歯科医院を取り巻く「人間の欲求」
こんにちは、歯科医院経営コンサルタントの小澤です。
突然ですが、皆さんは今どんな「欲求」を抱いていますか?
食欲、金銭欲、承認欲、などなど、さまざま欲求が存在しますが、自分が今どんな欲求を抱いている状態なのかを常に意識しながら生きている人は少ないかもしれません。
今回は、人間のもつ潜在的な「欲求」に関する理論について、歯科医院の場合どのように捉えるべきかを考えてみたいと思います。
人間の持つ「欲求」
早速ですが、皆さんは「マズローの5段階欲求」という理論をご存知でしょうか?
これは、アメリカの心理学者マズローが「人間は自己実現に向かって絶えず成長する」と仮定し、人間の欲求を5段階の階層で表した理論です。
現代でもビジネスのさまざまな分野でこの理論が用いられています。
マズローの5段階欲求
まず一番下の階層に「生理的欲求」があります。
これは、食欲や睡眠欲など生きていく上で欠かせない欲求です。
生理的欲求が満たせないような状況下においては、それより上の階層の欲求は抱きにくいのです。
次の階層には「安全の欲求」。
これは肉体的にも精神的にも、経済的にも安定した環境で生活したいと願う気持ちです。
不安な状況の中ではまず自分の安全を願います。それ以上の欲求は後回しです。
三番目の階層は「社会的欲求 / 所属と愛の欲求」。
これは、自分が社会に必要とされていると感じることや、誰かと繋がっていたいと願う気持ちです。
孤独な状態ではそれ以上の欲求は生まれません。
次に「承認の欲求」がきます。
誰かに認められたい、褒められたい、尊敬されたいなどの感情がこれにあたります。
そして承認欲求が満たされれば次の階層の欲求を抱くようになります。
最後の階層は「自己実現の欲求」。
すべての欲求が満たされた状態の中で、自分はこうありたいという理想や目標を抱き、少しでもそれに近づきたいという気持ちが生じるのです。
ただし、誰もがこの順番で同じように欲求を抱いているわけではありません。
中にはどこかの階層の欲求が全くないという人もいるでしょう。
今回は簡単に説明しましたが、マズローのこの理論については書籍や、インターネットでもさまざまな解説があります。もっと詳しく知りたいという方はぜひ調べてみてください。
それでは早速、歯科医院でこのマズローの5段階欲求をどのように当てはめて考えれば良いのか、具体的に見ていきましょう。
歯科医院におけるマズローの5段階欲求
今回は、患者さんの気持ちとスタッフの気持ちで置き換えてみます。ぜひ院長自身の欲求についても考えながら見てみましょう。
患者さんの生理的欲求
歯が痛くて来院された患者さんは、まず「痛みを取って欲しい」と願います。美味しくご飯が食べたい、痛みで目が覚めることなく眠りたいそのような欲求も抱いています。
この段階で自費の補綴物や予防の重要性についての説明を受けたり、カウンセリングを行われたりしたとしてもまったく気持ちには響きません。
綺麗な歯になりたいとか、健康でありたいと願うのは「生理的欲求」が満たされた後だからです。
スタッフの生理的欲求
ご飯が食べたい、しっかり眠りたい。医院で働いているスタッフはきっとこのような「生理的欲求」は満たされているのではないでしょうか。
もし、ご飯が食べられない、眠れないような状態のスタッフがいるのであれば、まずどうすればこの欲求を満たすことができるのかを一緒に考えてあげる必要があるでしょう。
生理的欲求が満たされていない状態では、良いパフォーマンスが出来るとは考えにくいからです。
患者さんの安全の欲求
ずっと健康でいたい。これ以上歯を失いたくない。虫歯になりたくない。
生理的欲求が満たされて初めてこのような理想を抱きます。
患者さんの痛みの状態や気持ちをふまえた上で、自費の提案や予防についての啓発を行ってください。
タイミングを間違えるとせっかくの努力も水の泡になってしまいます。
スタッフの安全の欲求
経済的に安定した生活を送りたい。安全で健康に過ごしたい。将来の不安を感じずに働きたい・・・。
スタッフは生活に不安を感じていないでしょうか?
健康面で何か問題を抱えていないでしょうか?
スタッフの「安全」を常に気に掛け、トラブルを抱えている人がいるのであれば、寄りそってあげる必要があります。
不安を抱えたままで働くことは、スタッフの成長を妨げる原因になるからです。
患者さんの社会的欲求
仲良くなりたい、信頼できる「かかりつけ医」を見つけたいと思うのがこの欲求です。
できれば一度仲良くなった先生やスタッフさんにずっと診てもらいたいと願っています。
せっかく築いた人間関係をまた一から作るのは患者さんにとっても負担が大きいことなのです。
スタッフの社会的欲求
仲間を作りたい、みんなで仲良く働きたいと願う欲求です。
もしスタッフの中に孤独を感じている人が1人でもいるのであれば、それを解決するのは院長の仕事です。
社会的に認められていない、居場所がないと感じている状況では患者さんのためや医院のため、そして何より、自分のために頑張ろうとするモチベーションもうまれません。
患者さんの承認欲求
きれいになって羨ましがられたい。他人に認められたい・・・。SNSなどで「いいね」が欲しいと思うのもこれにあたります。
痛みもなく、健康に過ごせていて、信頼できる「かかりつけ医」を見つけた患者さんは、もっときれいになりたいとか、周りの人に自慢したいという気持ちを持つようになるのです。
自費の治療を受けたり、ホワイトニングや矯正などを受けたりする患者さんはこの段階にいると言えるのではないでしょうか。
スタッフの承認欲求
生理的、安全、社会的欲求がみたされた状態になれば、院長や周りのスタッフから認められたい、褒められたい。患者さんから信頼されたい。
このような欲求が生まれます。
それを満たすために、仕事へのモチベーションも上がり「ヤル気のある」状態になるのです。
患者さんの自己実現の欲求
4つの欲求が満たされた状態の患者さんは、自分に自信を持ち、人生をより豊かなものにするために努力するでしょう。
ここから先の欲求は歯科医院とは直接関係が無いかもしれませんが、患者さんの口腔内の健康や欲求を満たせるのは皆さんだけであるという事実は変わりません。
スタッフの自己実現の欲求
様々な欲求が満たされてモチベーションが上がったスタッフは、もっと患者さんのために自分のスキルを磨きたい、資格を取りたい等の前向きな目標を持つようになります。
さらに大きな理想が生まれるスタッフもいるかもしれません。
医院のスタッフがみんなこのような欲求を抱くようになれば、医院全体が活性化し、医院経営においても大きなメリットを受けるようになるのではないでしょうか。
まとめ
今回は、歯科医院でマズローの5段階欲求を当てはめた場合について簡単に解説しました。
今目の前の患者さんが予防や自費治療の重要性を理解してくれないとしても、諦めてはいけません。
その患者さんの欲求の段階がそこまでに達していないのかもしれないのです。
スタッフのヤル気が無く、医院の事をまったく考えてくれないと感じているのであれば、どの欲求が満たされていないのか?を考えてみる必要があるかもしれません。
自分の欲求が満たされていないのに、心から患者さんの事を案じたり、医院の利益の事まで考えてくれたりするスタッフは居ないのですから・・・。
患者さんにおいても、スタッフにおいても、大切なのは「タイミング」です。
今がどの欲求の段階なのか、心にとめておくことで意識が変わり、何かトラブルがあったとしても解決する近道が見つかるかもしれません。
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