近隣歯科医院のホームページを合法的に分析する方法【競合調査入門】
目次
1. はじめに:なぜ競合分析が必要なのか
2. 競合分析は「パクリ」ではない
3. まず調べるべき競合医院の選び方
4. ホームページで確認すべき10のチェックポイント
5. 無料で使える競合分析ツール
6. Googleビジネスプロフィールの分析方法
7. 競合の強み・弱みを整理するフレームワーク
8. 分析結果を自院のホームページに活かす方法
9. やってはいけないNG行為
10. まとめ:競合を知ることで自院の強みが見える
1.はじめに:なぜ競合分析が必要なのか

「近くの歯医者、ホームページがすごく立派なんだよな……」
近隣の歯科医院のホームページを見て、そう感じたことはありませんか。気になるけれど、何をどう見ればいいのかわからない。そもそも他院のホームページを調べていいのかどうかも不安。そんな先生は多いのではないでしょうか。
結論から言えば、競合医院のホームページを分析することは、まったく問題ありません。むしろ、やらないことの方がリスクです。
患者さんは、複数の歯科医院を比較して来院先を決めています。あなたの医院も、近隣の医院と比較されているのです。競合がどんな情報を発信しているのかを知らずに、自院のホームページを改善することはできません。
本記事では、近隣歯科医院のホームページを合法的に分析する具体的な方法と、分析結果を自院に活かすポイントを解説します。
2.競合分析は「パクリ」ではない
競合分析に抵抗を感じる先生もいらっしゃいます。「他院のホームページを調べるのは、なんだか後ろめたい」「真似するみたいで気が引ける」という声を聞くこともあります。
しかし、競合分析と模倣はまったく別のものです。
競合分析の目的は、市場環境を把握し、自院のポジショニングを明確にすることです。近隣にどんな医院があり、何を強みとして打ち出しているのか。それを知ることで、自院が差別化すべきポイントが見えてきます。
例えるなら、競合分析は「地図を見ること」です。周囲の地形を把握せずに、目的地にたどり着くことはできません。他院のホームページを見ることは、自院の進むべき方向を見定めるための正当な情報収集なのです。
もちろん、他院のデザインや文章をそのままコピーするのはNGです。それは競合分析ではなく、著作権侵害です。あくまで「参考にして、自院らしい形で表現する」ことが大切です。
3.まず調べるべき競合医院の選び方

競合分析を始める前に、「どの医院を競合と見なすか」を決める必要があります。すべての歯科医院を調べるのは現実的ではないため、優先順位をつけて選定しましょう。
選定基準①:地理的な近さ
最も基本的な基準は、物理的な距離です。患者さんの多くは、自宅や職場から通いやすい歯科医院を選びます。目安として、同じ最寄り駅を使う医院、徒歩・自転車圏内の医院、同じ町名・エリアの医院をピックアップしましょう。
具体的には、自院から半径1〜2km圏内の歯科医院が主な競合になります。都市部であれば半径500m〜1km、郊外であれば2〜3kmが目安です。
選定基準②:診療内容の類似性
地理的に近くても、診療内容が大きく異なる医院は直接的な競合にはなりにくいです。例えば、自院が一般歯科中心であれば、矯正専門医院は競合度が低いと言えます。
逆に、自院と同じ診療内容で、同じターゲット層を狙っている医院は、最も注意すべき競合です。
選定基準③:検索結果での表示順位
「〇〇駅 歯医者」「〇〇市 歯科」などのキーワードで検索したときに、上位表示される医院は優先的に分析すべきです。患者さんの多くは検索結果の上位から見ていくため、そこに表示される医院が実質的な競合になります。
競合医院リストの作成
上記の基準で、まずは5〜10件程度の競合医院をリストアップしましょう。以下のような表を作成しておくと、後の分析がスムーズです。
|
医院名 |
所在地 |
最寄り駅 |
主な診療内容 |
特徴・強み |
検索順位 |
|
A歯科 |
〇〇町1-2-3 |
〇〇駅徒歩3分 |
一般・小児・矯正 |
土日診療 |
1位 |
|
B歯科 |
〇〇町2-3-4 |
〇〇駅徒歩5分 |
一般・インプラント |
インプラント専門 |
3位 |
|
C歯科 |
… |
… |
… |
… |
… |
4.ホームページで確認すべき10のチェックポイント
競合医院のリストができたら、各医院のホームページを詳しく見ていきます。漫然と眺めるのではなく、チェックポイントを決めて分析することが重要です。
チェック①:ファーストビューの印象
ホームページを開いて最初に目に入る画面(ファーストビュー)をチェックします。どんなキャッチコピーが使われているか、写真はどんな雰囲気か、何を強みとして打ち出しているか。第一印象は患者さんの離脱率に直結するため、特に注意して見ましょう。
チェック②:打ち出している強み・特徴
その医院が何を強みとしてアピールしているかを確認します。「痛みの少ない治療」「土日診療」「キッズスペース完備」「インプラント専門」など、トップページや医院紹介ページで強調されているポイントをメモします。
チェック③:診療内容のラインナップ
どの診療科目を掲げているか、どの治療に詳しいページを用意しているかを見ます。特定の診療内容に複数ページを割いている場合は、その医院が力を入れている分野だと判断できます。
チェック④:料金表の有無と内容
自費診療の料金を公開しているかどうか、公開している場合はどの程度詳しく記載しているかをチェックします。料金の相場感を把握する参考にもなります。
チェック⑤:院長・スタッフ紹介の充実度
院長のプロフィールがどの程度詳しく書かれているか、顔写真はあるか、スタッフ紹介ページがあるか。人が見えるホームページは信頼感につながるため、競合がどこまで情報を出しているかは重要な比較ポイントです。
チェック⑥:写真のクオリティ
院内写真、スタッフ写真、設備写真のクオリティを見ます。プロが撮影した写真か、スマホで撮った写真か。写真の質はホームページ全体の印象を左右します。
チェック⑦:予約システム
電話予約のみか、Web予約も可能か。Web予約の場合、どのシステムを使っているか。24時間予約受付の有無は、患者さんの利便性に直結します。
チェック⑧:ブログ・コンテンツの更新頻度
ブログやお知らせがどの程度の頻度で更新されているかを確認します。最終更新が何年も前で止まっている医院は多いですが、定期的に更新している医院は、それだけで差別化できています。
チェック⑨:スマートフォン対応
スマートフォンでホームページを見たときの使いやすさをチェックします。文字が読みやすいか、ボタンが押しやすいか、表示速度は遅くないか。今や患者さんの大半はスマホでホームページを見ています。
チェック⑩:デザインの新しさ
ホームページのデザインが現代的かどうかも見ておきましょう。古臭いデザインのままの医院が多い中、新しいデザインにリニューアルしている医院は、Web集患に力を入れていると判断できます。
5.無料で使える競合分析ツール

ホームページを目視で確認するだけでなく、ツールを使うことでより深い分析が可能になります。すべて無料で使えるものを紹介します。
Google検索
最も基本的なツールです。「〇〇市 歯医者」「〇〇駅 歯科」などで検索し、どの医院が上位表示されているかを確認します。シークレットモード(プライベートブラウズ)で検索すると、過去の検索履歴に影響されない順位を確認できます。
Googleマップ
Googleマップで「歯医者」と検索すると、近隣の歯科医院が一覧表示されます。口コミの件数や評価点を確認でき、競合の評判を把握できます。
PageSpeed Insights
Googleが提供するページ速度測定ツールです。競合医院のホームページURLを入力すると、表示速度のスコアが確認できます。自院と競合の速度を比較し、改善の参考にできます。
URL:https://pagespeed.web.dev/
SimilarWeb(無料版)
ウェブサイトのアクセス数や流入元を推計できるツールです。無料版でも大まかなトラフィック情報を確認できます。ただし、アクセス数の少ないサイトはデータが取得できない場合があります。
URL:https://www.similarweb.com/
ラッコキーワード
キーワードの検索ボリュームや関連キーワードを調べられる無料ツールです。「〇〇市 歯医者」でどんな関連キーワードが検索されているかを把握し、競合がどのキーワードを狙っているかの推測に役立ちます。
URL:https://related-keywords.com/
6.Googleビジネスプロフィールの分析方法
ホームページだけでなく、Googleビジネスプロフィール(Googleマップに表示される情報)も重要な分析対象です。
確認すべき項目
競合医院のGoogleビジネスプロフィールでは、以下の項目をチェックしましょう。

口コミの件数と評価点は最重要項目です。何件の口コミがあり、平均評価は何点かを確認します。口コミの件数が多く、評価が高い医院は、Googleマップで上位表示されやすくなります。
口コミの内容も読み込みます。患者さんがどんな点を評価しているか、逆にどんな不満を持っているかが見えてきます。
返信の有無と内容も見ておきましょう。口コミに対して医院側が返信しているかどうか。返信している医院は、患者対応に力を入れている印象を与えます。
掲載写真の質と量として、外観、院内、スタッフなどの写真が充実しているかを確認します。
投稿の更新頻度も確認します。Googleビジネスプロフィールには「投稿」機能があり、お知らせやキャンペーン情報を発信できます。定期的に投稿している医院は、MEO(マップ検索最適化)に力を入れています。
口コミ分析のポイント
競合医院の口コミを分析すると、患者さんが歯科医院選びで何を重視しているかが見えてきます。
「先生が優しい」「説明が丁寧」という口コミが多ければ、患者さんはコミュニケーションを重視していることがわかります。「待ち時間が短い」「予約が取りやすい」が多ければ、利便性を重視していることがわかります。
逆に、低評価の口コミで指摘されている点は、その医院の弱みであり、自院が差別化できるポイントかもしれません。「待ち時間が長い」「受付の対応が冷たい」といった不満が多い医院に対しては、その点を改善・アピールすることで優位に立てます。
7.競合の強み・弱みを整理するフレームワーク
分析した情報は、整理しないと活用できません。シンプルなフレームワークを使って、競合の強み・弱みを可視化しましょう。
SWOT風の競合比較表
各競合医院について、以下の4項目を整理します。
|
医院名 |
強み |
弱み |
脅威度 |
自院の対抗策 |
|
A歯科 |
土日診療、駅近、口コミ高評価 |
HPデザインが古い、ブログ更新なし |
高 |
平日夜間診療で差別化 |
|
B歯科 |
インプラント専門、症例豊富 |
一般歯科は弱い、口コミ少ない |
中 |
一般歯科の充実をアピール |
|
C歯科 |
院内がきれい、写真が良い |
自費料金が高め、予約取りにくい |
中 |
価格の透明性をアピール |
競合ポジショニングマップ
2つの軸を設定し、競合と自院の位置関係を可視化する方法も有効です。
例えば、横軸を「価格帯(リーズナブル ⇔ 高価格帯)」、縦軸を「専門性(総合的 ⇔ 専門特化)」として、各医院をマッピングします。
専門特化
│
│ ・B歯科(インプラント専門)
│
リーズナブル──┼────────高価格帯
│
・C歯科 │ ・A歯科
│
総合的
このように可視化すると、「この領域には競合がいない」「ここはレッドオーシャン」といったことが見えてきます。競合が少ないポジションを狙うのも一つの戦略です。
8.分析結果を自院のホームページに活かす方法
競合分析は、やって終わりではありません。分析結果を自院のホームページ改善に活かすことが目的です。
活用法①:差別化ポイントを明確にする
競合がアピールしていないこと、競合より自院が優れていることを洗い出し、ホームページで強調します。
例えば、競合がどこも土日休診であれば、「土曜・日曜も診療」を大きくアピールします。競合のホームページに院長の顔写真がなければ、自院は院長の人柄が伝わる写真とメッセージを掲載します。
活用法②:足りないコンテンツを補う
競合が掲載していて、自院に足りないコンテンツがあれば追加を検討します。
料金表が載っていない、アクセス情報が不十分、診療内容の説明が薄いなど、競合と比較することで自院の不足に気づけます。
活用法③:デザイン・使いやすさを改善する
競合のホームページと比べて、自院のデザインが古く見える場合は、リニューアルを検討します。スマートフォンでの使いやすさ、予約導線のわかりやすさなども、競合と比較して改善点を見つけましょう。
活用法④:SEO・MEO対策の参考にする
検索上位の競合がどんなキーワードを意識しているか、どんなコンテンツを充実させているかを参考に、自院のSEO対策を強化します。Googleビジネスプロフィールの運用方法も、上位表示されている競合を参考にしましょう。
9.やってはいけないNG行為

競合分析は正当な情報収集ですが、やり方を間違えると法的・倫理的な問題になります。以下の行為は絶対に避けてください。
NG①:文章・デザインのコピー
競合のホームページに書かれている文章をそのままコピーして使うのは、著作権侵害です。「参考にしたいから」と文章を丸写しするのはNGです。内容を参考にしつつ、自分の言葉で書き直す必要があります。
デザインについても同様で、そっくりそのまま真似ることは避けてください。「参考にする」と「コピーする」は明確に違います。
NG②:写真の無断使用
競合のホームページに掲載されている写真を、自院のホームページに使用するのは著作権侵害です。当然ながら、やってはいけません。
NG③:虚偽の口コミ投稿
競合医院のGoogleビジネスプロフィールに、虚偽の低評価口コミを投稿する行為は、違法行為に該当する可能性があります。絶対にやめましょう。
逆に、自院に対してサクラの高評価口コミを投稿することも、Googleのガイドライン違反です。発覚すると、ビジネスプロフィールが停止されるリスクがあります。
NG④:競合の誹謗中傷
「A歯科は〇〇だからダメ」のように、他院を名指しで批判することは、名誉毀損になる可能性があります。ホームページ上での比較表現には十分注意してください。
NG⑤:不正アクセス
競合のホームページの管理画面にアクセスしようとする、パスワードを推測して入ろうとするなどは、不正アクセス禁止法違反です。公開されている情報のみを分析対象としてください。
10.まとめ:競合を知ることで自院の強みが見える
競合分析は、他院を真似るためではなく、自院の強みを明確にするために行うものです。本記事のポイントを整理します。
競合医院の選定は、地理的な近さ、診療内容の類似性、検索順位を基準に、5〜10件程度をリストアップします。
ホームページの分析では、ファーストビュー、強み・特徴、診療内容、料金表、院長紹介、写真、予約システム、更新頻度、スマホ対応、デザインの10項目をチェックします。
Googleビジネスプロフィールでは、口コミの件数・評価・内容、返信の有無、写真、投稿の更新頻度を確認します。口コミの分析から、患者が重視するポイントが見えてきます。
分析結果の整理には、競合比較表やポジショニングマップを活用します。競合の強み・弱みを可視化することで、自院の差別化ポイントが明確になります。
自院への活用として、差別化ポイントの強調、不足コンテンツの補充、デザイン改善、SEO・MEO対策の参考にします。
NG行為として、文章・デザインのコピー、写真の無断使用、虚偽の口コミ、誹謗中傷、不正アクセスは絶対に避けてください。
競合を知ることは、患者を知ることでもあります。患者がどの医院と比較しているのか、何を基準に選んでいるのか。それを理解することで、「選ばれる」ホームページを作ることができます。
東京歯科経営ラボでは、競合分析を踏まえたホームページ制作・改善をご支援しています。「近隣の医院と比べて、うちのホームページはどうなんだろう」と気になる先生は、お気軽にご相談ください。
投稿者プロフィール
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歯科コンサルタント小澤直樹
2002年よりコンサルティング活動を開始。2008年から歯科コンサルタントとして勤務した後20017年より現職。
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