その価格設定。間違っていませんか?~歯科医院におけるプライシング戦略~
歯科コンサルタントの小澤です。
今回は、皆さまからご質問の多いお悩みの一つ。
「自費治療の値付け」特に単冠補綴の基本的な考え方についてお話します。価格設定にお困りの方はぜひ参考にしてみてください。
自費治療の価格設定の「正しい方法!?」
早速ですが、自費治療の値段を決める際、どのようなことを重視して決めていますか?
私はよくこのような質問を受けます。
「他の医院はだいたいどのくらいの価格にしていますか?」
・・・とても気になりますよね。
さてここで質問です。他の医院の価格を聞いた際に取るべき行動として、次のうち正しい方法はありますか?
A)他の医院よりも価格を下げて、安さをアピール!
B)同じ価格にして、しばらく様子見!
C)他の医院よりも価格を上げて、強気の姿勢!
お気づきの先生も多いかもしれませんが、この中に正解はありません。
では、どのように価格設定するのが正しいのでしょうか。具体的にみていきましょう。
歯科自費治療で重視する3つの視点
一般的には、多くの場合値付けをする際に①ライバル(競合)、②コスト回収、③顧客心理この3つの視点に着目します。
①ライバル(競合)
先に述べたように、他医院の動向を気にして価格を設定する方法です。
確かに、隣の医院よりも明らかに高いと買いません。更に、普段の保険治療の満足度も低ければ、自費料金の高価格設定だけで悪い噂になってしまう危険性もあります。
②コスト回収
コストとは、自費治療にかかる材料費や人件費などの費用のことです。そのコストを回収するために逆算して値付けをします。
この方法ですと確かにコストは回収できるでしょう。よくある考え方ですね。
③顧客心理
患者さんの心理を考えて値付けをする方法。心理学などの戦略も用いて価格を設定していきます。
「いまだけ0円!」のような広告を目にしたことがあるかと思いますが、多くの場合このような戦略は「心理学」をもとにつくられています。初回は無料だか、実は複数回の契約をさせて2回目以降に利益を創出します。
この3つのうちのどれもが大切な視点ですが、どれか一つに固執してはいけません。
価格を決める前に、まずは自費治療を行う目的を考えてみましょう。目的を意識することである「意識」がうまれます。
自費治療を行う目的
そもそも、自費を「売る」のはなぜですか?
(ア)患者さんに良い治療を提供するため
(イ)医院が利益を得るため
大きく分けるとこの二つの目的があります。
患者さんにとって良い治療を提供することが出来れば、満足度は上がります。
いつまでも健康で、出来る限り自分の歯で美味しくご飯を食べてもらいたい。そう願っている先生なら自費の治療を選択する権利を患者さんから奪うことはしないのではないでしょうか。
一方、医院経営は慈善事業ではないのですから、その結果として医院の売上を向上させることに後ろめたさを感じる必要はありません。今この記事を読まれている方なら納得できますよね。
自費治療をするのであれば必ず「利益」を向上させましょう。
その事により余裕が生まれ、更に質の高い医療サービスの提供に繋がります。
余裕があれば、スタッフの教育にも時間をかけることが可能になるでしょう。新しい最新の器材を揃えて患者さんをもっと安心させてあげることも出来ます。とても良い循環ですね。
以上の様に目的を正しく理解することが出来れば、価格設定に信念の様なものが生まれるのではないでしょうか?
あらためて正しい価格設定方法
それでは正しい価格設定の方法を考えてみましょう。
まずは①のライバル(競合)ですが、これはハッキリ言って「気にしない」が一番です。
よそはよそ、うちはうち。ですね。気にしだすとキリが無いです。他の医院の真似をしてもうまくいきません。参考として一応、頭に入れておく、くらいで大丈夫です。
次の②コスト回収これはある程度、注意が必要です。まずは一回の治療にどのくらいコストがかかるのか正確に理解しましょう。
よく言われているのが「(技工+材料費)×5もしくは、(技工+材料費)×6」。です。参考にされてください。
大切なのは③の顧客心理。かといって心理学を今から勉強する必要はありません。
簡単な方法は「付加価値」をつけること。
②のコスト回収の方法で、ある程度医院に利益が残る価格を決めます。そこに付加価値をつけていき、患者さんの満足度を高める方法です。
付加価値の方法は色々ありますが、ここまでやってくれるんだ!と喜んでもらえる状態がベストです。
例えば、「○○さんの口腔内について」という資料を作りファイルなどに入れてプレゼントするという方法、ただし内容が充実していないと意味がありません。
必ず患者さん固有の特性などを考慮した専門家としてのアドバイスを載せてください。磨き残しができやすい場所や、今後むし歯などのトラブルが発生する可能性がある場所、などできるだけ細かく記載できると良いでしょう。
患者さんに「喜んでもらう」というゴールですから、一番大切なのは、患者さんとのコミュニケーションです。
気持ちのこもった思いやりのあるコミュニケーションが取れていなければ何をやっても「付加価値」とは思ってもらえないので注意が必要です。
3つの選択肢を提供する
そして、患者さんへの価格提示方法にも工夫が必要です。
例えば補綴物の一覧表を用意し、3つは異なる価格帯の補綴物を掲載しましょう。
これはよく用いられる手法ですが、3つのうち真ん中を選ぶ方が容易なので、とりこぼしが極端に減ります。
「松竹梅」と3種類の自費補綴物を用意します。
竹に売りたい補綴物を設定。
松は2割増し程度。梅は2割減位になるとバランスが良いです。
一方で、松を3割増し以上にしたほうが良い場合もあります。医院の自費率や先生の趣向により変わりますので、個別にご相談ください。
また、前歯を治療する際、7種類の補綴物を用意している場合、患者さんの症状や年齢などに合わせてメニューを分けて出来る限り3つ、保険治療の提供できるものであれば保険を含めて4つにできるよう見直してみて下さい。
あまりたくさん提示されてもどれが良いのか分かりませんし、一覧表を見ただけでお腹がいっぱいになってしまいます・・・。
メニューは出来るだけ分かりやすく、選びやすく!
そして、補綴物は高価格の「買い物」です。
口頭での説明やHP上の掲載だけではなく、紙の資料を用意して持ち帰って頂きましょう。
先ほどより解説している「補綴物一覧表」のことです。弊社を含めて作ってくれる業者がいくつかあります。補綴メニュー表、補綴カタログ、と呼ばれている事もあります。ぜひご用意ください。
まとめ
現状の価格設定が、低すぎると感じているのであれば、それが本当に医院や患者さん、働くスタッフにとってメリットのあることなのか、今一度考え直してみて下さい。
安くて良いものを提供するのが患者さんにとって一番だと思えるかもしれません。でも、皆さんは「安さ」で仕事を獲得してはいけません。過度な価格競争は自費治療の相場を下げ「業界の斜陽化」に繋がります。不毛な戦いはやめましょう。
価格設定(=プライシング戦略)は医院経営の要といえる課題です。迷われている場合には遠慮なくご相談ください。
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