失敗から学ぶ!歯科医院ホームページで50万円をドブに捨てた私の体験談

目次
1. 開業時の浮かれた決断が招いた失敗
2. 制作会社選びで犯した致命的なミス
3. デザイン重視の落とし穴
4. SEO対策という名の詐欺まがい商法
5. 運用開始後に気づいた数々の問題点
6. ホームページのリニューアルを決意するまで
7. 失敗から学んだ本当に必要なポイント
8. まとめ
1.開業時の浮かれた決断が招いた失敗
今から3年前、私は念願だった歯科医院を開業しました。勤務医時代から準備を重ね、物件選び、内装工事、医療機器の導入と、順調に進んでいたプロジェクト。その勢いのまま、ホームページ制作も「せっかくだから立派なものを」という安易な考えで発注してしまったのです。
当時の私は、ホームページの重要性は理解していたものの、その中身については全くの素人でした。「見た目がカッコよければ患者さんは来るだろう」「業者に任せておけば大丈夫だろう」という甘い認識しか持っていませんでした。開業準備で多忙を極めていたこともあり、ホームページについて深く考える余裕もなかったのが実情です。
ある制作会社の営業マンが、開業準備で忙しい私のもとを訪れました。彼は洗練されたポートフォリオを見せながら「先生の医院にぴったりのデザインをご提案します」「開業と同時に患者さんが集まるホームページを作ります」と熱心に説明してくれました。提示された見積もりは50万円。決して安くはない金額でしたが、開業という大きな投資の中では、まあ妥当な範囲かなと感じてしまったのです。
今思えば、この時点で複数の業者から見積もりを取るべきでした。相場観もないまま、最初に来た営業マンの言葉を鵜呑みにして契約してしまったことが、すべての失敗の始まりだったのです。
2.制作会社選びで犯した致命的なミス

契約を結んだ制作会社は、一見すると実績豊富な企業に見えました。ポートフォリオには美しいデザインのサイトが並び、大手企業との取引実績もあると謳っていました。しかし、よく調べてみると歯科医院のホームページ制作実績はほとんどなかったのです。
この会社が得意としていたのは、飲食店やアパレルショップなど、一般的な商業施設のホームページでした。確かにデザインは洗練されていましたが、医療機関特有の規制や患者心理への理解は皆無でした。医療広告ガイドラインという言葉すら、担当者は知らなかったのです。
さらに問題だったのは、担当者とのコミュニケーションの取りにくさでした。私が診療で忙しい時間帯にしか連絡が来ず、質問をメールで送っても返信が数日後になることが頻繁にありました。制作の進捗状況も不透明で、いつ完成するのかさえはっきりしない状態が続きました。
打ち合わせの回数も最小限に抑えられ、私の要望を十分に聞き取ることなく制作が進められていきました。「プロにお任せください」という言葉に安心してしまい、積極的に関与しなかった私にも責任がありますが、結果として私の医院の特徴や診療方針が全く反映されないホームページが出来上がることになったのです。
後から知ったことですが、歯科医院専門のホームページ制作会社も存在していました。そうした専門業者であれば、医療広告ガイドラインへの対応、患者が求める情報の配置、予約システムとの連携など、歯科医院ならではのノウハウを持っていたはずです。業者選びの時点で、専門性を重視すべきだったと痛感しています。
3.デザイン重視の落とし穴

完成したホームページを初めて見たとき、正直なところ「見た目は悪くないな」と思いました。スタイリッシュなデザイン、洗練された配色、動きのあるアニメーション。確かにカッコよかったのです。しかし、実際に運用を始めてから、デザイン重視の方針が大きな問題を孕んでいたことに気づかされました。
まず、情報が非常に見つけにくいという致命的な欠陥がありました。トップページには大きな写真とキャッチコピーが配置され、視覚的なインパクトは抜群でしたが、患者さんが本当に知りたい「診療時間」「アクセス方法」「診療内容」といった基本情報が、どこにあるのか分かりにくかったのです。
デザイナーは「スクロールしていけば出てきます」と説明しましたが、多くの患者さん、特に高齢の方々は、そこまで辿り着く前に諦めてサイトを離れてしまっていたようです。実際、ホームページを見た知人から「先生の医院、何時まで診療してるの?ホームページ見たけど分からなかったよ」と言われたときは、愕然としました。
また、スマートフォンでの表示が全く最適化されていなかったことも大問題でした。現代では患者さんの7割以上がスマートフォンでホームページを閲覧します。しかし、私のホームページはパソコンでの見栄えを最優先に作られており、スマートフォンで見ると文字が小さすぎたり、ボタンが押しにくかったりと、非常に使い勝手が悪かったのです。
さらに、読み込み速度の遅さも致命的でした。大きな画像や凝ったアニメーションを多用した結果、ページが表示されるまでに5秒以上かかることもありました。インターネットの世界では、3秒以上待たされると多くのユーザーが離脱すると言われています。せっかく検索してたどり着いてくれた患者さんを、重いページで逃してしまっていたのです。
デザインも重要ですが、それはあくまで情報が適切に伝わることが前提です。見た目の美しさだけを追求し、ユーザビリティ(使いやすさ)を軽視した結果、集患効果のないホームページが出来上がってしまいました。
- SEO対策という名の詐欺まがい商法
制作会社からは「SEO対策も万全です」という説明を受けていました。追加料金として10万円を支払い、「これで検索上位に表示されます」という約束でした。しかし、開業から半年経っても、一向に検索順位は上がりませんでした。
試しに「地域名 歯科」で検索してみると、私の医院は3ページ目にも4ページ目にも表示されません。ようやく見つかったのは、なんと7ページ目でした。これでは、患者さんにホームページを見つけてもらうことはほぼ不可能です。実際、ホームページ経由での新規患者は月に1〜2名程度と、期待を大きく下回る結果でした。
不審に思って制作会社に問い合わせると、「SEO対策には時間がかかります」「もっと上位を目指すなら追加の広告費が必要です」という回答。結局、SEO対策として行われていたのは、メタタグの設定という最低限の作業だけで、実質的な効果はほとんどなかったのです。
後から学んだことですが、本当に効果的なSEO対策には、質の高いコンテンツの定期的な更新、適切なキーワード選定、被リンクの獲得、サイト構造の最適化など、継続的な取り組みが必要でした。一度設定すれば終わりというものではなかったのです。
さらに悪質だったのは、契約時に「Googleマップへの登録も行います」と言われていたにもかかわらず、実際には登録されていなかったことです。Googleマップは患者さんが医院を探す際の重要なツールですが、私の医院はそこに表示されていませんでした。自分で登録作業を行うまで、この貴重な集患チャネルを完全に逃していたのです。
5.運用開始後に気づいた数々の問題点

ホームページが公開され、実際に運用を始めてから、次々と問題点が浮き彫りになっていきました。最も深刻だったのは、更新が一切できない仕組みだったことです。
診療時間の変更、スタッフの入れ替わり、新しい治療機器の導入など、医院の情報は常に変化します。しかし、私のホームページでは、こうした変更を行うには毎回制作会社に依頼し、修正費用として1万円以上を支払う必要がありました。ちょっとしたお知らせを掲載するだけでも課金されるシステムだったのです。
結果として、情報更新の頻度は極端に低くなり、ホームページには古い情報が掲載され続けることになりました。患者さんから「ホームページに書いてあった○○先生はもういらっしゃらないんですか?」と聞かれたときは、申し訳ない気持ちでいっぱいでした。
また、問い合わせフォームの設定にも不備がありました。患者さんからの予約や質問を受け付けるフォームが設置されていましたが、送信された内容が私のメールに届かないことが度々ありました。後から判明したのですが、迷惑メールフォルダに振り分けられていたり、そもそもシステムエラーで送信されていなかったりしたのです。せっかく問い合わせてくれた患者さんを逃してしまっていました。
|
発生した問題 |
影響 |
解決にかかった追加費用 |
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情報更新の困難さ |
古い情報の放置、信頼性低下 |
1回1〜3万円 |
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問い合わせフォームの不具合 |
新規患者の取りこぼし |
5万円 |
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スマホ対応の不備 |
アクセス数の減少 |
15万円 |
|
SEO効果の不足 |
検索順位の低迷 |
月額3万円の提案(未契約) |
さらに、アクセス解析ツールも正しく設定されていませんでした。どれくらいの人がホームページを訪れているのか、どのページが人気なのか、どこから訪問してきたのかといったデータが全く取得できていなかったのです。これでは、ホームページの効果測定も改善もできません。
こうした問題を一つ一つ解決しようとすると、さらに追加費用が必要になると言われました。既に50万円も支払っているのに、まともに機能するホームページにするためには、さらに数十万円が必要だというのです。これは完全に想定外でした。
6.ホームページのリニューアルを決意するまで
運用開始から1年が経過した頃、私は重大な決断を迫られていました。このままダメなホームページを維持し続けるのか、それとも損切りして作り直すのか。50万円という大金を既に投じており、さらに追加投資をするのは精神的にも経済的にも辛いものがありました。
しかし、冷静に分析すると、現状のホームページは集患に全く貢献していないどころか、医院のイメージを損ねている可能性すらありました。古い情報、使いにくいインターフェース、見つけにくい検索順位。これらは「きちんと管理されていない医院」という印象を与えかねません。
同時期に開業した歯科医師の仲間たちと情報交換する中で、彼らのホームページが私のものとは全く異なることに気づきました。更新が容易で、スマートフォンでも見やすく、問い合わせフォームもスムーズに機能している。そして何より、ホームページ経由での新規患者数が月に10名以上という医院もありました。
決定打となったのは、ある患者さんからの一言でした。「先生の医院、口コミは良いのにホームページが分かりにくくて、最初は別の歯医者に行こうかと思ったんです」と打ち明けられたのです。せっかく良い評判があっても、ホームページがそれを台無しにしているかもしれない。この事実に愕然としました。
リニューアルを決意してからは、今度こそ失敗しないよう、徹底的に調査を行いました。歯科医院専門のホームページ制作会社を複数ピックアップし、実績を確認し、見積もりを比較しました。実際に制作実績のある医院に連絡を取り、使い勝手や集患効果について聞き取りも行いました。
7.失敗から学んだ本当に必要なポイント

高い授業料を払った失敗経験から、私が学んだ教訓をお伝えします。これから歯科医院のホームページを作ろうとしている先生方には、同じ轍を踏んでほしくありません。
**第一に、制作会社の専門性を最重視すべきです。**一般的なウェブデザイン会社ではなく、歯科医院のホームページ制作に特化した業者を選ぶことが重要です。医療広告ガイドラインへの理解、患者が求める情報の配置、予約システムとの連携など、歯科医院特有のノウハウを持つ業者でなければ、効果的なホームページは作れません。
**第二に、デザインよりも機能性とユーザビリティを優先すべきです。**見た目の美しさは確かに重要ですが、それ以上に「患者さんが知りたい情報にすぐアクセスできる」「スマートフォンでも快適に閲覧できる」「問い合わせや予約が簡単にできる」といった実用性が大切です。
**第三に、更新の容易さは絶対条件です。**WordPress等のCMS(コンテンツ管理システム)を使用し、自分で簡単に情報更新ができる仕組みを導入すべきです。毎回業者に依頼して費用が発生するシステムでは、結局更新されない古いホームページになってしまいます。
**第四に、SEO対策は一度きりではなく継続的な取り組みが必要です。**初期設定だけで検索上位に表示されることはほぼありません。定期的なコンテンツ更新、ブログ記事の投稿、Googleマイビジネスの活用など、継続的な努力が求められます。
**第五に、明確な費用内訳と契約内容の確認が必須です。**何が含まれていて、何が含まれていないのか。追加費用が発生するケースはどういう場合か。サポート期間や範囲はどうなっているのか。これらを契約前に明確にしておくべきでした。
**第六に、実績の確認は必ず行うべきです。**ポートフォリオを見るだけでなく、実際に公開されている歯科医院のホームページを複数チェックし、使い勝手を自分で確かめることが重要です。可能であれば、その医院に直接問い合わせて満足度を聞くことも有効です。
リニューアル後のホームページでは、これらのポイントを全て押さえた結果、開設3ヶ月で月間10名以上の新規患者獲得を達成できました。最初から適切な業者を選んでいれば、50万円と1年以上の時間を無駄にすることはなかったのです。
まとめ
私の失敗体験は、決して珍しいものではありません。多くの歯科医師が、開業時の多忙さや知識不足から、同様の失敗を犯しています。しかし、この失敗から得た教訓は非常に価値あるものでした。
50万円という金額は決して小さくありませんが、それ以上に大きな損失は、1年以上の時間と、失われた新規患者獲得の機会でした。適切なホームページがあれば、その期間に何十人、何百人という患者さんと出会えたかもしれません。
ホームページは、現代の歯科医院経営において欠かせないツールです。だからこそ、安易な判断や妥協は禁物です。しっかりと調査し、専門性の高い制作会社を選び、長期的な視点で投資することが重要です。
私の失敗談が、これからホームページを作ろうとしている先生方の参考になれば幸いです。同じ過ちを繰り返さないよう、慎重に、しかし臆することなく、効果的なホームページ制作に取り組んでいただきたいと思います。
適切なパートナーを選べば、ホームページは確実に医院の成長を支える強力な武器となります。私のように50万円をドブに捨てることなく、賢明な投資として成功させてください。
投稿者プロフィール
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歯科コンサルタント小澤直樹
2002年よりコンサルティング活動を開始。2008年から歯科コンサルタントとして勤務した後20017年より現職。
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