁護士や専門家を交えて契約書を作成することを強く推奨します。
5.承継パターン別・推奨対応策
5-1. パターン①:医院名そのまま、院長のみ交代
状況
医院名は変更せず「〇〇歯科医院」として継続し、前院長は完全引退となります。スタッフの大半は残留し、診療方針や患者層も大きく変えないというケースです。
推奨対応
このケースでは、ドメインとホームページの基本構造は引き継ぎ、院長関連のコンテンツのみを更新する方法が効率的です。既存のSEO評価や患者の認知を維持しながら、スムーズに移行できます。
具体的には、ドメインは正式に移管手続きを行い新院長名義にします。院長あいさつ、プロフィール、経歴を新院長のものに差し替え、トップページに「院長交代のお知らせ」を掲載して患者への周知を図ります。前院長の写真はすべて削除または新院長のものに変更し、Googleビジネスプロフィールのオーナー権限も移管する必要があります。
5-2. パターン②:医院名変更、大規模リニューアル
状況
医院名を一新して新しいブランドを立ち上げるケースです。内装やコンセプトを大幅に変更し、ターゲット患者層や診療方針も変える(例:小児歯科から審美歯科へ)といった大規模な転換を図ります。
推奨対応
このケースでは、前院長のドメインにこだわる必要はありません。新規ドメインを取得し、ゼロからホームページを構築する方が、長期的にはメリットが大きいでしょう。
新しい医院名に合った独自ドメインを取得し、ホームページは完全新規制作して新院長のビジョンを反映させます。前院長のドメインは一定期間リダイレクト設定を行い、患者の混乱を防ぐ配慮をしましょう。SNSアカウントも新規開設し、新しいブランドとして発信します。開業告知として地域へのチラシ配布やWeb広告も併用すると効果的です。
5-3. パターン③:分院展開として承継
状況
既存の医療法人が別院を承継し、分院として運営するケースです。法人全体のブランド戦略があり、複数院のホームページを統一管理したいという状況です。
推奨対応
法人全体のブランディングを優先し、統一感のあるWeb戦略を構築しましょう。
法人の公式サイト内にサブディレクトリまたはサブドメインで各院のページを設けます(例:example.com/shibuya/)。前院長のドメインは法人サイトへリダイレクトし、デザインやコンテンツ構成を法人全体で統一します。各院共通のCMS(コンテンツ管理システム)を導入し、更新の効率化を図ることで、複数院の運営がスムーズになります。
6.新規構築 vs 引き継ぎのコスト比較

6-1. ドメイン・HP引き継ぎの場合
初期費用
ドメイン移管手続きに1〜3万円、コンテンツ更新作業(院長情報、写真差し替え等)に10〜30万円、デザイン部分修正に5〜15万円がかかり、合計で約15〜50万円となります。
ランニングコスト
ドメイン維持費は年間1,000〜3,000円、サーバー費用は月額1,000〜5,000円、保守管理費は月額5,000〜20,000円程度です。
メリット
初期費用が安く抑えられ、既存のSEO評価を引き継げるため検索順位の面で有利です。また、患者への影響が少なくスムーズな移行が可能です。
デメリット
前院長との契約トラブルリスクがあり、デザインや機能の自由度が限られます。古いシステムの場合、セキュリティリスクも懸念されます。
6-2. 新規構築の場合
初期費用
ドメイン新規取得に年間1,000〜3,000円、ホームページ新規制作に50〜150万円(規模により変動)、写真撮影やライティングに10〜30万円がかかり、合計で約60〜180万円となります。
ランニングコスト
ドメイン維持費は年間1,000〜3,000円、サーバー費用は月額1,000〜5,000円、保守管理費は月額5,000〜20,000円程度です。
メリット
新院長のビジョンを完全に反映でき、最新の技術・デザインで構築可能です。契約関係が明確でトラブルリスクが低いという安心感もあります。
デメリット
初期費用が高く、SEO評価をゼロから構築する必要があります。また、公開までに2〜3ヶ月程度の時間がかかります。
6-3. 推奨パターンの判断フロー
以下のフローチャートで判断しましょう。
医院名を変更する?
├─ YES → 新規構築を推奨
└─ NO → 前院長のHPのSEO評価は高い?
├─ YES → ドメイン契約は明確?
│ ├─ YES → 引き継ぎ+部分更新を推奨
│ └─ NO → 新規構築を推奨(トラブルリスク大)
└─ NO → 新規構築を推奨
7.まとめ:承継開業のHP戦略
歯科医院の承継・居抜き開業では、物件や設備だけでなく、ホームページやドメインといったWeb資産の扱いも重要な検討事項です。しかし、多くの場合、この点が見落とされ、後々大きなトラブルに発展しています。
承継時のホームページ対応で失敗しないためには、以下のポイントを押さえましょう。
【この記事のポイント】
歯科医院の承継・居抜き開業では、ドメインやホームページといったWeb資産の扱いが重要な検討事項です。契約書でドメインとホームページの所有権、著作権、使用許諾を明確に定めておかないと、後々のトラブルにつながります。
ドメインを引き継ぐかどうかは、SEO評価と医院名変更の有無で判断しましょう。医院名を継続しSEO評価が高い場合は引き継ぎが有利ですが、医院名を変更する場合は新規ドメインが適しています。
コンテンツについては、診療内容やアクセス情報など一般的な情報は残せますが、院長情報、スタッフ紹介、診療方針は必ず新院長のものに更新する必要があります。著作権や肖像権の問題を避けるため、何を残し何を更新するか明確にしておきましょう。
契約トラブルのリスクが高い場合は、初期費用は高くなりますが新規構築を選択する方が安全です。長期的には自由度が高く、自院のブランドを確立しやすいというメリットがあります。
承継パターンに応じた最適な対応策を選ぶことが重要です。医院名継続型、医院名変更型、分院展開型でそれぞれ異なる戦略を取るべきでしょう。いずれの場合も、Web制作会社、弁護士、税理士など、それぞれの分野の専門家に相談することをお勧めします。
東京歯科経営ラボが承継開業のHP問題を解決します
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投稿者プロフィール
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歯科コンサルタント小澤直樹
2002年よりコンサルティング活動を開始。2008年から歯科コンサルタントとして勤務した後20017年より現職。
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