歯科医院ホームページの「安すぎる見積もり」に潜む3つの落とし穴

目次
1. なぜ格安ホームページ制作が増えているのか
2. 落とし穴1:初期費用は安いが維持費が高額
3. 落とし穴2:著作権・所有権が制作会社に残る
4. 落とし穴3:テンプレート使用で差別化できない
5. 適正価格の見積もりを見極める5つのポイント
6. まとめ

 

1. なぜ格安ホームページ制作が増えているのか

近年、「ホームページ制作5万円」「初期費用0円、月額9800円」といった格安プランが増えています。開業したばかりの歯科医院や、予算を抑えたい医院にとっては魅力的に見えますが、安さの裏には必ず理由があります。

格安制作が可能な理由の一つは、テンプレートの大量使用です。オリジナルデザインではなく、既存のテンプレートに医院名や写真を当てはめるだけなので、制作時間が大幅に短縮でき、人件費を抑えられます。一見問題なさそうですが、後述する通り、これには大きなデメリットがあります。

もう一つの理由は、初期費用を抑える代わりに、長期的な維持費で利益を得るビジネスモデルです。「初期費用5万円」と謳っていても、月額費用が高額に設定されており、3年間の総額で見ると通常の制作費を大きく上回るケースが少なくありません。

さらに、サポート範囲を最小限に絞ることでコストを削減している場合もあります。更新作業、トラブル対応、SEO対策などが別料金となり、結局は追加費用が膨らむ仕組みです。

格安だからといって必ずしも悪質とは限りませんが、契約前に何が含まれていて何が含まれていないかを詳細に確認することが不可欠です。安易に飛びつくと、後悔する可能性が高いのです。

 

2.落とし穴1:初期費用は安いが維持費が高額

最も多いトラブルが、初期費用と維持費のバランスです。見積書の初期費用だけを見て判断すると、総額で大きな損失を被る可能性があります。

月額費用の罠

「初期費用5万円、月額9800円」というプランの場合、3年間の総額は5万円+(9800円×36ヶ月)=40万2800円となります。一方、初期費用30万円で月額費用なし(またはドメイン・サーバー代のみ月額2000円程度)の場合、3年間の総額は30万円+(2000円×36ヶ月)=37万2000円です。

初期費用だけ見ると5万円の方が圧倒的に安く見えますが、長期的には通常料金の方が安くなるケースが多いのです。さらに、月額制の場合、契約期間の縛りがあり、途中解約すると違約金が発生することもあります。

更新・修正費用の追加請求

月額費用に含まれる作業範囲も要注意です。「月額費用でサポート」と謳っていても、実際には「サーバー管理のみ」で、ページの更新や修正は1回5000円から1万円の別料金というケースがあります。

診療時間の変更やスタッフ紹介の更新など、年に数回は発生する修正作業のたびに費用がかかれば、年間で10万円以上の追加費用となることもあります。契約前に「月額費用に何が含まれるか」の詳細リストを必ず確認してください。

解約時のデータ返却問題

月額制の最大の落とし穴は、解約時にホームページのデータを返却してもらえないケースです。「月額費用はレンタル料」という扱いで、データの所有権は制作会社にあるとされ、他社に移転したくてもデータがないため、一から作り直しになります。

これは実質的に制作会社に縛られ続けることを意味します。解約の自由がないサービスは、長期的に大きなリスクとなります。

 

3.落とし穴2:著作権・所有権が制作会社に残る

格安制作で見落とされがちなのが、ホームページの著作権と所有権の問題です。通常の制作では、納品後は著作権が医院に移転しますが、格安プランでは制作会社に残るケースがあります。

著作権が残る場合のリスク

著作権が制作会社にある場合、ホームページの画像やデザインを他の用途(チラシ、看板など)に流用できません。また、他社にリニューアルを依頼する際も、既存デザインを参考にすることができず、完全に新規制作となります。

さらに、制作会社が倒産した場合、著作権の所在が不明確になり、ホームページの継続使用に法的リスクが生じる可能性もあります。

ドメインの所有権問題

最も深刻なのは、ドメイン(ホームページのURL)の所有権が制作会社名義になっているケースです。この場合、制作会社との契約を解除すると、ドメインを失い、長年築いてきた検索順位やブランド価値がすべて失われます。

「yamada-dental.jp」というドメインで10年間運営してきた実績が、契約解除と同時にゼロになるのは致命的です。ドメインは必ず医院名義で取得し、管理画面のログイン情報も医院で保管してください。

所有権の確認方法

契約前に、以下の点を書面で確認しましょう。

  • ホームページのデザイン・コンテンツの著作権は誰に帰属するか
  • ドメインの登録者名義は誰か
  • 契約解除時にデータ一式を提供してもらえるか
  • 提供されるデータの形式(HTML、WordPress、画像ファイルなど)

これらが明記されていない、または制作会社に権利が残る契約は避けるべきです。

 

4.落とし穴3:テンプレート使用で差別化できない

格安制作の多くは、既成のテンプレートを使用します。コスト削減としては合理的ですが、歯科医院のブランディングと集患力に大きな影響を与えます。

同じデザインが複数の医院で使われる

テンプレート制作の場合、同じデザインが他の歯科医院でも使われている可能性があります。患者様が複数の医院を比較検索した際、「このデザイン、さっき見た医院と同じだ」と気づかれると、安っぽい印象を与え、信頼性が低下します。

実際、同じテンプレートを使った歯科医院が同じ地域に複数存在するケースも珍しくありません。差別化できないホームページでは、競合医院に患者を奪われるリスクが高まります。

医院の個性が伝わらない

テンプレートは汎用的に作られているため、医院独自の強みや院長の人柄を表現することが困難です。「痛みの少ない治療」「子供に優しい」といった特徴も、テンプレートの制約内でしか表現できず、他院との違いが伝わりません。

高額な自費診療を検討する患者様は、複数の医院を徹底的に比較します。この時、個性のないテンプレートサイトは記憶に残らず、選択肢から外されてしまいます。

SEO対策が不十分

テンプレートは、SEO(検索エンジン最適化)の観点から見ても不利です。同じテンプレートを使った多数のサイトが存在すると、Googleから「コピーコンテンツ」と判断され、検索順位が上がりにくくなります。

また、テンプレートは汎用的な構造のため、歯科医院特有のキーワード(「インプラント」「矯正治療」など)に最適化されていないことが多く、検索流入が期待できません。

カスタマイズ費用が高額

テンプレートをベースにしていても、「少し変更したい」と思った際、カスタマイズ費用が高額になるケースがあります。「初期費用は安いが、カスタマイズは1箇所5万円」といった料金設定では、結局オリジナル制作と変わらない費用になります。

 

5.適正価格の見積もりを見極める5つのポイント

では、適正な見積もりとはどのようなものでしょうか。以下の5つのポイントで判断してください。

ポイント1:総額で比較する

初期費用だけでなく、3年間から5年間の総額で比較します。初期費用、月額費用、ドメイン・サーバー代、更新費用をすべて含めた総額を算出し、複数社で比較してください。

歯科医院の標準的なホームページ(10ページから20ページ程度、オリジナルデザイン)の適正価格は、初期費用30万円から80万円、年間維持費3万円から10万円程度です。

ポイント2:含まれる作業内容を詳細確認

見積書に「ホームページ制作一式」とだけ書かれている場合は要注意です。以下の項目が含まれているか確認しましょう。

  • ページ数(トップページ、医院紹介、診療案内など具体的に)
  • オリジナルデザインかテンプレートか
  • スマートフォン対応(レスポンシブデザイン)
  • 写真撮影の有無(プロカメラマン派遣)
  • 原稿作成の有無(ライティングサービス)
  • SEO対策の基本設定
  • 問い合わせフォームの設置
  • Google Map連携
  • SSL証明書の設定

ポイント3:著作権・所有権の明記

契約書または見積書に、以下が明記されているか確認します。

  • 納品後、デザイン・コンテンツの著作権は医院に移転する
  • ドメインは医院名義で取得する
  • 契約解除時、データ一式を提供する

これらが明記されていない見積もりは、たとえ安くても避けるべきです。

ポイント4:修正回数と追加費用の基準

デザインの修正は何回まで無料か、修正回数を超えた場合の1回あたりの費用はいくらかを確認します。「修正2回まで無料、3回目以降は1回3万円」といった明確な基準があれば安心です。

また、ページ追加の費用(1ページあたり○万円)も事前に確認しておくと、後々のトラブルを防げます。

ポイント5:制作実績と担当者の対応

価格だけでなく、制作実績(特に歯科医院の実績)と担当者の対応も重要です。過去に制作した歯科医院のサイトを見せてもらい、クオリティを確認してください。

また、打ち合わせ時の担当者の対応(質問への回答の丁寧さ、提案力、レスポンスの速さ)も判断材料となります。安くても対応が悪ければ、制作中や公開後にストレスを感じることになります。

 

まとめ

ホームページ制作の格安見積もりには、初期費用は安いが維持費が高額、著作権・所有権が制作会社に残る、テンプレート使用で差別化できないという3つの大きな落とし穴があります。

初期費用5万円でも、3年間の総額では40万円を超えるケースや、ドメインの所有権が制作会社にあり移転できないケース、同じデザインが他院でも使われているケースなど、長期的に見ると大きな損失やリスクを伴います。

適正価格を見極めるには、3年間から5年間の総額で比較し、作業内容の詳細、著作権・所有権の所在、修正回数と追加費用の基準を確認することが重要です。歯科医院の標準的なホームページは、初期費用30万円から80万円、年間維持費3万円から10万円程度が相場です。

安さだけで選ぶと、結果的に高くつくだけでなく、集患力の低い質の低いホームページになる可能性があります。ホームページは数年から十数年使い続ける医院の顔です。目先の安さではなく、長期的な価値とリスクを総合的に判断し、信頼できる制作会社を選んでください。適切な投資が、患者様に選ばれ続ける医院の基盤となります。

 

投稿者プロフィール

NAOKI OZAWA
歯科コンサルタント小澤直樹
2002年よりコンサルティング活動を開始。2008年から歯科コンサルタントとして勤務した後20017年より現職。

ホームページ制作のご相談・資料請求はこちら

お気軽にお問合せください 。
現在運用中のホームページのセカンドオピニオンや、開業時のご相談も柔軟にうけたまわります。先生がお手すきのときに、お電話でご連絡をいただくのも大歓迎です。