緊急時に差が出る「カシ・カリの理論と遂行」

こんにちは、歯科医院経営コンサルタントの小澤直樹です。今回は、日本中、世界中で起きている「緊急事態」において、乗り越えることができるか、また乗り越えた後にうまく立ち回ることができるか、に関わる重要なお話をします。ぜひ最後までお読みください。

緊急時に現れる不満と問題点

 

今回の騒動で、改めて歯科医院で浮き彫りになった問題点は二つ。

 

一つ目は、院長の気持ちをスタッフが理解してくれない

そしてもう一つは、スタッフが「院長は自分達の気持ちを理解していない」と感じている。

 

どちらも、実は日頃の「カシ・カリの理論と遂行」が大きく関係しているのです。

予期せぬ出来事が起こった時にスタッフが積極的に考え、積極的に行動してくれている医院。これは日頃から院長がスタッフに対して「カシ」を作ってきた証です。

反対に、スタッフが非協力的だと感じているのであれば、それは「カシ」が作れていなかったということです。

なんだ、スタッフとの関係の話か・・・と思った先生。これは、患者さんとの間にも同じことが言えます。患者さんに「カシ」を作れているかどうかは、医院経営においてとても重要なことなのです。

そのことを念頭に置いたうえで、カシ・カリの理論についてもう少し詳しくひも解いてみましょう。

カシ・カリの理論と遂行とは

こんな事を言ったり、聞いたりしたことはありませんか?

 

「大きなカリを作った」とか、「これはカシだから」とか・・・。

 

ドラマや漫画でしか聞いたことがない人もいるかもしれませんが、「カシ・カリの理論」とはまさにそのことです。

金銭的なカシ・カリではなく、気持ちのうえでの「カシ・カリ」のことを指します。

もう少し分かりやすくするために具体的な例を挙げてみましょう。

・スタッフがミーティングの際に発言しやすいようにサポートする

・スタッフの資格取得をバックアップする

・スタッフが仕事で失敗し落ち込んだ時に励ましの言葉をかける

・スタッフの家族のことも気にかける

などなど・・・。

極端な話をすれば、院長のポケットマネーでご飯をご馳走する。のも「カシ」に含まれます。医院の経費ではなく、ポケットマネーということがポイントです。

実際奢るものは、ジュースでもお菓子でもなんでも良いでしょう。何を奢られるかではなく、院長が自分たちのために考えて自分のお金で買ってきてくれたんだ、ご飯に連れてきてくれたんだ、と感じることが重要です。

奢る奢らないで言うと・・・。ここで、一つ面白い調査についてお話します。

経営学者の清水龍瑩は、「カシ・カリの理論」が企業に対して有効に作用しているのかどうかを調べるために、様々な分野の企業の経営者に対して、このようなアンケートをしました。

 

「気の知れた仲間と飲む時、勘定は①割り勘で払うことが多い、②自分で払うことが多い」

 

皆さんはどちらでしょうか?

 

何となく想像がつくと思いますが、この調査によると、いずれの業界においても、②の自分で払うと回答した経営者のいる企業のほうが「企業業績」が高かったのです。

清水龍瑩は、友人に対して自然に「カシ」を作れない人は、企業に悪影響を及ぼしかねない。と説いています。

ここで、一つくぎを打っておきますが、「カシ・カリの理論」とは、みんなに気持ち良く奢りましょうという話ではありません。

このアンケートで②と回答した多くの経営者が「相手の立場になって考え、具体的な見返りを求めずにカシを作る」ことが出来ているのです。だからこそ、企業は業績が上がります。

一方で「カシ・カリの理論」を遂行しようとして全くの逆効果になってしまう場合もあります。

見返りを求めてカシを作ろうとしたり、これでカシを作ったぞ!とどや顔になったり、相手に見透かされるようでは不信感だけが募ります。

感動するポイントは人それぞれですから、どのように「カシ」を作ればいいのか・・・。難しいですよね。

「カシ」を作ったつもりでいたのに、スタッフにはまったく伝わっていなかった。逆に迷惑に感じられてしまっていた・・・。なんてこともよくあります。

「カシ・カリの理論」はすぐに効果の現れる特効薬でも無ければ、誰でも簡単に遂行できることではありません。

日頃からスタッフの立場に立って気を配り、時間と労力を惜しまない態度が必要です。面倒くさいし無駄だと感じる先生もいらっしゃるかもしれません。別にそこまでしなくても経営が成り立っているなら、これ以上考える必要は無いかもしれません。

しかし、緊急時にもし、問題が生じてしまったらどうでしょうか?その時に慌てても手遅れになるかもしれません。

カシ・カリの理論のメリットとデメリット

カシ・カリの理論を遂行することで医院にとってどんなメリットがあるのでしょうか。

まず一つ目は、院長や院長の考えた施策に対して「無意味な反対や感情的な反対」をしなくなる。ということです。

何をやっても文句を言われる・・・。そんな経験をしたことのある院長もいらっしゃると思います。

このような反対的感情はいちど院内で起こると、院長の行おうとしたことに対してなんでも反対し、経営上効率的な運営ができなくなっていきます。

患者さんに対してもまた然り、反対的感情が患者さんに芽生えたらどうでしょうか。医院からの提案や医院が患者さんのために発信した情報に対して、なんでも悪く捉え、悪い評判をたてられかねません。

カシ・カリの理論によってこの反対的感情を事前に防いだり、もし反対的感情が生まれても被害を最小限にすることができるのです。

 

そして、もう一つのメリット。

院長自らがカシ・カリの理論を遂行することで、スタッフも患者さんや一緒に働くスタッフに対して同じように行動することができます。

良い手本があれば、医院全体で「カシ・カリの理論」を遂行することができるのです。このことで医院がどのようになるのかは具体的に例を上げずとも容易に想像ができる状態なのではないでしょうか。

 

ではデメリットは何か。

 

それは、院長があまりにもカリスマ性を発揮しすぎて、スタッフが何も意見を言えない状態になってしまう・・・ということです。

仮に院長の判断が間違っていたとしても、誰もそのことを指摘しないという状況になります。それではすべての努力が水の泡ですね。このような極端な状態を防ぐには、いつでも自由に意見を出しやすい雰囲気を作る必要があります。

こちらのコラムも参考にされてください。

人材不足に悩んでいませんか?

まとめ

普段から「カシ・カリの理論」を意識して、スタッフや患者さんの立場になってモノゴトを考え、信頼関係を築く努力をしているかどうかは、緊急時の院長の悩みを軽減する助けになるでしょう。

普段あんまりできてないな・・。と感じている院長先生。

今からでも決して遅くはありません。緊急事態が起きた時に院長がスタッフや患者さんの事を第一に考え、見返りを求めずに「カシ」を作ることができれば、必ず医院経営において有効に作用します。

ぜひ、「カシ」をつくる癖を作るように普段から意識してみてください。もし、前述したような反対的感情が医院を支配していると感じているのであれば一度ご相談ください。一人で悩む必要はありません。


<参考文献>

社長のための経営学|清水龍瑩著 出版社: 千倉書房  Amazon 

実証研究30年 日本型経営者と日本型経営|清水龍瑩著 出版社: 千倉書房  Amazon 


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