歯科医院の分院展開・多店舗経営|成功のポイントと注意点
歯科医院を成功させた院長の中には、分院展開を検討する方も多くいます。分院を出すことで、より多くの患者に医療を提供でき、売上の拡大、リスク分散、スタッフのキャリアパス創出など、様々なメリットがあります。
しかし、分院展開には大きなリスクも伴います。本院で成功したからといって、分院でも成功するとは限りません。十分な準備と戦略なしに分院を出すと、本院の経営まで悪化させてしまうこともあります。本記事では、歯科医院の分院展開・多店舗経営を成功させるためのポイントと注意点を解説します。
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1. 分院展開のメリット
分院展開には、様々なメリットがあります。
まず、売上・利益の拡大です。1つの医院だけでは、診療できる患者数に限界があります。分院を出すことで、より多くの患者を診療でき、売上を拡大できます。複数の医院からの収益により、経営基盤が強化されます。
次に、リスク分散です。1つの医院だけに依存していると、その医院に何か問題が発生した場合(近隣に競合ができた、災害で被災したなど)に大きなダメージを受けます。複数の医院があれば、リスクを分散できます。
そして、スタッフのキャリアパス創出です。規模が拡大すれば、管理職や院長候補などのポジションが生まれます。優秀なスタッフにキャリアアップの機会を提供することで、モチベーション向上と定着率アップにつながります。
また、スケールメリットも期待できます。材料の仕入れ、広告宣伝、システム導入などで、スケールメリットを活かしてコストを削減できる可能性があります。
2. 分院展開のリスク・デメリット
一方で、分院展開には大きなリスクやデメリットもあります。
まず、資金負担です。分院の開設には、内装工事、設備投資、人件費、広告費など、多額の初期投資が必要です。軌道に乗るまでの赤字も覚悟しなければなりません。資金繰りが厳しくなり、本院の経営に悪影響を及ぼすリスクがあります。
次に、人材確保の難しさです。分院を任せられる歯科医師の確保が最大の課題です。院長の目が届かない場所で、医療の質とサービスを維持できる人材が必要です。歯科衛生士や受付スタッフも追加で確保しなければなりません。
そして、管理の複雑化です。2つ以上の医院を運営すると、管理業務が増え、複雑になります。院長一人ですべてを見ることは難しくなり、組織体制の構築が必要です。
また、品質の維持が難しくなります。本院と同じ品質のサービスを分院でも提供できるとは限りません。院長が直接関われない分、教育やマニュアル整備がより重要になります。
3. 分院展開を検討する前に
分院展開を検討する前に、以下の点を確認しましょう。
まず、本院が安定しているかです。本院の経営が安定していなければ、分院展開はリスクが高すぎます。本院の売上、利益、患者数が安定し、十分なキャッシュフローがあることが前提です。
次に、任せられる人材がいるかです。分院を任せる歯科医師がいなければ、分院展開は成り立ちません。技術だけでなく、経営感覚やマネジメント能力を持った人材が必要です。社内で育成するのか、外部から採用するのかも検討しましょう。
そして、マネジメント体制が構築できるかです。複数医院を運営するには、院長一人ではなく、組織としてのマネジメント体制が必要です。事務局機能、教育システム、品質管理の仕組みなどを整備する必要があります。
4. 分院展開の進め方

立地選定
分院の立地は、成功を左右する重要な要素です。本院との距離、ターゲット患者層、競合状況、人口動態などを考慮して選びましょう。
本院に近すぎると患者を奪い合うことになり、遠すぎると管理が難しくなります。30分〜1時間程度で移動できる距離が目安とされています。本院とは異なる患者層をターゲットにすることで、カニバリゼーション(共食い)を防ぐ方法もあります。
分院長の選定・育成
分院を任せる歯科医師の選定は、最も重要な決定事項です。技術力、コミュニケーション能力、責任感、経営への関心などを総合的に評価しましょう。
将来の分院長候補として、本院で経験を積ませ、徐々に責任ある立場を任せていく育成プログラムを設けている医院もあります。分院長には、売上目標やインセンティブを設定し、モチベーションを高める仕組みも重要です。
オペレーションの標準化
本院と分院で同じ品質のサービスを提供するには、オペレーションの標準化が必要です。マニュアルの整備、教育プログラムの確立、定期的な研修、品質チェックの仕組みなどを構築しましょう。
「〇〇歯科に行けば、どの医院でも同じサービスが受けられる」という安心感を患者に提供できれば、ブランド価値が高まります。
本部機能の構築
複数医院を運営するには、本部機能が必要です。経理・会計、人事・労務、マーケティング、IT管理など、各医院に共通する業務を本部が担当することで、効率化が図れます。
最初から大きな本部を構える必要はありませんが、事務スタッフの採用や、外部の専門家(税理士、社労士など)との連携体制を整えておくことが重要です。
5. 多店舗経営の注意点
分院が軌道に乗り、さらに店舗数を増やしていく段階では、いくつかの注意点があります。
まず、拡大のペースです。急速に拡大すると、人材育成やオペレーションの標準化が追いつかず、品質低下を招きます。確実に成功させてから次の展開を検討する慎重さが必要です。
次に、資金管理です。複数医院からのキャッシュフローを適切に管理し、投資と回収のバランスを取る必要があります。不採算店舗の早期発見と対策も重要です。
そして、組織文化の維持です。店舗数が増えると、医院としての理念や文化が薄まりやすくなります。定期的な全体会議、理念の浸透活動などを通じて、組織文化を維持する努力が必要です。
6. まとめ
歯科医院の分院展開は、売上拡大、リスク分散、スタッフのキャリアパス創出など多くのメリットがありますが、資金負担、人材確保、管理の複雑化などのリスクも伴います。
分院展開を成功させるには、本院の安定、任せられる人材の確保、マネジメント体制の構築が前提となります。立地選定、分院長の育成、オペレーションの標準化、本部機能の構築を計画的に進めましょう。
拡大のペースを急がず、一つひとつの医院を確実に成功させながら、着実に成長していくことが、多店舗経営成功の鍵です。
投稿者プロフィール
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歯科コンサルタント小澤直樹
2002年よりコンサルティング活動を開始。2008年から歯科コンサルタントとして勤務した後20017年より現職。
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