歯科医院ホームページの口コミ掲載は違法?適切な患者の声の載せ方

「患者様の声」「口コミ」をホームページに掲載している歯科医院は多いですが、実はこれらの掲載には厳格なルールがあります。2024年の厚生労働省調査では、患者の声を掲載している歯科医院の79%で医療広告ガイドライン違反の疑いが確認されており、特に治療効果を強調した体験談の掲載で問題となるケースが急増しています。

「患者さんに喜んでもらった体験談を載せただけ」「実際の患者さんの感想なので問題ないはず」という認識で掲載したところ、行政指導を受けて全ての口コミを削除せざるを得なくなった医院も少なくありません。違反が発覚すると、口コミの削除だけでなく、ホームページ全体の見直しが必要となり、長期間の集患機会損失につながります。

本記事では、患者の声・口コミの適法な掲載方法を、具体的な違反事例とともに詳しく解説します。患者の満足度を効果的にアピールしながら、法令遵守を実現するための実践的なガイドです。

目次
1. 口コミ・患者の声に関する法的規制
2. 掲載可能な患者の声の条件
3. 違法となる口コミパターン
4. 適切な患者の声の取得方法
5. 掲載時の必須記載事項
6. 外部口コミサイトとの連携注意点
7. まとめ

1.口コミ・患者の声に関する法的規制

医療広告ガイドラインでの位置づけ

患者の体験談や口コミは、医療広告ガイドラインにおいて「患者等の主観に基づく、治療等の内容又は効果に関する体験談」として明確に定義されています。これらは医療機関の広告の一部として扱われるため、単なる患者の感想ではなく、法的規制の対象となります。

特に重要なのは、患者の体験談が「誘引性」を持つ場合、つまり他の患者の受診を促す可能性がある場合は、より厳格な規制が適用されることです。ホームページに掲載された患者の声は、明らかに誘引性を持つため、適切な管理が必要です。

2025年の規制強化内容

2025年4月より、患者の声に関する規制がさらに厳格化されました。主な変更点は以下の通りです:

医院関与の体験談の制限強化:医院が何らかの形で関与した体験談(依頼、編集、選択等)について、その旨の明記が義務化されました。

治療効果言及の全面禁止:患者の声であっても、具体的な治療効果や症状の改善について言及した内容の掲載は原則禁止となりました。

第三者性の厳格化:医院スタッフの家族や関係者による体験談は、関係性を明記しない限り掲載禁止となりました。

 

2.掲載可能な患者の声の条件

自発的な投稿であること

適法に掲載できる患者の声の第一条件は、患者からの自発的な投稿であることです。医院からの依頼や誘導による体験談は、たとえ内容が事実であっても不適切とされます。

自発性を保つためのポイント
  • 患者からの自主的な投稿のみを掲載
  • 口コミ投稿の見返りを一切提供しない
  • 投稿内容への医院側からの修正・編集を行わない
  • 特定の患者に投稿を依頼しない

治療効果に言及していないこと

患者の声では、具体的な治療効果や症状の改善について言及することは禁止されています。

掲載不可の内容例:「痛みが完全になくなった」「歯並びが劇的に改善」「インプラントが自分の歯のよう」「ホワイトニングで真っ白に」

掲載可能な内容例:「スタッフの対応が丁寧だった」「院内が清潔で安心できた」「先生の説明が分かりやすかった」「予約が取りやすい」

客観的事実のみの記載

患者の感想であっても、客観的事実に基づく内容のみが掲載可能です。

掲載可能

掲載不可

待ち時間が短かった

他院より早く治った

院内が明るくて清潔

最高の技術で治療された

駐車場があって便利

痛みが全くなかった

土曜日も診療している

必ず治ると言われた

 

3.違法となる口コミパターン

治療効果を強調した体験談

違反例:「長年悩んでいた歯の痛みが、こちらで治療を受けて完全に治りました。先生の技術は本当に素晴らしく、他の病院では治らなかった症状がウソのように改善しました。」

このような治療効果を具体的に述べた体験談は、医療広告ガイドライン違反となります。

適法な修正例:「長年通院していましたが、こちらの先生は治療について詳しく説明してくださり、安心して治療を受けることができました。スタッフの皆さんも親切で、通院しやすい環境でした。」

医院が関与した体験談

違反パターン

  • 医院からの依頼で書かれた体験談
  • 医院スタッフが内容を修正・編集した体験談
  • 謝礼や割引と引き換えに投稿された体験談
  • 医院関係者(スタッフの家族等)による体験談

これらは全て「やらせ」に該当し、重大な違反行為となります。

他院との比較を含む体験談

違反例:「以前通っていた○○歯科と比べて、こちらの治療の方が効果的でした」「他の病院では改善しなかった症状が、こちらで治りました」

他院との比較を含む体験談は、比較広告として問題となります。

 

4.適切な患者の声の取得方法

自然な口コミ環境の整備

患者からの自発的な口コミを促進するために、強制的でない環境を整備することが重要です。

治療終了後の満足度調査として、任意のアンケートを実施します。アンケートでは、治療効果ではなく、サービス面での感想を中心に質問項目を設定します。回答は匿名で行い、ホームページ掲載については別途同意を取得します。

同意取得の適切な方法

患者の声をホームページに掲載する際は、明確な同意取得が必要です。

同意書に含むべき項目

  • 掲載媒体の明示(ホームページ、パンフレット等)
  • 掲載期間の説明
  • 匿名化の方法
  • 同意撤回の権利
  • 掲載拒否による不利益がないことの明記

口頭での同意は法的効力が不十分なため、必ず書面による同意を取得します。

内容確認と編集の制限

患者から提供された体験談は、内容の確認は可能ですが、医院側からの修正や編集は原則として禁止されています。

許可される範囲

  • 個人特定につながる情報の削除
  • 誤字脱字の修正(内容変更を伴わない範囲)
  • 公序良俗に反する表現の削除

禁止される行為

  • 治療効果を強調する表現の追加
  • より好意的な内容への修正
  • 複数の体験談の組み合わせ・編集

 

5.掲載時の必須記載事項

体験談の性質に関する説明

患者の体験談を掲載する際は、以下の説明文を併記することが義務付けられています。

「※患者様個人の感想であり、治療効果を保証するものではありません」「※治療結果には個人差があります」「※こちらは患者様から自発的にいただいた感想です」

治療内容の客観的説明

体験談と併せて、該当する治療の客観的な情報を記載する必要があります。

必須記載内容

  • 治療内容の詳細
  • 標準的な治療期間
  • 一般的な費用の目安
  • 主なリスクと副作用
  • 他の治療選択肢の存在

医院の方針説明

患者の声を掲載する医院の方針についても説明が必要です。

「当院では、患者様からいただいた貴重なご意見を、今後の診療向上のために活用させていただいております。掲載している体験談は、患者様の同意を得て掲載しているものです」

 

 6.外部口コミサイトとの連携注意点

Google口コミ・エキテンとの関係

Googleマイビジネスやエキテンなどの外部口コミサイトの評価を、自院のホームページで紹介する際にも注意が必要です。

適切な紹介方法:口コミサイト名と評価時点を明記し、「外部サイトでの評価です」と明示します。特定の好意的な口コミのみを抜粋して掲載することは避けます。

避けるべき行為:好意的な口コミのみを選択的に掲載することや、口コミの一部を改変して掲載すること、自作自演の口コミを投稿することは重大な違反行為です。

口コミ管理の体制構築

外部口コミサイトでの評価管理も重要な要素です。

定期的な口コミ内容の確認、否定的な口コミへの適切な対応、口コミサイトの利用規約遵守、患者からの口コミ投稿を強要しない体制の確立が必要です。

第三者による口コミの監視

口コミの信頼性を保つため、第三者による監視体制も考慮します。

スタッフの家族や関係者による口コミの防止、競合他院からの悪質な口コミへの対応、口コミの真正性を確保するためのルール策定などが含まれます。

 

7.まとめ

患者の声・口コミの掲載は、適切なルールを守ることで歯科医院の信頼性向上に大きく貢献します。重要なのは、患者保護の観点から設けられた規制の趣旨を理解し、誠実な情報発信を心がけることです。

治療効果を強調した体験談や、医院が関与した口コミの掲載は、短期的には集患効果があるように見えても、長期的には法的リスクと信頼失墜のリスクを伴います。真に患者のためになる情報発信を行うことで、持続可能な医院経営を実現できます。

適法で効果的な患者の声の活用により、患者との信頼関係を深め、地域に愛される歯科医院を目指しましょう。正確で誠実な情報発信が、長期的な医院発展の基盤となります。患者の真の満足度を反映した口コミは、最も強力なマーケティングツールとなるはずです。

 

投稿者プロフィール

NAOKI OZAWA
歯科コンサルタント小澤直樹
2002年よりコンサルティング活動を開始。2008年から歯科コンサルタントとして勤務した後20017年より現職。

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