歯科医院にはびこる分析麻痺症候群とは?
こんにちは、歯科医院経営コンサルタントの小澤です。
皆さんは増患対策と聞いて、何を一番に考えますか?
既存の患者さんの「満足度を上げる」ことだ!!と自信をもって言えるけれど、なぜか成果が出ない、伸び悩んでいる。そんな先生はぜひ今回のコラムをお読みください。
もちろん、成果が出ている先生もぜひ参考にされてください。なぜなら、これからお話することは、どんな医院でも起こりうることだからです。
手段が目的になっていませんか?
皆さんは、分析麻痺症候群という言葉をご存知でしょうか?
これは、分析することに傾倒しすぎて起こるマヒのことです。分析麻痺症候群になると、膨大な時間をかけて調査を行い、分析し、満足します。そこには、実行や結果が伴いません。マヒしている状態ですから、結果が伴っていない状況でも気付くことが出来ないのです。
歯科医院の経営戦略においては、そもそも細かく分析するという行動自体があまり行われていないかもしれません。しかし、これは「分析」という手段だけに言えることではありません。
細かな計画を立てたり、セミナーに参加してみたり、コンサルタントを雇ってみたり、このような「経営改善のための手段」であるはずの行動そのものが、目的になってしまっているケースを多く目にしてきました。実行することや結果が伴っていないのにも関わらず、満足してしまうのです。
分析麻痺症候群の本当の怖さとは
経営戦略を立てる上で、分析すること自体は決して悪いことではありません。経営改善のための「手段であるはずの行動」が目的化し「やったつもり」になることが問題なのです。
そして、分析麻痺症候群の怖さはこれだけではありません。いかに合理的であるか、つまり無駄を省き最短で成果を上げるかに執着するあまり「数字」で表現されることばかりを気にしてしまいます。
合理的な計画に忠実であることにとらわれ、人間身が排除されるのです。人間身が排除されれば、スタッフは考えることをやめます。計画に忠実であることが目的になってしまうからです。
院長が1人で考えた計画やコンサルタントなどの外部の人たちの知恵に頼るよりも、実行する側の人間、患者さんと一番近い存在であるスタッフの知恵や知識を生かすことができなければ、やがて医院は機能不全に陥るでしょう。
コンサルタントの立場で、私達に頼るなというのは商売あがったりな話ですが・・・。我々コンサルタントはあくまでも相談役であり、実行者ではありません。医院の状態や患者さんのことを一番分かっているのも実行するのも院長とスタッフなのです。
医院の場所が違えば、患者さんも十人十色、まったく同じような環境で同じような患者さんばかりが来るということはあり得ません。また当たり前ですが、医院で働くスタッフも違います。これさえやればどんな医院でも成功する。というようなノウハウは存在しないのです。
では、どうすれば機能不全に陥ることの無い戦略をたてることができるのでしょうか。
歯科医院における「分析麻痺症候群」からの脱却
今回は、マニュアルを例にあげてみましょう。
医院にマニュアルはありますか?
どのくらい細かく作ってありますか?
みんながバラバラなことを行っていてはいけませんから、作業マニュアルや医院理念のような共通認識や注意事項などはもちろん必要です。
では、コミュニケーションにおいてはどうでしょうか?
少し想像してみましょう。
どちらが優れていると思いますか。
A.笑顔も言葉遣いも受け答えもすべて完璧にマニュアル通りにできる人。
B.時にはマニュアルを無視しても、患者さんの顔色に合わせて臨機応変に対応できる人。
マニュアルがあるのに、無視するなんて、けしからん!!と思いますか?
分析麻痺症候群から抜け出すためには、スタッフの臨機応変な対応は必要不可欠です。もちろん、「患者さんが満足するように」ということが前提条件ですが、スタッフ自らが考え、行動し、アイデアを出すことは医院にとっての財産となります。
患者さんの満足度をあげたいのであれば、合理的に公式化したマニュアルは廃止するべきです。細かすぎるマニュアルがあることは、スタッフが自ら考え、行動する力(自発性)を奪うことになるのです。
最初から完璧にできる人間などいません。新しく入ったスタッフに他のスタッフと同じように行動させるためにマニュアルを使うのはナンセンスです。これから育つであろう貴重な知識と知恵を潰す危険性があるのですから。
新人には新人の良さがあります。周りのフォローが加わればそれは強力な武器になることもあり得るのです。
マニュアルを用意する場合は、必要最低限の注意事項レベルにとどめてみましょう。今回は、弊社で配布している無料ツールを提供させていただきますが、このマニュアルはあくまでも一例です。ぜひ、スタッフと一緒に考え、スタッフの知恵と知識を用いて医院独自のマニュアルを作ってください。
マニュアルに限らず戦略やルールを決めることにおいても同様です。「自発性」は医院にとっての貴重な財産です。奪うことの無いよう、知識と知恵を出し合い、話し合ってみて下さい。「三人寄れば文殊の知恵」です。
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まとめ
カナダの経営学者ミンツバーグは、分析することだけでなく、正確に予想できないことを事前にしっかり決めておくことの問題点も指摘しています。
医院を取り巻く外部環境は常に変化しており、来院する患者さんの気持ちや患者さんが目にすることができる情報も変わっています。そしてその変化は正確には予想できないのです。
計画や戦略、第三者から提供されたノウハウに頼り過ぎた時、スタッフ一人一人の考える力が弱体化してしまった医院は機能不全に陥ってしまいます。
変化に適応することは、簡単にできることではありません。院長やスタッフが、状況は変化するものであるということを認識し、変化するたびに考え、お互いに知識を出し合える。そんな環境を作る必要があります。
そして、そのような環境を作ることはスタッフの生産性を高めることにもつながるのです。
スタッフの挑戦意欲や自発性などから生まれる「知識と知恵」は、数字ではすぐに表れません。ですから、スタッフからのアイデアを聞いて「そんなことは時間の無駄だから」「それで売り上げが上がるのか?」と感じることもあると思います。ですが、否定的になってはいけません。
しかし、自分が楽をするために意見を言うようなスタッフが存在するのも事実です。見極めるのが難しいかもしれませんが、悩まれた時は一人で考え込まず、いつでもご相談ください。
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