「とりあえず近い歯医者」から「この医院に行きたい」へ変える差別化戦略

「近くて便利だから」という理由で選ばれる歯科医院と、「多少遠くてもこの医院に通いたい」と選ばれる歯科医院。この違いは、患者さんの満足度、継続率、そして収益性に大きな差を生みます。

コンビニよりも多いと言われる歯科医院の中で、「近いから」以外の理由で選ばれるためには、明確な差別化が必要です。本記事では、ホームページを通じて「この医院に行きたい」と思わせる差別化戦略について解説します。

目次
1. なぜ差別化が必要なのか
2. 「近いから選ばれる」医院の課題
3. 差別化の3つの方向性
4. 専門性で差別化する
5. 体験価値で差別化する
6. 人・理念で差別化する
7. 差別化をホームページで伝える方法
8. 差別化の落とし穴と注意点
9. よくある質問
10. まとめ

 

1.なぜ差別化が必要なのか

歯科医院の差別化が必要な理由は、競争環境と患者行動の変化にあります。

歯科医院の過剰供給

日本の歯科医院数は約67,000件以上あり、コンビニエンスストア(約56,000件)を上回ります。患者さんにとっては選択肢が多く、「どこに行っても同じ」と思われがちな状況です。

患者の情報収集行動の変化

かつては「近くの歯医者に行く」が当たり前でしたが、インターネットの普及により、患者さんは事前に複数の医院を比較検討するようになりました。ホームページや口コミを見て、「ここが良さそう」と判断してから予約を取る行動が一般的になっています。

保険診療の限界

保険診療中心の経営では、収益性に限界があります。自費診療の比率を高めるためには、「価格」ではなく「価値」で選ばれる医院になる必要があります。そのためには差別化が不可欠です。

選ばれる理由が継続につながる

「近いから」という理由で来院した患者さんは、より近い医院ができれば移ってしまう可能性があります。一方、「この医院の〇〇が良いから」という理由で来院した患者さんは、継続的に通い、口コミで紹介もしてくれます。

2.「近いから選ばれる」医院の課題

立地の利便性だけで選ばれている医院には、いくつかの課題があります。

価格競争に巻き込まれやすい

差別化ができていない医院は、患者さんから見ると「どこも同じ」に見えます。その結果、「同じなら安い方がいい」という判断になり、価格競争に巻き込まれやすくなります。

自費診療の成約率が低い

医院の価値が伝わっていないと、自費診療を提案しても「高い」と感じられてしまいます。「なぜこの医院で自費治療を受ける価値があるのか」が伝わらないためです。

患者の継続率が低い

「近いから」という理由は、引っ越しや職場の変化で簡単に覆ります。また、少しでも不満があれば、別の近い医院に移ってしまいます。

口コミ・紹介が生まれにくい

「近いから通っている」という患者さんは、積極的に人に紹介しようとは思いません。「この医院のここがすごい」という明確な価値がないと、口コミは生まれにくいのです。

3.差別化の3つの方向性

歯科医院の差別化には、大きく分けて3つの方向性があります。

専門性による差別化

特定の治療分野において、高い専門性を持つことで差別化する方向性です。

「インプラント専門」「矯正専門」「根管治療専門」「小児歯科専門」など、特定分野に特化することで、その治療を求める患者さんから選ばれやすくなります。

体験価値による差別化

治療そのものだけでなく、医院で過ごす時間全体の体験価値で差別化する方向性です。

「痛くない治療」「丁寧な説明」「リラックスできる空間」「待ち時間が少ない」など、患者さんが医院で感じる体験全体を向上させることで差別化します。

人・理念による差別化

院長やスタッフの人柄、医院の理念や姿勢で差別化する方向性です。

「この先生に診てもらいたい」「この医院の考え方に共感する」という理由で選ばれることを目指します。

これらは排他的ではなく、組み合わせることでより強い差別化が可能になります。

4.専門性で差別化する

専門分野を明確にする

「何でもできます」は、裏を返せば「特に強みがない」と受け取られかねません。自院の強みとなる専門分野を明確にし、打ち出すことが重要です。

専門分野の例として、インプラント、矯正歯科(成人矯正、小児矯正、マウスピース矯正)、審美歯科、根管治療(マイクロスコープ)、歯周病治療、小児歯科、口腔外科、入れ歯・義歯、予防歯科、訪問歯科などがあります。

専門性を証明する要素

専門分野を打ち出すだけでなく、その専門性を証明する要素が必要です。

資格・認定として、専門医、認定医、指導医などの資格は、専門性を客観的に証明します。学会名と資格の意味を、患者さんにわかりやすく説明します。

経歴として、大学病院や専門機関での研修歴、専門分野での勤務経験などを示します。

実績として、年間症例数、累計症例数などの具体的な数字を示します。「インプラント年間200本以上」「矯正治療実績1,000症例以上」といった形です。

設備として、専門的な治療を可能にする設備の導入状況を示します。マイクロスコープ、歯科用CT、CAD/CAMなど。

症例紹介として、実際の治療症例をビフォーアフターで紹介することで、技術力を視覚的に示します。

ホームページでの専門性アピール

専門分野のページを充実させ、情報量で他院を圧倒することが効果的です。

「インプラント」で差別化するなら、インプラントに関するあらゆる情報(治療の流れ、費用、リスク、症例、Q&Aなど)を網羅的に掲載します。情報量の多さが専門性の証明になります。

トップページでも専門分野を明確に打ち出します。「〇〇専門」「〇〇に力を入れています」というメッセージをファーストビューに配置します。

5.体験価値で差別化する

患者体験の全体像

患者さんが医院で体験するのは、治療だけではありません。予約から会計まで、すべての接点が体験価値を形成します。

患者体験の流れとして、情報収集(ホームページ、口コミ)、予約(電話、Web)、来院(アクセス、外観)、受付(対応、待ち時間)、カウンセリング(説明、傾聴)、治療(技術、痛み配慮)、会計(明確さ、支払い方法)、フォロー(アフターケア、リコール)があります。

体験価値を高めるポイント

痛みへの配慮は、多くの患者さんが歯科に対して持つ不安です。「痛くない治療」は強力な差別化ポイントになります。

表面麻酔の使用、電動麻酔器による圧力コントロール、細い針の使用、声かけによる不安軽減など、具体的な取り組みを説明します。「無痛治療」「痛みの少ない治療」といったキーワードで検索する患者さんは多くいます。

丁寧な説明・カウンセリングも重要です。「説明がわかりやすい」「ちゃんと話を聞いてくれる」という体験は、患者さんの満足度を大きく高めます。

カウンセリングルームの設置、治療計画の書面提示、写真や模型を使った説明など、説明を重視する姿勢を示します。

快適な空間づくりとして、待合室、診療室、全体の雰囲気が患者さんの印象に影響します。清潔感、明るさ、リラックスできる空間づくりを心がけます。

個室診療、半個室、プライバシーへの配慮も差別化ポイントになります。

待ち時間の短縮も重要です。予約時間通りに診療が始まることは、忙しい患者さんにとって大きな価値です。予約管理の徹底、余裕を持ったスケジュール設定など、待ち時間を減らす取り組みを行います。

ホームページでの体験価値アピール

体験価値は、言葉だけでなく視覚的に伝えることが効果的です。

院内写真として、清潔感のある院内、リラックスできる待合室、プライバシーに配慮した診療室などを高品質な写真で見せます。

動画として、院内ツアー動画、治療の流れを説明する動画などで、来院前に雰囲気を知ってもらいます。

患者さんの声として、「痛くなかった」「説明が丁寧だった」「待ち時間が少なかった」といった、体験価値に関する患者さんの声を掲載します。

6.人・理念で差別化する

院長の人柄・想いを伝える

「この先生に診てもらいたい」と思ってもらうことは、最も強力な差別化です。

院長紹介ページを充実させ、経歴だけでなく、人柄や想いが伝わる内容にします。歯科医師を志した理由、診療で大切にしていること、患者さんへのメッセージなどを含めます。

顔写真は必須です。プロのカメラマンによる、親しみやすく信頼感のある写真を使用します。

院長ブログや動画で、日々の診療への想い、学会参加報告、スタッフとの関係などを発信すると、人柄がより伝わります。

医院の理念・方針を明確にする

医院としての理念や診療方針を明確にし、共感を得ることで差別化します。

「できるだけ歯を残す治療」「予防を重視した歯科医療」「患者さんとの対話を大切にする」「地域に根ざした歯科医院」など、医院の軸となる考え方を示します。

この理念に共感した患者さんは、価値観が合っているため、長期的な関係を築きやすくなります。

スタッフの存在感を出す

院長だけでなく、スタッフの存在感を出すことも効果的です。

スタッフ紹介ページで、歯科衛生士、歯科助手、受付スタッフの顔写真と簡単なプロフィールを掲載します。「この人たちがいる医院」という安心感を与えます。

担当衛生士制を採用している場合は、その仕組みと衛生士の紹介を充実させます。

ホームページでの人・理念アピール

院長メッセージをトップページや医院紹介ページに掲載し、医院の考え方を伝えます。長すぎず、想いが凝縮されたメッセージが効果的です。

理念・方針ページを設け、医院として大切にしていることを明文化します。

スタッフブログとして、スタッフが交代で日々の出来事や想いを発信することで、医院の雰囲気や人柄が伝わります。

7.差別化をホームページで伝える方法

差別化ポイントが明確になったら、それをホームページで効果的に伝えます。

ファーストビューで差別化を示す

ホームページを開いた瞬間(ファーストビュー)で、医院の差別化ポイントが伝わるようにします。

専門性で差別化するなら、「インプラント専門医在籍」「マイクロスコープ根管治療」などをキャッチコピーに入れます。

体験価値で差別化するなら、「痛みの少ない治療」「丁寧な説明が評判」などをキャッチコピーに入れます。

人・理念で差別化するなら、院長の写真とメッセージをファーストビューに配置します。

「選ばれる理由」を明確に示す

「当院が選ばれる5つの理由」のようなセクションを設け、差別化ポイントを整理して伝えます。

患者さんが「この医院は他と何が違うのか」を理解しやすい形で示すことが重要です。

ストーリーで伝える

単に「〇〇です」と事実を並べるだけでなく、ストーリーとして伝えると印象に残ります。

「なぜマイクロスコープを導入したのか」「なぜ予防を重視するようになったのか」といった背景や想いを含めて伝えます。

証拠を示す

差別化ポイントは、主張するだけでなく証拠を示すことで説得力が増します。

専門性なら資格証、症例写真、実績数字で証明します。体験価値なら患者さんの声、口コミ評価で証明します。人・理念なら院長の経歴、メディア掲載、スタッフの声で証明します。

8.差別化の落とし穴と注意点

差別化を進める上での注意点を解説します。

すべてを差別化しようとしない

「何でも特別」は「何も特別じゃない」と同じです。差別化ポイントは絞り込み、その分野で圧倒的な存在になることを目指します。

実態が伴わない差別化は逆効果

ホームページで謳っていることと、実際の体験が異なると、患者さんの信頼を失います。差別化ポイントは、実態が伴ったものでなければなりません。

「痛くない治療」を謳うなら、本当に痛みを抑える取り組みを徹底する必要があります。

競合との差別化を意識する

自院だけでなく、競合医院のホームページも確認し、同じことを謳っていないかチェックします。地域内で「痛くない治療」を謳う医院が多ければ、別の切り口を探す必要があります。

差別化は継続的な取り組み

差別化は一度確立すれば終わりではありません。競合も追随してくるため、継続的に差別化ポイントを磨き続ける必要があります。

9.よくある質問

歯科医院の差別化に関して、よくある質問に回答します。

特別な専門性がない場合、どう差別化すればいいですか?

専門性での差別化が難しい場合は、体験価値や人・理念での差別化を検討してください。「丁寧な説明」「痛みへの配慮」「温かいスタッフ」「予約が取りやすい」など、患者さんの体験を向上させる取り組みは、どの医院でも始められます。院長の人柄や医院の理念を前面に出すことも、専門資格がなくてもできる差別化です。大切なのは、「この医院ならではの価値」を見つけ、磨き、伝えることです。

差別化ポイントはいくつ打ち出すべきですか?

メインの差別化ポイントは1〜2個に絞ることをお勧めします。多くの要素を並べると、結局何が特徴なのかがぼやけてしまいます。「インプラント専門」「痛くない治療」など、一言で言える差別化ポイントがあると、患者さんの記憶に残りやすくなります。サブの特徴として3〜5個程度を「選ばれる理由」として整理するのは効果的です。

小規模な医院でも差別化は可能ですか?

可能です。むしろ小規模医院だからこその差別化ポイントがあります。「院長がすべての患者さんを診る」「アットホームな雰囲気」「一人ひとりに時間をかけた丁寧な診療」「融通が利く予約対応」など、大規模医院にはできない価値を提供できます。小規模であることを弱みではなく強みとして打ち出す視点が重要です。

差別化したら既存の患者さんが離れませんか?

差別化の方向性によっては、一部の患者さんが離れる可能性はあります。しかし、差別化によって新たに獲得できる患者さんは、医院の価値に共感して来院するため、満足度や継続率が高い傾向があります。「すべての人に選ばれる」ことを目指すより、「特定の価値を求める人に強く選ばれる」方が、経営的には安定します。

10.まとめ

「とりあえず近い歯医者」から「この医院に行きたい」と選ばれる医院になるためには、明確な差別化が必要です。

差別化の方向性は、専門性(特定分野の高い技術・知識)、体験価値(痛みへの配慮、丁寧な説明、快適な空間)、人・理念(院長の人柄、医院の考え方)の3つがあります。

差別化ポイントを明確にしたら、ホームページで効果的に伝えます。ファーストビューで差別化を示し、「選ばれる理由」を整理し、証拠(資格、実績、患者の声)で裏付けます。

差別化は、単にホームページを変えることではありません。医院としての価値を高め、その価値を適切に伝えることです。「この医院だから通いたい」と言ってもらえる医院を目指して、差別化戦略に取り組んでください。


株式会社リバティーフェローシップ/東京歯科経営ラボでは、歯科医院の差別化戦略とホームページ制作をトータルでサポートしています。「自院の差別化ポイントを見つけたい」「差別化をホームページに反映させたい」といったご相談も、お気軽にお寄せください。

 

投稿者プロフィール

NAOKI OZAWA
歯科コンサルタント小澤直樹
2002年よりコンサルティング活動を開始。2008年から歯科コンサルタントとして勤務した後20017年より現職。

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