歯科医院の売上を安定させる自費率向上の考え方と具体策

保険診療中心の歯科医院では、売上の天井が見えやすく、経営の安定化に悩むケースが多くあります。保険点数の改定に左右され、患者数を増やすにも限界があります。一方、自費診療の比率が高い医院は、患者1人あたりの単価が高く、より少ない患者数で安定した売上を確保できます。

しかし、「自費の提案は押し売りのようで苦手」「患者に断られるのが怖い」という声も多く聞かれます。自費率を上げることは、決して患者を騙すことではありません。患者にとってより良い選択肢を提示し、選んでもらうことです。本記事では、自費率向上の正しい考え方と、具体的な施策を解説します。

 

 ━目 次━
 1. なぜ自費率向上が重要なのか
 2. 自費率向上における正しいマインドセット
 3. 自費率を高める具体的な施策
 4. 自費率向上のための院内体制
 5. まとめ

 

1. なぜ自費率向上が重要なのか

自費率向上が経営上重要な理由はいくつかあります。まず、保険診療の限界です。保険診療は点数が決まっており、どれだけ丁寧に治療しても売上には限界があります。また、保険改定のたびに収入が変動するリスクもあります。

次に、質の高い医療の提供です。保険の範囲内では提供できない、より良い材料や技術があります。セラミック、インプラント、マウスピース矯正など、自費診療でしか提供できない選択肢は患者のQOL向上に貢献します。

そして、経営の安定化です。自費診療は利益率が高く、患者1人あたりの単価を上げることができます。患者数が減少しても、自費率が高ければ売上を維持しやすくなります。

 

2. 自費率向上における正しいマインドセット

自費率を上げるにあたって、まず院長やスタッフのマインドセットを整えることが重要です。「自費を勧める=押し売り」という認識を変える必要があります。

自費診療の提案は、患者に選択肢を提供することです。保険診療しか説明しなければ、患者はより良い選択肢があることすら知らないまま治療を受けることになります。それは本当に患者のためになるでしょうか。

例えば、被せ物の選択肢として保険の銀歯しか説明しなかった場合、セラミックという選択肢があることを知らない患者は、後から「セラミックにすればよかった」と後悔するかもしれません。選択肢を提示した上で、患者自身に選んでもらうことが大切です。

 

3. 自費率を高める具体的な施策

施策1:すべての患者に選択肢を提示する

自費診療の提案は、特定の患者だけでなく、すべての患者に行いましょう。「この患者はお金がなさそう」「高齢だから保険でいいだろう」といった先入観で判断してはいけません。

実際、見た目では判断できないケースが多くあります。質素な身なりの方が高額な自費治療を即決することもあれば、高級車で来院する方が保険治療を選ぶこともあります。すべての患者に平等に選択肢を提示し、判断は患者に委ねましょう。

施策2:わかりやすい説明ツールを用意する

自費と保険の違いを言葉だけで説明するのは難しいです。視覚的に比較できるツールを用意しましょう。

具体的には、素材サンプル(セラミック、ジルコニア、金属などの実物)、比較写真(保険と自費の見た目の違い)、説明用パンフレット、費用と特徴の比較表などが効果的です。患者が実際に手に取って見比べることで、違いが明確になり、選択しやすくなります。

施策3:カウンセリングの時間を確保する

忙しい診療の合間に、十分な説明をすることは困難です。自費診療の説明には、専用のカウンセリング時間を設けましょう。診療台の上ではなく、カウンセリングルームで落ち着いて話すことで、患者も質問しやすくなります。

カウンセリングでは、まず患者の希望や悩みを聴き、その上で選択肢を提示します。「見た目を気にされているなら、セラミックという選択肢もあります」「長持ちさせたいなら、ゴールドという選択肢もあります」と、患者のニーズに合わせた提案をしましょう。

施策4:スタッフも提案できるようにする

自費診療の提案は、歯科医師だけでなく、歯科衛生士やトリートメントコーディネーターも行えるようにしましょう。特に、歯科衛生士は患者と接する時間が長く、信頼関係を築きやすい立場にあります。

スタッフが自信を持って提案できるよう、勉強会を開催し、自費診療の知識を共有しましょう。ロールプレイングで説明の練習をするのも効果的です。

施策5:見積書を活用する

高額な自費診療は、その場で即決してもらうのは難しいです。見積書を作成し、持ち帰って検討してもらう時間を設けましょう。見積書には、治療内容、費用、期間、保証内容などを明記します。

「ご家族と相談されてから決めてください」「次回来院時にお返事いただければ結構です」と伝えることで、患者は安心して検討できます。決断を急がせないことが、かえって成約率を高めることにつながります。

施策6:分割払い・デンタルローンを導入する

費用がネックで自費診療を諦める患者は少なくありません。分割払いやデンタルローンを導入することで、支払いのハードルを下げることができます。

「月々〇〇円から治療が可能です」と伝えることで、総額を見て諦めていた患者も検討しやすくなります。クレジットカード払い、医院独自の分割払い、デンタルローン会社との提携など、複数の支払い方法を用意しましょう。

施策7:症例写真で成果を見せる

言葉で説明するよりも、実際の症例写真を見せる方が効果的です。「この患者様はセラミックで治療しました」と、ビフォーアフターの写真を見せることで、治療後のイメージが湧きやすくなります。

症例写真は、患者の同意を得た上で、治療内容・費用・リスクなどの情報を付記して使用しましょう。院内掲示、パンフレット、ホームページなど、様々な場面で活用できます。

 

4. 自費率向上のための院内体制

自費率を継続的に向上させるには、院内の体制づくりも重要です。まず、目標設定です。現在の自費率を把握し、具体的な目標を設定しましょう。いきなり大幅な向上を目指すのではなく、現状プラス5%など、達成可能な目標から始めます。

次に、定期的な振り返りです。月次で自費率を確認し、どの治療の提案が増えたか、どの患者が自費を選んだかを分析しましょう。成功事例を共有することで、スタッフのモチベーションも上がります。

そして、患者アンケートの活用です。自費診療を選んだ患者に、決め手を聞いてみましょう。「説明がわかりやすかった」「実際の症例を見て安心した」など、成功要因がわかれば、さらに改善できます。

 

5. まとめ

自費率向上は、押し売りではなく、患者に選択肢を提供することです。すべての患者に選択肢を提示し、わかりやすい説明ツールを活用し、カウンセリングの時間を確保し、スタッフも提案できる体制を整えましょう。

見積書の活用、分割払いの導入、症例写真の活用も効果的です。自費率向上は、医院の売上安定だけでなく、患者により良い治療を提供することにもつながります。正しいマインドセットで、自費診療の提案に取り組んでいきましょう。

 

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投稿者プロフィール

NAOKI OZAWA
歯科コンサルタント小澤直樹
2002年よりコンサルティング活動を開始。2008年から歯科コンサルタントとして勤務した後20017年より現職。

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