「著作権侵害で訴えられた歯科医院」から学ぶ画像・文章の正しい使い方

目次
1. 歯科医院が著作権侵害で訴えられる実例が増加中
2. 著作権侵害となる5つの典型的なパターン
3. 画像を安全に使用するための3つのルール
4. 文章コンテンツでの著作権侵害を防ぐ方法
5. フリー素材・有料素材の正しい利用方法
6. 万が一侵害を指摘された際の対応手順
7. まとめ
1.歯科医院が著作権侵害で訴えられる実例が増加中
近年、歯科医院のホームページにおける著作権侵害が問題となり、実際に訴訟や損害賠償請求に発展するケースが増えています。「知らなかった」では済まされない深刻な法的リスクです。
2023年には、関東の歯科医院がホームページに無断で使用した写真について、写真家から損害賠償請求を受け、示談金として約100万円を支払った事例が報告されています。この医院は、インターネット上で見つけた歯科治療の写真を「誰でも見られるから使っても大丈夫」と考え、出典も明記せずに使用していました。
また、他院のホームページの文章をコピーして使用していた医院が、元の医院から警告書を受け取り、ホームページの該当箇所を削除し、謝罪文を掲載せざるを得なくなった事例もあります。さらに、有料素材サイトの画像を購入せずに無断使用していた医院に対し、素材提供会社から使用料の数倍にあたる請求がなされたケースも確認されています。
著作権侵害のリスクは、金銭的損失だけではありません。訴訟や警告が公になれば、医院の評判は大きく傷つきます。「著作権を侵害する医院」というレッテルは、患者様の信頼を失わせ、長期的な経営に深刻な影響を及ぼします。さらに、Googleは著作権侵害が確認されたサイトの検索順位を下げるため、SEO的にも大きなダメージとなります。
著作権侵害は刑事罰の対象でもあり、最悪の場合、10年以下の懲役または1000万円以下の罰金が科される可能性があります。民事上の損害賠償請求も、実際の損害額に加えて、弁護士費用や慰謝料が加算され、数百万円に達することもあります。
多くの歯科医院が、著作権に対する認識の甘さから、無意識のうちに違法行為を行っています。本記事では、実際の侵害事例から学び、安全にホームページを運営するための正しい知識を身につけていただきます。
2.著作権侵害となる5つの典型的なパターン

歯科医院のホームページで頻繁に見られる著作権侵害のパターンを5つご紹介します。これらに該当する使用は直ちに中止してください。
パターン1:Google画像検索で見つけた写真を無断使用
最も多い侵害パターンがこれです。「歯科 器具」「インプラント 画像」などとGoogle画像検索し、表示された写真を右クリックして保存し、自院のホームページに掲載する行為は、ほぼ確実に著作権侵害です。
Google画像検索に表示される写真は、インターネット上に公開されているというだけで、無料で使える素材ではありません。それぞれに著作権者が存在し、無断使用は違法です。「みんなやっているから」「バレないだろう」という考えは極めて危険です。
近年、AI技術の発達により、自分の写真が無断使用されていないかを自動監視するサービスが普及しています。写真家やストックフォト会社は、こうしたツールを使って侵害を発見し、法的措置を取るケースが増えています。
パターン2:他院のホームページの文章をコピー&ペースト
競合医院や大手医院のホームページの文章を、そのままコピーして自院サイトに貼り付ける行為も著作権侵害です。「治療方針」「インプラントの説明」「予防歯科の重要性」といった文章も、その医院が独自に作成したものであれば著作権で保護されています。
一部の表現を変えただけの「リライト」も、元の文章の創作性を流用している場合は侵害となります。安全なのは、自分の言葉でゼロから書くこと、または制作会社に依頼してオリジナルのコンテンツを作成することです。
さらに問題なのは、同じ制作会社が複数の医院に同じテンプレート文章を使い回すケースです。これも著作権侵害には当たらないものの、Googleが「重複コンテンツ」と判断し、検索順位が下がる原因となります。
パターン3:有料素材を購入せずに使用
Shutterstockやピクスタなどの有料素材サイトでは、プレビュー画像(透かし入り)が表示されます。この透かし入り画像をスクリーンショットし、透かし部分をトリミングして使用する行為は、明白な著作権侵害であり、悪質性が高いと判断されます。
有料素材サイトは、独自の監視システムで無断使用を検出しており、発見次第、使用料の数倍から数十倍の請求を行います。実際、透かし入り画像を無断使用した企業に対し、通常価格の10倍の損害賠償が認められた判例もあります。
パターン4:SNSの写真を無断転載
InstagramやTwitterで見つけた歯科関連の写真を、投稿者に許可を得ずにホームページに掲載する行為も侵害です。「出典を明記すれば大丈夫」と考える方もいますが、出典明記だけでは不十分で、必ず投稿者の許可が必要です。
特に、患者様が投稿した治療のビフォーアフター写真を無断で使用すると、著作権侵害だけでなく、肖像権侵害やプライバシー侵害にも該当する可能性があり、さらに深刻な問題となります。
パターン5:フリー素材の利用規約違反
「フリー素材だから自由に使える」と考えるのは危険です。フリー素材にも利用規約があり、それを守らなければ違法となります。よくある規約違反は、商用利用禁止の素材を医院サイトで使用する、クレジット表記(出典明記)が必要な素材で表記を省略する、改変禁止の素材を加工して使用する、などです。
「フリー素材 = 何でもOK」ではなく、各素材サイトの利用規約を必ず確認し、遵守してください。
3.画像を安全に使用するための3つのルール

著作権侵害を避け、安全に画像を使用するための3つの基本ルールをマスターしましょう。
ルール1:必ず正規のルートで入手する
画像は、以下のいずれかの方法で入手してください。
自分で撮影する 最も安全な方法は、医院内の設備、スタッフ、外観などを自分で撮影することです。スマートフォンのカメラでも十分ですが、重要な写真はプロのカメラマンに依頼することで、品質も向上します。
フリー素材サイトから入手 写真AC、ぱくたそ、Unsplash、Pixabayなどの無料素材サイトから、利用規約に従って使用します。これらのサイトは、投稿者が著作権を放棄しているか、使用を許諾している写真を提供しています。
有料素材サイトから購入 Shutterstock、ピクスタ、Adobe Stockなどの有料サイトから、正規に購入します。費用はかかりますが、高品質で豊富な選択肢があり、商用利用が明確に許可されているため安心です。
制作会社に依頼 ホームページ制作会社に依頼すれば、適切な素材の選定や撮影手配を任せられます。費用はかかりますが、著作権リスクを回避でき、医院のイメージに合った写真を用意できます。
ルール2:利用規約を必ず確認する
素材を入手する際は、必ず利用規約を確認してください。特に以下の点をチェックします。
- 商用利用が許可されているか(歯科医院のホームページは商用です)
- クレジット表記(出典明記)が必要か
- 改変(トリミング、色調整など)が許可されているか
- 使用できる媒体(Web、印刷物など)に制限はないか
- 使用期間や回数に制限はないか
規約が英語の場合は、翻訳ツールを使ってでも必ず内容を理解してください。「読まなかった」は言い訳になりません。
ルール3:使用記録を保管する
どの画像をどのサイトから入手したか、購入した場合はその証拠(領収書、ダウンロード履歴)を記録・保管してください。万が一、著作権侵害を疑われた際に、正当な使用であることを証明できます。
特に有料素材の場合、購入履歴が使用許諾の証拠となります。領収書やライセンス証明書は、ホームページ運営中は必ず保管してください。
4.文章コンテンツでの著作権侵害を防ぐ方法
画像だけでなく、文章にも著作権があります。他者の文章を無断で使用しないための具体的な方法をご紹介します。
他者の文章をコピーしない
当たり前のことですが、他院のホームページ、医学書、専門サイトの文章をコピー&ペーストして使用してはいけません。一部だけのコピーでも、その部分に創作性があれば侵害となります。
「ちょっと単語を変えただけ」のリライトも危険です。文章の構成や表現が元の文章に酷似していれば、著作権侵害と判断される可能性があります。
自分の言葉で書き直す
他者の文章を参考にする場合は、内容を理解した上で、完全に自分の言葉で書き直してください。単なる言い換えではなく、文章構造から表現まで、すべてオリジナルにする必要があります。
たとえば「虫歯は、歯の表面が酸によって溶かされる病気です」という文章を参考にする場合、「虫歯とは、口腔内の酸が歯を侵食することで発生する疾患です」のように、構造と表現を完全に変えます。
引用のルールを守る
どうしても他者の文章を使用したい場合は、「引用」のルールに従います。引用が認められる条件は以下の通りです。
- 引用する必然性がある(専門的な説明、統計データなど)
- 引用部分が明確に区別されている(カギ括弧で囲む、背景色を変えるなど)
- 出典を明記する(著者名、書籍名、URLなど)
- 引用部分が従で、自分の文章が主である(引用が全体の1割から2割程度)
- 原文を改変しない
これらの条件をすべて満たして初めて、適法な引用となります。
AIライティングツールの注意点
ChatGPTなどのAIツールで文章を生成する場合も、生成された文章がどこかの文章を学習・再現している可能性があります。AIツールの出力をそのまま使うのではなく、必ず自分で確認・修正し、オリジナル性を持たせてください。
また、AIが生成した文章の著作権は誰にあるのか、法的に未確定な部分があります。安全のため、AIツールは補助として使い、最終的には人間が責任を持って執筆・編集することが推奨されます。
5.フリー素材・有料素材の正しい利用方法

フリー素材と有料素材、それぞれの正しい利用方法を理解し、安全に活用しましょう。
おすすめのフリー素材サイト
写真AC(photoAC) 日本最大級の無料写真素材サイトです。商用利用可能、クレジット表記不要ですが、無料会員は1日の検索回数とダウンロード数に制限があります。有料会員(月額1000円程度)になれば制限なく利用できます。
ぱくたそ 日本人モデルの写真が豊富で、歯科医院のスタッフ写真の代替として使えます。商用利用可能、クレジット表記不要です。ただし、同じ写真が多くのサイトで使われているため、差別化には不向きです。
Unsplash / Pixabay 海外の無料素材サイトで、高品質な写真が豊富です。商用利用可能、クレジット表記不要ですが、規約が英語のため、翻訳して理解することが必要です。
おすすめの有料素材サイト
Shutterstock 世界最大級の有料素材サイトで、3億点以上の素材があります。月額制または画像パックで購入でき、商用利用が明確に許可されています。歯科関連の専門的な写真も豊富です。
ピクスタ(PIXTA) 日本の有料素材サイトで、日本人モデルや日本の風景写真が充実しています。単品購入も可能で、必要な枚数だけ購入できるのが特徴です。
Adobe Stock Adobe製品と連携しており、PhotoshopやIllustratorから直接素材を検索・購入できます。デザイン作業の効率化に優れています。
ライセンスの種類と使用範囲
有料素材には、通常ライセンスと拡張ライセンスがあります。通常ライセンスは、ホームページや印刷物での使用が認められますが、再販や大量配布には使えません。拡張ライセンスは、商品パッケージや転売目的での使用が認められます。
歯科医院のホームページであれば、通常ライセンスで十分です。ただし、医院のロゴに素材写真を組み込むなど、特殊な使い方をする場合は拡張ライセンスが必要になることもあります。不明な場合は、素材サイトのサポートに確認してください。
6.万が一侵害を指摘された際の対応手順

十分注意していても、過去の経緯で著作権侵害を指摘される可能性があります。その際の適切な対応手順を知っておきましょう。
ステップ1:まず事実確認
著作権者または代理人から警告書やメールを受け取ったら、まず指摘内容が事実かどうかを確認します。該当する画像や文章が本当に自院のホームページに掲載されているか、それが本当に相手の著作物なのかを確認してください。
稀に、詐欺まがいの警告もあるため、相手の身元を確認することも重要です。弁護士や法律事務所を名乗る場合は、実在する事務所か、弁護士登録があるかを確認してください。
ステップ2:速やかに削除
事実であれば、言い訳や交渉の前に、まず該当するコンテンツを速やかに削除します。削除することで、これ以上の損害拡大を防げますし、誠意を示すことにもなります。
削除した旨を相手に連絡し、「ご指摘ありがとうございました。該当箇所を削除いたしました」と伝えます。この迅速な対応が、その後の交渉を有利に進める鍵となります。
ステップ3:謝罪と協議
削除後、改めて謝罪し、損害賠償や和解について協議します。相手が請求する金額が妥当かどうか、弁護士に相談することも検討してください。
多くの場合、迅速に削除し、誠意ある対応をすれば、裁判ではなく示談で解決できます。示談金は、通常の使用料の数倍から10倍程度が相場ですが、ケースバイケースです。
ステップ4:再発防止策の実施
二度と同じ過ちを繰り返さないよう、ホームページ全体を見直します。他にも著作権侵害の疑いがある画像や文章がないか、制作会社に確認してもらうことも有効です。
また、スタッフ全員に著作権の基礎知識を共有し、今後は必ず正規のルートで素材を入手することを徹底してください。
無視は絶対にNG
「警告を無視すれば諦めるだろう」という考えは極めて危険です。無視すると、相手は裁判所に訴えを起こし、正式な法的手続きに入ります。裁判になれば、弁護士費用、裁判費用、時間的損失が発生し、さらに判決で高額な賠償金を命じられる可能性があります。
警告を受けたら、必ず誠実に対応してください。
まとめ
著作権侵害は、歯科医院にとって金銭的損失、評判の失墜、SEOへの悪影響をもたらす深刻なリスクです。「知らなかった」では済まされず、実際に損害賠償請求や訴訟に発展するケースが増えています。
典型的な侵害パターンは、Google画像検索で見つけた写真の無断使用、他院ホームページの文章コピー、有料素材の無断使用、SNS写真の無断転載、フリー素材の利用規約違反です。これらは直ちに中止し、正規のルートで素材を入手してください。
安全な画像使用の3つのルールは、正規ルートでの入手、利用規約の確認、使用記録の保管です。文章は、他者の文章をコピーせず、自分の言葉で書き、引用のルールを守ることが重要です。フリー素材サイト(写真AC、ぱくたそ)や有料素材サイト(Shutterstock、ピクスタ)を適切に活用してください。
万が一侵害を指摘されたら、事実確認、速やかな削除、謝罪と協議、再発防止策という手順で誠実に対応します。無視は絶対にせず、必要であれば弁護士に相談してください。
著作権を尊重することは、法的リスクを回避するだけでなく、クリエイターへの敬意でもあります。正しい知識を持ち、適切に素材を使用することで、安心してホームページを運営し、患者様の信頼を守り続けてください。著作権コンプライアンスが、持続可能な医院経営の基盤となります。
投稿者プロフィール
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歯科コンサルタント小澤直樹
2002年よりコンサルティング活動を開始。2008年から歯科コンサルタントとして勤務した後20017年より現職。
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