歯科医院のクレーム対応|トラブルを信頼に変える方法

歯科医院を経営していると、クレームやトラブルは避けて通れません。治療に関する不満、費用に関する苦情、スタッフの対応への指摘など、様々なクレームが発生します。クレームを受けると精神的にも負担ですが、対応を誤ると事態が悪化し、口コミやSNSでの悪評、最悪の場合は訴訟につながることもあります。

しかし、クレーム対応を適切に行えば、かえって患者の信頼を獲得するチャンスにもなります。クレームを言ってくる患者は、まだ医院に期待している証拠です。何も言わずに去っていく患者の方が、実は問題なのです。本記事では、クレーム対応の基本と、トラブルを信頼に変える方法を解説します。

 

 ━目 次━
 1. クレームが発生する主な原因
 2. クレーム対応の基本ステップ
 3. クレーム対応でやってはいけないこと
 4. クレームを予防するための取り組み
 5. 悪質なクレームへの対応
 6. クレームを信頼に変えるために
 7. まとめ

 

1. クレームが発生する主な原因

クレームの原因を理解することで、予防と対応の両面に活かすことができます。歯科医院で発生するクレームの主な原因としては、治療結果への不満(痛みが取れない、仕上がりが悪いなど)、説明不足(聞いていなかった、費用が思っていたより高いなど)、待ち時間の長さ、スタッフの対応(態度が悪い、冷たいなど)、予約に関するトラブル(取れない、時間通りに呼ばれないなど)が挙げられます。

これらの多くは、コミュニケーション不足に起因しています。事前の説明が不十分だったり、患者の期待値と実際のギャップが大きかったりすることで、クレームに発展します。

 

2. クレーム対応の基本ステップ

ステップ1:まず傾聴する

クレームを受けたら、まず患者の話を最後まで聴きましょう。途中で言い訳をしたり、反論したりしてはいけません。患者は不満を吐き出したいのです。話を遮ると、火に油を注ぐことになります。

「おっしゃる通りです」「ご不快な思いをさせてしまい申し訳ありません」と、まずは受け止める姿勢を示しましょう。患者の話を聴くだけで、怒りが収まることも多いです。

ステップ2:謝罪する

患者が不快な思いをしたという事実に対して、まず謝罪します。これは、医院側の非を全面的に認めることとは異なります。「ご不快な思いをさせてしまい申し訳ございません」「ご心配をおかけして申し訳ございません」という形で、患者の感情に対して謝罪するのです。

ただし、安易に「全面的にこちらが悪かった」と認めることは避けましょう。事実確認ができていない段階での過度な謝罪は、後の対応を難しくすることがあります。

ステップ3:事実を確認する

患者の話を聴いた上で、何が起きたのかを確認します。「いつ」「どこで」「何が」「どのように」起きたのかを、落ち着いて確認しましょう。必要に応じて、カルテや記録を確認し、担当したスタッフにも事情を聴きます。

患者の話と事実が異なる場合もあります。しかし、この段階で「それは違います」と否定するのは避けましょう。まずは事実を整理することに集中します。

ステップ4:解決策を提示する

事実を確認した上で、解決策を提示します。医院側に非があった場合は、具体的な対応(再治療、返金など)を提案します。医院側に非がなくても、患者が納得していない場合は、追加の説明や代替案を検討しましょう。

解決策を提示する際は、「〇〇させていただきたいと思いますが、いかがでしょうか」と、患者の同意を得る形で進めることが大切です。

ステップ5:再発防止を伝える

最後に、同じことが起きないよう再発防止に努めることを伝えましょう。「今回のご指摘を受けて、〇〇を改善いたします」「スタッフ全員で共有し、再発防止に努めます」と伝えることで、患者は「言ってよかった」と感じます。

クレームは、医院の問題点を教えてくれる貴重なフィードバックです。真摯に受け止め、改善につなげる姿勢を見せましょう。

 

3. クレーム対応でやってはいけないこと

クレーム対応で事態を悪化させるNG行動があります。まず、言い訳や反論をすることです。「でも」「しかし」という言葉は、患者の怒りを増幅させます。次に、患者を否定することです。「そんなはずはありません」「それは患者様の勘違いです」という対応は最悪です。

また、たらい回しにすることも避けましょう。「担当者に確認します」と言ったまま待たせ続けたり、何度も違う人に説明させたりすることは、患者の不満を増大させます。

そして、感情的になることです。患者が感情的になっていても、対応する側は冷静さを保つ必要があります。

 

4. クレームを予防するための取り組み

クレームは、発生してから対応するよりも、予防する方が重要です。予防のための取り組みとしては、事前説明の徹底(治療内容、費用、期間、リスクを丁寧に説明する)、同意書の取得(特に自費治療や外科処置では書面で同意を得る)、待ち時間の管理(遅れそうな場合は事前に声をかける)、スタッフ教育(接遇研修、クレーム対応研修の実施)、アンケートの活用(不満を早期に発見する)が挙げられます。

特に、事前説明の徹底は最も効果的な予防策です。「聞いていなかった」というクレームの多くは、説明はしたが伝わっていなかったケースです。患者が理解しているかを確認しながら説明することが大切です。

 

5. 悪質なクレームへの対応

残念ながら、中には理不尽な要求や悪質なクレームもあります。土下座を要求する、金銭を要求する、大声で怒鳴り続ける、SNSへの投稿をちらつかせて脅すといったケースです。

このような場合は、毅然とした対応が必要です。複数人で対応する、録音・記録を取る、対応時間を区切る、必要に応じて弁護士や警察に相談するなどの対応を検討しましょう。すべての要求に応じる必要はありません。

 

6. クレームを信頼に変えるために

適切にクレーム対応ができた場合、その患者はかえってファンになることがあります。これを「サービスリカバリーパラドックス」と呼びます。問題が起きなかった場合よりも、問題が起きてそれを適切に解決した場合の方が、顧客満足度が高くなる現象です。

クレームに真摯に向き合い、迅速かつ適切に対応することで、「この医院は誠実だ」「何かあっても対応してくれる」という信頼を獲得できます。クレームを恐れるのではなく、信頼を深めるチャンスと捉えましょう。

 

7. まとめ

クレーム対応の基本は、傾聴、謝罪、事実確認、解決策提示、再発防止のステップを踏むことです。言い訳や反論、感情的な対応は事態を悪化させます。

クレームは発生してから対応するよりも、事前説明の徹底などで予防することが重要です。そして、適切に対応できれば、クレームは信頼に変わります。クレームを恐れず、患者の声に真摯に耳を傾け、より良い医院づくりに活かしていきましょう。

 

 

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  • メール:n-ozawa@tdmlabo.com
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投稿者プロフィール

NAOKI OZAWA
歯科コンサルタント小澤直樹
2002年よりコンサルティング活動を開始。2008年から歯科コンサルタントとして勤務した後20017年より現職。

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