採用サイトと医院HPは分けるべき?
目次
1. 歯科業界の採用難を取り巻く現状
2. 採用サイトと医院HPを分ける意味とは
3. 採用サイトを分離するメリット・デメリット
4. ドメイン構成の3つの選択肢
5. 採用サイトに必須のコンテンツ
6. 採用サイトの集客・運用戦略
7. 歯科医院の規模別・推奨パターン
8. まとめ:採用成功への道筋
1. 歯科業界の採用難を取り巻く現状
1-1. 歯科衛生士の求人倍率は23倍超の超売り手市場

歯科医院の経営において、人材確保は最も深刻な課題の一つとなっています。特に歯科衛生士の採用難は顕著で、2023年度の有効求人倍率は23.3倍という驚異的な数字を記録しました。これは、1人の歯科衛生士を23以上の歯科医院が取り合っている状態を意味します。
この背景には、歯科医院の数が全国に約67,000施設以上存在する一方で、毎年歯科衛生士の学校を卒業し就職する人数は約7,000人程度に留まっているという需給バランスの崩れがあります。さらに、歯科衛生士の資格を持つ人は約28万人いるにもかかわらず、実際に就業しているのは約14万人と、有資格者の半数以上が現場を離れているという現実もあります。結婚・出産・育児といったライフイベントを機に離職し、その後復職しないケースが多いのです。
1-2. 差別化が困難な求人市場
歯科医院の採用が難しい理由は、求人倍率の高さだけではありません。歯科衛生士の業務内容は、歯科予防措置、保健指導、診療補助など、どの医院でも大きく変わることがないため、求人広告の内容がどうしても似通ってしまうという問題があります。
給与、休日、福利厚生といった待遇面での訴求が中心となり、結果として「どこも同じに見える」状態が生まれます。このような中で求職者に選ばれるためには、待遇以外の魅力をいかに伝えるかが重要になってきます。院内の雰囲気、人間関係、成長できる環境、院長の人柄といった「目に見えにくい価値」を可視化し、求職者に届ける工夫が求められているのです。
2.採用サイトと医院HPを分ける意味とは
2-1. 患者向けと求職者向け、異なるターゲット
医院のホームページ(コーポレートサイト)と採用サイトでは、そもそもターゲットが異なります。医院HPは患者さん向けに「この歯科医院で治療を受けたい」と思ってもらうことが目的であり、診療内容、アクセス、院長紹介、設備などが主なコンテンツとなります。一方、採用サイトは求職者向けに「この歯科医院で働きたい」と思ってもらうことが目的であり、求められる情報はまったく異なります。
求職者が知りたいのは、実際の仕事内容、職場の雰囲気、一緒に働くスタッフのこと、成長できる環境かどうか、そしてリアルな待遇です。患者さん向けのホームページにこれらの情報を詳しく掲載すると、サイトの構成が複雑になり、どちらのターゲットに対しても中途半端な印象を与えてしまう恐れがあります。
2-2. 採用ブランディングの重要性
少子高齢化や人材の流動性の高まりを受け、採用市場は大きく変化しています。企業は事業を推進する人材を集め、定着させたい。求職者は自分のスキルやキャリアにマッチする企業と出会いたい。この両者のニーズをマッチングさせる上で、自由なデザインで職場環境の魅力を深掘りできる採用サイトは非常に有効なツールとなります。
医院HPが「信頼性」を担保する公的な顔であるならば、採用サイトは未来の仲間との「共感」を育むメディアです。両者の役割を明確に分け、それぞれを専門特化させることで、患者さんにも求職者にも効果的な情報発信が可能になるのです。
3.採用サイトを分離するメリット・デメリット

3-1. 分離することのメリット
採用サイトを医院HPと分けることには、複数の明確なメリットがあります。まず、各サイトの専門性が強化されます。医院HPでは診療内容や設備に関する情報を、採用サイトでは求人情報やスタッフインタビューを、それぞれ深掘りして発信できるため、訪問者のニーズに応えやすくなります。
また、自院らしさを自由に表現できる点も大きなメリットです。医院HPは信頼性を重視したデザインになりがちですが、採用サイトでは若手スタッフに響くカジュアルなデザインや、動画コンテンツを多用した構成など、柔軟な表現が可能になります。さらに、SEO対策においても、採用キーワードに特化した構成が可能になるため、「地域名+歯科衛生士+求人」といった検索で上位表示を狙いやすくなります。
3-2. 分離することのデメリット
一方で、デメリットも存在します。最も大きいのは、制作・運用コストが増加することです。別途サイトを立ち上げるための初期費用、サーバー代やドメイン代といった維持費用、そして更新作業の手間が発生します。小規模な歯科医院にとっては、この負担が重くなる場合もあるでしょう。
また、サイトが複数になることで管理工数が増え、情報の更新漏れや内容の不整合が起きやすくなるリスクもあります。特に、採用サイトは定期的な情報更新が重要であり、放置されたサイトは逆にマイナスイメージを与えてしまいます。運用体制が整っているかどうかを事前に検討する必要があります。
【表1】採用サイト分離のメリット・デメリット比較
|
メリット |
デメリット |
|
ターゲット別に専門性を強化できる |
制作・運用コストが増加する |
|
自院らしさを自由に表現できる |
管理工数が増え更新漏れのリスク |
|
採用キーワードのSEO対策がしやすい |
運用体制の構築が必要 |
|
応募者の動線を最適化できる |
サイト間の情報整合性維持が必要 |
|
採用ミスマッチの防止につながる |
小規模医院には負担が大きい場合も |
4.ドメイン構成の3つの選択肢
採用サイトを分離する場合、ドメイン構成をどうするかという選択が必要になります。主に3つのパターンがあり、それぞれにメリットとデメリットがあります。自院の状況に応じて最適な方法を選択しましょう。
4-1. サブディレクトリ型
サブディレクトリ型とは、既存の医院HPのドメイン内に採用ページを設置する方法です。例えば「example.com/recruit/」という形式になります。この方法の最大のメリットは、既存サイトのドメイン評価(SEOの蓄積)をそのまま活かせることです。長期間運営してきた医院HPのドメインパワーが採用ページにも適用されるため、検索順位が上がりやすくなります。
ただし、デザインや構成の自由度は限られます。既存サイトと同じCMS(コンテンツ管理システム)を使用することになるため、採用サイトだけ大きく異なるデザインにすることは難しい場合があります。また、複数の担当者での運用や大規模なデザイン変更には不向きな面もあります。
4-2. サブドメイン型
サブドメイン型は、「recruit.example.com」のように、既存ドメインの前に別名を付けて運用する方法です。この形式のメリットは、運用上の自由度が高く、CMSの分離やデザインの切り分けがしやすい点にあります。医院HPと採用サイトで異なるシステムを使用することも可能であり、それぞれ独立した更新・管理が行えます。
また、サブドメインは追加のドメイン費用がかからないというコスト面のメリットもあります。Googleからも同じ管理者が運営しているサイトとして認識されやすく、メインドメインとの関連性は保たれます。ただし、SEO的には本体サイトとの評価が分かれる傾向にあるため、長期的なコンテンツ戦略が必要です。
4-3. 別ドメイン型
完全に新しいドメインを取得して採用サイトを構築する方法もあります。「example-recruit.com」や「example-saiyo.jp」といった形式です。この方法のメリットは、医院HPとは完全に独立した運営が可能で、デザインや採用メッセージの自由度が最も高いことです。医院のブランドイメージとは異なる大胆な採用施策も展開できます。
しかし、SEOの観点ではゼロからのスタートとなるため、検索上位に表示されるまでに時間がかかります。また、ドメイン取得・維持の費用が別途発生し、ブランドの一貫性が薄れる可能性もあります。大規模な医療法人や、採用に特化した独自のブランディングを行いたい場合に適した選択肢と言えるでしょう。
【表2】ドメイン構成パターンの比較
|
構成パターン |
URL例 |
SEO評価 |
自由度 |
|
サブディレクトリ |
example.com/recruit/ |
本体と統合(◎) |
低い(△) |
|
サブドメイン |
recruit.example.com |
関連性あり(○) |
高い(◎) |
|
別ドメイン |
example-recruit.com |
独立・ゼロから(△) |
最も高い(◎) |
5.採用サイトに必須のコンテンツ
5-1. 院長メッセージと医院の理念

採用サイトにおいて最も重要なコンテンツの一つが、院長からのメッセージです。なぜ歯科医師を志したのか、どのような医院を目指しているのか、スタッフに何を期待しているのか。こうした想いを自分の言葉で語ることで、求職者は「この院長のもとで働きたいかどうか」を判断できます。
歯科医院はスタッフの人数が少なく、院長との距離が近い職場です。だからこそ、院長の人柄や考え方は求職者にとって極めて重要な判断材料となります。テキストだけでなく、動画で院長が語るコンテンツがあれば、より人柄が伝わりやすくなります。
5-2. スタッフインタビュー
実際に働いているスタッフの声は、求職者にとって最も参考になる情報です。入職の決め手は何だったか、実際に働いてみてどうか、職場の雰囲気はどうか、どのような成長を実感しているか。こうしたリアルな体験談は、医院からの一方的なアピールよりもはるかに説得力があります。
スタッフインタビューには、求職者が企業への理解を深め、採用ミスマッチを防止する効果もあります。さらに、インタビューに答える既存スタッフ自身にとっても、日々の業務を振り返り、やりがいや成長を再認識する機会となり、モチベーション向上につながることがあります。
5-3. 職場環境と1日の流れ
求職者が最も気にしていることの一つが、「実際にどんな環境で、どんな1日を過ごすことになるのか」というイメージです。院内の写真(待合室、診療室、スタッフルーム)、使用している設備、朝礼から終業までの流れなど、具体的な情報を提供することで、求職者は自分がそこで働く姿を想像しやすくなります。
特に写真や動画は効果的です。清潔感のある院内、笑顔で働くスタッフ、チームワークの良さが伝わる日常風景は、文章だけでは伝えきれない「空気感」を届けることができます。
5-4. 募集要項と待遇の詳細
基本的な募集要項は当然必要ですが、求人サイトに掲載するような最低限の情報だけでは不十分です。給与体系(基本給、各種手当、昇給の仕組み)、勤務時間と休日、有給休暇の取得実績、福利厚生の詳細、教育・研修制度など、求職者が「この医院を選ぶ理由」になり得る情報を惜しみなく開示しましょう。
特に、産休・育休制度の有無や取得実績、時短勤務の可否、子どもの看護休暇など、女性が多い歯科業界ならではのライフイベントへの配慮は、重要な差別化ポイントとなります。
6.採用サイトの集客・運用戦略
6-1. 求人検索エンジンとの連携
採用サイトを作成しただけでは、求職者からのアクセスは集まりません。医院HPに比べてターゲットが限られるため、単にサイトを公開しているだけでは認知されにくいのが現実です。そこで重要になるのが、求人検索エンジンとの連携です。
Indeed、求人ボックス、スタンバイ、Googleしごと検索といった求人検索エンジンは、多くの求職者が利用するプラットフォームです。採用サイトの求人情報をこれらの検索エンジンに自動連携させることで、自院の求人情報がより多くの求職者の目に触れる機会を創出できます。また、歯科業界に特化した求人サイト(ジョブメドレー、GUPPY、クオキャリアなど)への掲載も効果的です。
6-2. SNSを活用した情報発信
今の求職者、特に20代〜30代の若手層は、求人サイトだけでなくSNSを通じて職場選びの情報収集を行っています。Instagramで医院の雰囲気やスタッフの日常を発信したり、LINEで応募前の気軽な質問を受け付けたりすることで、求職者との接点を増やすことができます。
SNSで発信すべきは、院内イベントの様子、スタッフの仕事風景、ちょっとした日常の一コマなど、「この医院、楽しそう」「馴染みやすそう」と感じてもらえるコンテンツです。採用サイトへの誘導リンクを適宜設置し、興味を持った求職者がスムーズに詳細情報にアクセスできる動線を設計しましょう。
6-3. 定期的な更新の重要性
採用サイトは作って終わりではありません。情報が古いまま放置されていると、求職者に「この医院は採用に熱心ではない」「管理がずさんなのでは」といったネガティブな印象を与えてしまいます。SEOの観点からも、更新が行われていないサイトは検索順位が下がりやすくなります。
定期的にスタッフインタビューを追加したり、院内イベントのレポートを掲載したり、募集要項を最新情報にアップデートしたりする運用体制を整えましょう。更新頻度の目安は月に1回以上が理想的です。
7.歯科医院の規模別・推奨パターン
7-1. 小規模医院(スタッフ5名以下)
スタッフ5名以下の小規模医院の場合、採用サイトを完全に分離するよりも、既存の医院HP内にしっかりとした採用ページを設けるサブディレクトリ型がおすすめです。制作・運用コストを抑えながら、必要な情報を求職者に届けることができます。
ただし、単なる募集要項の掲載だけでは不十分です。院長メッセージ、スタッフ紹介、職場の雰囲気がわかる写真など、求職者の心に響くコンテンツを充実させることが重要です。将来的に採用ニーズが高まった段階で、サブドメイン型への移行を検討しても良いでしょう。
7-2. 中規模医院(スタッフ6〜15名)
中規模の医院であれば、サブドメイン型での採用サイト構築を推奨します。ある程度の採用ニーズがあり、継続的に人材を確保していく必要があるからです。サブドメイン型であれば、既存ドメインの評価を活かしながら、採用に特化したサイト設計が可能になります。
コンテンツは充実させ、複数職種(歯科衛生士、歯科助手、受付など)それぞれに向けた情報を用意しましょう。求人検索エンジンへの連携も積極的に行い、露出を高めていくことが重要です。
7-3. 大規模医院・医療法人
複数の分院を持つ大規模医院や医療法人の場合は、採用専門の別ドメインサイトを構築することも選択肢に入ります。採用を経営戦略の重要な柱と位置づけ、法人全体としての採用ブランディングを行う場合に適しています。
大規模であれば、採用サイトの専任担当者を置いたり、採用代行サービスを活用したりする体制も検討できます。投資に見合うリターンが得られるよう、KPI(応募数、採用数、採用コストなど)を設定して効果測定を行いながら運用していくことが重要です。
【表3】医院規模別・推奨パターン
|
医院規模 |
推奨パターン |
投資目安 |
重視すべき点 |
|
小規模(〜5名) |
サブディレクトリ |
10〜30万円 |
コンテンツの充実 |
|
中規模(6〜15名) |
サブドメイン |
30〜80万円 |
継続的な運用体制 |
|
大規模・法人 |
別ドメイン |
80万円〜 |
採用ブランディング |
8.まとめ:採用成功への道筋

歯科衛生士の求人倍率が23倍を超える超売り手市場において、採用活動の成否は医院経営に直結します。求人サイトに募集を出すだけでは他院との差別化が難しく、優秀な人材を確保することは困難です。
採用サイトを医院HPと分けるかどうかは、医院の規模、採用ニーズ、運用体制を総合的に判断して決めるべきです。いずれの場合も重要なのは、求職者が「この医院で働きたい」と思えるコンテンツを充実させることです。院長の想い、スタッフのリアルな声、職場の雰囲気、成長できる環境といった「見えにくい価値」を可視化し、伝えていく努力が求められます。
採用サイトは作って終わりではなく、継続的な運用が成功のカギです。求人検索エンジンとの連携、SNSを活用した情報発信、定期的なコンテンツ更新を通じて、求職者との接点を増やし、応募につなげていきましょう。
【この記事のポイント】
- 歯科衛生士の有効求人倍率は3倍、超売り手市場が続いている
- 医院HPと採用サイトはターゲットが異なり、役割も異なる
- 分離することで専門性強化、自由な表現、SEO最適化が可能に
- ドメイン構成は3パターン(サブディレクトリ/サブドメイン/別ドメイン)
- 必須コンテンツは院長メッセージ、スタッフインタビュー、職場環境の可視化
- 求人検索エンジン連携とSNS活用で露出を高める
- 医院規模に応じた最適なパターンを選択し、継続的に運用する
歯科医院の採用サイト構築・リニューアル、採用戦略の立案から運用支援まで、採用に関するお悩みはお気軽にご相談ください。貴院の状況に合わせた最適な採用Web戦略をご提案いたします。
投稿者プロフィール
-
歯科コンサルタント小澤直樹
2002年よりコンサルティング活動を開始。2008年から歯科コンサルタントとして勤務した後20017年より現職。
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